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告白作戦っ!  作者: 黒原乃柚
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第57話 私の花嫁修業

 ジュー。お肉の焼けるいい匂いがしている。

「柚衣が急に料理を始めるなんて珍しいわね。どうしたの?」

 お母さんが意味不明なことを言ってるような。

「花嫁修業だよ」

「突然、何言い出すの? 大丈夫?」

 そうか。お母さんにはまだ草壁君にプロポーズされたこと言ってないんだっけ?


 ジュー。う~ん、いい匂い。

「好きな人でもできたの?」

「うん、草壁君にプロポーズされたの」

「草壁? まさかあの草壁商事の?」

「そう、草壁裕哉君。生徒会長で、野球部のキャプテンでとても優しいの?」

お母さんが私のおでこに手を当てた。

「熱はないようね?」

「どういうこと?」

 私はやや怒った声で言うと、お母さんはため息をついて、

「また変な妄想をしてるのね?」

 と言った。


 もうお母さんたらわかってないな~。

妄想じゃないもんね。ちゃんとプロポーズされたもん!

 私はお母さんを無視して調理を進めることにした。

 いよいよ出来上がりだ。料理って最後の仕上げで美味しくなるんだよね?

 私は隠し味を焼けた肉にかける。

「ちょっと柚衣! 何入れてるの? それはドレッシングよ」

「隠し味だよ」

「そんなに入れたら隠し味じゃないでしょ!」


 もうお母さんたら口うるさいんだから。

「はい」

「何よ?」

「そんなに言うんだったら味見してみてよ」

「もう仕方ないわね」

 お母さんが箸で肉を摘まんで口に入れた。

「どう? 美味しいでしょ」

「美味しくないわよ!」

 失礼ね? そんなはずないじゃない。

 私も食べてみよっと。

 ‥‥‥今回は失敗のようね?


 お母さんにキッチンから追い出された私はスマホで料理のレシピを見ていると窓に何かが当たった。琉生だ。

「柚衣、起きてるか?」

 まだ8時だよ。起きてるに決まってるじゃん。

 私は面倒くさそうに窓から顔を出した。

「お前、催眠術にかかったんだって?」

「かかってないわよ」

 何言い出すのよ。バカじゃないの?


「そう言えば裕哉にプロポーズされたのって本当か?」

「本当よ!!」

「ふむ」

「何が言いたいのよ?」

 琉生の目的が分からない私は少しイラっとして聞いた。


「実は裕哉と夏上から助けを求められたんだ。柚衣がおかしくなったって」

 え? どういうこと?

 草壁君が助けを求めるわけないじゃない。

「よく考えてみろ。裕哉がお前にプロポーズすると思うか?」

 ガーン! 今、なんかとてつもない言葉を聞いたような?

 琉生ったら何を言い出すのよ!

「草壁君は確かにプロポーズしたんだからね!」

「悪いことは言わねえから早く目を覚ませ」


 そうか。わかったよ。

 私が草壁君と結婚してほしくないから必死なのね?

 そんなに私のことが好きなのかな?

 でもごめんね。私は草壁君だけが好きなの。ううん、愛してるの。

 やだ私ったら。

「大丈夫だよ。琉生とはいつまでもいい友達でいてあげるからね」

「何言ってるんだ?」

 私は鼻歌を歌いながら、

「琉生ったら可愛いんだから」

 と言って窓を閉めた。

「だから裕哉から相談されているって言ってるだろうが!」

 窓の向こうで琉生が何か言ってるわね。私には関係ないけど。

 だって、いくら琉生が私のことを好きでも、もう遅いの。

 私は草壁君のものになっちゃったんだから。

 うわー我ながら大胆な表現だよね?

 でもよく考えたらキスもしてないんだけど。

 焦ることないよね? 婚約しちゃったんだし。


 私はベッドに飛び乗ると再びスマホでレシピを検索し始めた。

「この納豆爆盛サラダとか美味しそう」

 それにしても夕ご飯まだかな?

 お腹すいちゃったよ。

 きっと料理のレシピばかり見てるからだよね?


「お母さん夕食まだ?」

「あなたが今日の食材を勝手に使ってダメにしたからでしょ?」

 うっ、私のせいだった。

 これも未来の旦那様に美味しい料理を食べてもらうためだから仕方ないよね?


 プルルル。電話だ。沙耶ちゃんから?

「どうしたの?」

「あんた中園君の忠告を聞かないんだって?」

忠告? さっきのことかな?

「別に忠告なんかじゃなかったよ。琉生が私と草壁君が婚約したので焦っちゃっただけだよ」

「かなり重症だな?」

「何のこと?」

 私はスマホで料理のレシピを検索しながら話している。


 あれ? 何で琉生との会話を沙耶ちゃんが知ってるの?

「もしかして沙耶ちゃんて琉生の電話番号知ってるの?」

「知ってるよ」

「いつの間に番号を聞いたのよ?」

「さあ、いつでしょう? いいの? このままだと幼馴染の中園君が柚衣のもとから遠ざかっていくよ」

「‥‥‥‥‥」

「さあ、いい加減に目覚めて、いつもの柚衣に戻りなよ」


 私は大きく息を吸い込むと大きめの声で力強く言った。

「琉生は沙耶ちゃんにあげる。いつまでも幸せに暮らしてね」

「おい、何でそうなるんだよ。百歩譲ってもそこは野乃葉にあげるって言うところだよ」

 プチ、プープープー。

 私は沙耶ちゃんを無視して三度目のレシピを検索するのだった。


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