6. お願い
6. お願い
私は森の中で魔物の毒に犯されていたミルディを助けたのです。するとミルディは私の経緯を聞いて、行くあてがなかった私をルベルタの自宅に招いてくれたのです。しかも宿泊もしていいと。ありがとう大聖女ディアナ様なのです。
ミルディのご自宅は魔法鍛冶屋さんで、お弟子さんと親方さんの3人で生活しているようなのです。
私に最初に声をかけてきた若い見習い鍛冶師の男性がリオンさん。そして長い髭が似合う鍛冶師が親方さんのミルディのお父様ブラックさん。
彼らは私が森からミルディを助けた経緯を知るととても感謝してくれました。更に私の事情を聞いた後、親方さんがそれなら旅の資金が貯まるまで自分達の元でしばらく働かないかと言ってくれたのです。
もちろん、衣食住が保証されるその素晴らしい申し出には心が揺れました。
でも……私には『あてのない気ままな冒険の旅に出る』という、本で読んだ主人公と同じ立派な予定があるのです!だから、後ろ髪を引かれつつも丁重にお断りさせていただきました。そのくせ夕食はちゃっかりご馳走になり、お風呂までいただいちゃったのですけどね。
「お風呂でましたのです。ミルディ」
「あっうん。その服大丈夫?あたしのサイズなんだけど……」
「えっと……胸のところがパツパツで苦しいのです。ボタンが弾け飛びそうで、前が全くしまらないのです。でもそれ以外は問題ないのですよ?」
「悪かったね!言っておくけど、あたしは至って標準だから!アリーゼのそこが無駄に大きいだけだからね!?」
バンッと机を叩いて顔を真っ赤にするミルディを見て、私は不思議に思って小首を傾げました。なぜ彼女は急に怒っているのでしょうか?女性の価値は胸の質量ではないのです。大切なのは慈愛に満ちた心だと、昔読んだ本にもちゃんと書いてあったはずなのです。
その時……
コンコン 部屋のドアがノックされました。誰でしょうか?こんな時間に……。
ミルディが部屋の扉を開けるとそこにはリオンさんがいらっしゃったのです。
「えっ!?ア、アリーゼ様!?その!ま、前を隠してくださいっ!」
部屋に入ろうとしたリオンさんは顔を真っ赤にして、慌てて両手で目を覆いながら叫びました。指の隙間からバッチリ見えちゃっている気がしますが、気のせいでしょうか。
「あ、お見苦しくてすいませんなのです。でも……サイズが合わなくて物理的に前がしまらないのですよ?」
私が聖女らしくありのままの事実を伝えると、横から呆れ顔のミルディが大きめの上着をバサリと羽織らせてくれました。うーん、若い男性には少し刺激が強すぎましたかね?
「ミルディちゃん。今日はどうする?」
「もちろんやりますよ。さぁ中に入ってください。アリーゼ少しだけリオンさんと話してるから。ゴメンね」
そういうと2人は椅子に座り何かを話し始めた。私はとりあえず教会を出る時に持ってきた本を読むことにするのです。
この古文書は教会にいる時に読んでいたものなのです。文字はまだ完璧には読めないけれど、簡単な文字表を作っていたのです。これを見ながら読み進めればなんとかなると思うのです。
しばらく時間が経ち、私はこの古文書に集中していたので、ふと顔を上げると、ミルディとリオンさんはまだ話し合いをしているようでした。
「んーじゃあそうしようか」
「わかりました。それでは明日、朝食を食べてから行きましょう。」
2人共なんだかご機嫌みたいなのです。そしてリオンさんは部屋を出ていく。今日は朝から色々あったので眠くなってきましたね。そろそろ寝る時間なのですね。
「ミルディ。私はそろそろ寝るのです」
「あ。アリーゼ明日さ一緒にロウム石を採取しに行くのを手伝ってくれない?ダメかな?」
「え?お手伝いですか?」
「ほらアリーゼは色々知識があるし、またポイズンビートルとかに襲われたら大変だしさ?」
魔物に襲われたら、と言われても……私はか弱き『ただの聖女』なのですけどね?屈強な騎士やギルドの冒険者ではないですし、私を護衛要員としてカウントするのは絶対にお門違いだと思うのですよ。
まぁ……1日くらい出発が遅れても問題ないですし、せっかくなので同行させてもらうことにしたのです。
その後、私は自分のベッドに入り眠りについたのでした。
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