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魔法少女と呼ばないで  作者: どり
第4章 村(ザ ヴィレッジ)
22/50

22.絶望の淵から

 この話、書いていたら、涙ポロポロになった。

津波の被害が頭に浮かんだ。

ラバの感情に浸食されたというのもある。

もし、気分を害されたのなら、お詫び申し上げます。

そんな写実力ないはずだけど。


 わかっていたつもりだった。

松明と化した兵士も、オネクターブも示唆していた。

村が以前とは違う姿になっていることも、近づけばわかってきた。


 壊れた家、焼け残った柱。放棄された家財。

そして、いるはずの人たちの姿がない。

敵の姿もないことはありがたいけど。


 村の外れに僕たちは立つ。


「私はここで警戒に残ります。ラバ様、時間がありません。できるだけ手早く、そして心置きなく、お願いします」


 そうですね、魔来子さん。でも、もう、僕、足が震えているんですけど・・・・

その足を動かして、村に入る。


「佑衣さん?」


「魔来子さんが付いてって。一人は不用心だからって」


 ありがとう。本当に僕一人だったら、どうなるかわからない。

 二人で村の中心部に入る。

記憶がよみがえる。このあたりは友達のいえ。こっちには親戚、そして・・・


「ここは僕の家・・・・・だった」


「・・・焼けちゃってる」


 残っているのは土壁、柱。後はめちゃくちゃ。

あたりを歩き回ってみても、人の気配はない。


 なんだろう、この感じ。

大変なことになっているんだけど、まるでそんな感じがない。

まるで人ごとのように見ている自分がいる。

どっかで感情の線が切れちゃってるみたいな。

小さな時遊んでいたおもちゃが落ちていた。

それを見ても、感情がわき上がってこない。


 ふと、見上げた。

そこには前を変わらない大木が立っている。


「ああ、これは無傷だ・・・・うちの裏庭に立っていた木なんだ。この木の下で、みんなで食事したり、友達と遊んだり、こいつによじ登ったりしてたんだ・・・・」


 みんなの笑顔が、笑い声が聞こえてくるみたいだ。

怒ったり泣いたりしたこと。

一緒に走り回ったり、じゃれ合ったりしたこと。

まるで、そっちが現実で、今、目の前にある方が夢のような気さえする。


 ふと、気がついた。

佑衣さんの手が僕の手を握ってる。


「ラバ、無理しなくていいよ・・・・」


 え?無理って?僕は無理なんか・・・・・


「泣きたいときは、泣いた方がいいんだよ」


 その言葉を聞いて、僕は膝を折る。

内側でこらえていた物が、一気に吹き上がってくる。

ほこりっぽい地面に、ぽたぽたと染みの跡。

佑衣さんがそっと僕の頭を抱いてくれる。

頭の上にも、温かい水滴が落ちてくる。

(佑衣さんも泣いている・・・・)


 そう思ったら、もう抑えが効かなかった。

僕は大声を上げていた。

恥も外聞もなかった。

心のまま、思いっきり泣いていた。


□       □       □       


 中心部の広場にそれはあった。

以前は集会やお祭りに使われていた広場。

ここに大きな土まんじゅうがあった。

まだ真新しい。

近寄ろうとした佑衣さんを止めた。


「もういいよ、佑衣さん。これ以上いく必要はない。ここにみんな眠っているんだ。これがわかれば、もういい」


 僕はそっと頭を垂れた。

佑衣さんも両手を合わせてくれた。


 みんなを助けることができなかった。

村を護ることができなかった。

僕には何もできなかった。

心には無力感しかない。


 これで、佑衣さんや魔来子さんを護るなんて・・・

かえって足手まといなだけじゃないのか。


『お嬢様、ラバ様。敵が現れたようです。至急お戻りください』


 なんか、魔来子さんの言葉が意味をなさない。

このまま、ここで殺されたって別にかまわない・・・


「ね、ラバ、わかるよ。心、折れるよね、あたしにも経験ある」


 うん・・・・


「でも、覚えてる?あんた、あたしを護るって、約束しなかったっけ?魔来子さん、そう、うれしそうに言ってたんだけど」


 ああ、そう言うばそうでしたね・・・・でも・・・・


「でももへったくれもない。男が一度約束したことぐらい守れなくて、あたし達だの村のみんなだの護れるって思ってるの?ヘタレだってことはわかってるけど、時と場合によりけりでしょ!?どうするの、死ぬにしたってこのまま座して死を待つの?命かけて護ってからなの?どうすんの!?」


 言葉と同時に飛んできた蹴りをかわす。


 ああ、そうでしたね。

僕にはまだやることがいっぱいあるんでした。

精一杯やったら、あとは天に任せましょう。

そうしたら、天国のみんなも笑顔で僕を迎えてくれるかもしません。

なるようにしかならないんですよね。


 ありがとう、佑衣さん。

走り始めた僕の顔に笑みが浮かぶのがわかった。







 ちょっと悪戯をして、活動報告しなかった。

でも、何人か読んででくれた。

アップすることを期待して来てくれている人がいる。

その期待は裏切れない。

やるだけやる。歯を食いしばって最後まで行く。その後は知らないけど。

はは、ラバとシンクロしてる。


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