12. 再会
12. 再会
無事ワイバーンを討伐した私たちは一度マジカリア城に戻ることにするのです。道中ロゼッタ様が木々に魔法印を刻んでくれてるので戻るのは楽勝だったのです。
ちなみに、この魔法印は結界魔法の応用で、ロゼッタ様の話だと第4等級以上の魔力を流すことが出来れば自動で結界を張ることができる便利な魔法らしいのです!まぁ……ロゼッタ様は今は第2等級の魔法しか使えないので、その結界魔法は見れないのですけどね。
マジカリア城に戻ってきた私たちはそのまま謁見の間に通されギルフォード様にワイバーンを討伐結果を報告するのです。
「なんと……聖魔法を使わずそんな大物まで倒すとは正直驚きました……」
「ロゼッタ様とフィオナがワイバーンをおさえてくれていたので問題ないのです。私はただの聖女なのです!」
「まぁ……アリーゼの一撃がなければあの魔物を倒すことはできんかったのは事実。あまりそんなに前に出る聖女など見たことないのじゃが……」
そんな話をしている最中でした。
バンッ!と、重厚な謁見の間の扉が乱暴に開かれたのです。
「失礼いたします!」
血相を変えた兵士が、甲冑を激しく鳴らしながら駆け込んできました。いつもなら静寂が保たれているこの神聖な場に、ひどく焦燥した空気が流れ込んできたのが肌でわかります。
兵士は足早に玉座へ近づくと、ギルフォード様の耳元で何事かを囁きました。
その瞬間、賢王として常に落ち着き払っていたギルフォード様の顔から、スッと血の気が引いたのを私は見逃しませんでした。翡翠色の瞳が鋭く細められ、謁見の間の空気がピンと張り詰めた糸のように冷たく重くなります。
一体何が起きたというのですか……?
「……なんということだ」
ギルフォード様は短く呻くと、玉座から勢いよく立ち上がりました。
まさか何か重大な問題がおきたのです……? 私はギルフォード様から話を聞くことにするのです。なんと…… この魔法都市ルナノワールの西にあるアルスメルタの街に魔物の軍勢が現れたというのです。
現在街を守れる戦力は騎士達だけで、街にいる冒険者は全員出払っているというのです。そして街の門はすでに破られており魔物達が街に侵入し始めており、このままでは街は蹂躙されるのも時間の問題らしいのです。
「わかった。今すぐ援軍を送る。だがその前にこの街にまだ残っている戦力がいないか確認をしてきてほしい。あと魔物が街の近くに潜んでいる可能性もある。警戒レベルをあげて捜索してくれ」
「かしこまりました!」
そう言って報告にきた兵士はすぐに出ていくのです。全く……厄介なことが次々起きるのです、ワイバーンの襲撃に続いて次は魔物……本当に面倒ごとが多いのです。これも何かの原因なのですかね。そんな様子を見てロゼッタ様は話し始めるのです。
「戦況は厳しいのギル坊……」
「いえ。手は打ってあります。もうそろそろ着く頃だと思うのですが……」
そしてしばらくすると再び先ほどの兵士がやってくるのです。どうやらこのマジカリア城に向かっている馬車を見つけたとのこと。
ギルフォード様はその報告を受けるなり立ち上がり迎えに行くように兵士に指示をします。どうやら援軍が到着したのでその人を謁見の間に連れてくるようにとのことだったのです。
扉が開く。するとそこにいたのは、純白のローブに身を包み長い黒髪を靡かせた清廉潔白な女性。なんと、ソルファス王国で公開処刑を阻止してくれた聖エルンストの四聖女のリスティ=ローレン様だったのです
「え?リスティ様!?」
「あら?聖女アリーゼ。どうしてあなたがここに?」
リスティ様はきょとんとした顔をしながら私に挨拶をするのです。まさかこんなにすぐに会えるなんて思っていなかったのです!
「ここまでご足労感謝します。リスティ=ローレン様」
「いえ。世界の秩序を守るのが私の仕事です。賢王ギルフォード=エルヴァンド=マジカリア。魔物活性化での街の救済でしたね?」
「はい。しかし事態は急を要してまして西にあるアルスメルタの街に魔物の軍勢が現れたというのです。そちらの対処が優先かと」
「それは一刻を争いますね……」
リスティ様は静かにうなずくと私の方を向き微笑むのです。なんでしょう……その微笑が凄くドキドキするのです。
「分かりました。それならすぐにそちらに向かいましょう。そして救済のあとは聖なる結界を張っておきましょう、それなら少しの間ですが、魔物からの脅威を防げますので」
「ありがたいです。聖女リスティ様」
「……それと聖女アリーゼ。私はぜひあなたも同行をお願いしたいと思っているわ?」
「え?私なのです?でも私は……」
「聖女はすべてを等しく救う存在です。それをあなたは否定してはいけない……違いますか?」
静かだけれど、逃げ道を一切許さない真っ直ぐなリスティ様の瞳。その視界に射抜かれた私は、思わず息を呑んで黙り込んでしまいました。
『でも、私にはもう聖魔法が使えないのです』
その言葉が喉の奥まで出かかりましたが、どうしても声に出すことができません。そんな言い訳は、本物の奇跡を使える彼女の前では、ただの惨めな逃げ文句になってしまう気がしたのです。
聖女として、助けを求める人々を救いたい。その気持ちに嘘はありません。でも……圧倒的な魔物の群れを前にして、奇跡を失った今の私に一体何ができるというのでしょう。
リスティ様のような『四聖女』が隣にいる状況で、私はただの足手まといになるだけではないのか……。
普段は蓋をしているはずの「無力感」がチクチクと心を刺し、私は無意識に強く唇を噛み締めました。そんな私の強張った表情を読み取ったのか、不意に、横からロゼッタ様が一歩前に出たのです。
「ならばワシとフィオナも一緒で問題はなかろう?アリーゼの仲間なのじゃから」
「ロゼッタ様……」
「……ええ。もちろんですよ。それでは参りましょうか?」
こうして私たちはアルスメルタの街の魔物達を迎え撃つべく急いで準備を始めるのでした。




