✒ 白い鳥居 7
「 シュンシュン、話って何だ?
どうしたんだよ? 」
「 逮捕された奴だが、獄中で自殺していた 」
「 じ……自殺?!
何でだよ! 」
「 僕が知るか。
幸い看守に見つかる前だったから、式隷に運ばせた。
火葬して骨壺に入れて持って帰って来たぞ 」
「 ……………コレで生きて帰れるのは薬中だけか…。
でもさ、何で5人中3人が死んじゃうんだよ?
幾ら何でも可怪しくないか? 」
「 そうだな。
妙ではある。
此方に残る事を選んだ5人目はピンピンしてるんだがな 」
「 …………シュンシュン、白い鳥居を通って此方に来た人は、帰れない様になってるのかな?
偶然として片付けるには些か── 」
「 調べてみる必要が有りそうだが──、今の処調べようが無い…… 」
「 オレ達は大丈夫なのかな? 」
「 はぁ?
問題ないだろ。
僕達は人間じゃないし、異形の存在に分類される立場だ。
マオは不老不死だろ。
多分、大丈夫だ 」
「 そうだと良いんだけどな…… 」
「 別世界へ通じる白い鳥居が出現する原因も探りたい処だが、僕等だけでは難しいかもな 」
「 だけどさ、“ 帰り道 ” に出現するって事は分かってるんだし、何とか調べられないのか? 」
「 戻ってからだな。
セロフィートに泣き付けば手伝ってくれるんじゃないか?
僕は白い鳥居が出現する謎や原因の解明が出来なくても気にしないぞ! 」
「 えぇ~~~~。
セロにとって白い鳥居の謎を解明する事が “ 面白い ” なら手伝ってくれそうな気はするんだけどな… 」
「 直談判してみるんだな。
僕の事は巻き込むなよ! 」
「 シュンシュン、愈々だな!
漸く元の世界へ戻れるんだよな? 」
「 そうだ。
事務所を引き払う手続きは済ませたし、喫茶店にも世話になった礼を済ませた。
トンネルの前に転移するぞ 」
「 おう! 」
全骨している骨壺とボストンバッグは式隷達が管理している。
此方の世界に残る事を選んだ5人目から預かった手紙も忘れずに持っている。
薬中でラリってる奴には、逃げれない──じゃなくて、はぐれない様に縄で縛って連行する形になった。
シュンシュンの転移陣でトンネルの前に到着する。
昼間なのにトンネルの中は不気味だ。
霊的存在でも出て来そうだ……。
「 シュンシュン…… 」
「 そんな不安そうな顔するな。
向こうと此方を繋ぐ媒体は有る。
心配しなくても戻れる。
最強陰陽師である僕を信じろ! 」
「 シュンシュン! 」
「 道標の式神よ、僕に姿を見せよ! 」
シュンシュンが印を切ると見えなかった式神が姿を現す。
3m間隔で式神が続いている。
「 行くぞ 」
シュンシュンは薬中を縛っている縄を引っ張って歩き出す。
オレはシュンシュン右隣を歩く。
トンネルの中はひんやりしている。
奥に向かって進む程、トンネルの中の温度が下がっている気がする。
「 シュンシュン……、温度が下がって来てないか? 」
「 あぁ、霊道の中を歩いてるからな 」
「 霊道の中だって?!
何で霊道の中を歩いてるんだよ!? 」
「 僕が知るか。
どうやら、このトンネルは霊道と重なっているらしい。
道標の式神を辿って歩けば問題ない。
霊視眼鏡を掛ければ面白いのが見れるぞ 」
「 絶対に見ない! 」
長いトンネルの中をひたすら歩く。
白い鳥居は出て来ない。
行けども行けども肌寒いトンネルが続くだけだ。
「 シュンシュン……。
ちっとも白い鳥居が出て来ないけどさ、これって本当に大丈夫なんだよな?
元の世界へ続いてるんだよな?? 」
「 マオ、情けない声を出すなよ。
“ 僕を信じろ ” って言ったろ。
セロフィートの事は信じられても僕の事は信じられないって言うのか? 」
「 そんな事は── 」
「 ほら、僕のスマホを見てみろよ。
真っ黒だった画面が元に持ってるだろ。
未だ圏外だが、元の世界へ近付いてる証拠だ。
どうだ、少しは安心したか? 」
「 本当だ!
スマホが使える様になって来てるな! 」
こうやって目に見える現象が有れば、分かり易いし安心も出来る。
早くシュンシュンのスマホが使える様になってほしい!
「 あっ、肌寒さが和らいで来た? 」
「 式神の色が変わったな。
残り半分だ。
キリキリ歩けよ! 」
「 えぇ~~。
未だ歩くのかよぉ~~。
後半分とかキツいな…… 」
「 男が女みたいに弱音を吐くな!
背筋を伸ばして堂々と歩け!
情けない事を言うんじゃない。
女に指を差されて笑われるぞ 」
「 心を抉る言い方ぁ~~。
男だって女みたいに弱音を吐きたい時は有るよ。
別に良いじゃん。
弱音を吐いたぐらいで死にやしないって! 」
「 全く──、男としてのプライドは無いのか?
彼方の世界に落として来たか? 」
「 女の姿のシュンシュンには言われたくないな~~ 」
「 心は歴とした男だぞ! 」
シュンシュンと雑談しながら歩いてると、疲れも忘れちゃうな。
歩き続けていると、トンネルの出口が見えて来た!
「 シュンシュン、明かりだ!
明かりが見える!
やったな、シュンシュン!
元の世界へ戻って来れたんだ!! 」
「 マオ、はしゃぐなよ。
糠喜びにはなりたくはないだろ。
慎重に進むぞ 」
「 シュンシュン……。
分かったよ、油断しない 」
シュンシュンは少しだけ慎重過ぎるんじゃないかと思う。
だけど、本当に出口なのか分からないもんな。
用心に越した事はないか。
◎ 訂正しました。
可笑しい ─→ 可怪しい