✒ 白い鳥居 6
シュンシュンは骨壺を抱えた式隷と共に戻って来た。
骨壺は大きい。
シュンシュンは遺骨を全部入てるみたいだ。
小さな骨壺に遺骨の一部だけ入れて持ち帰って、残りの遺骨を別世界に残したままなんて、帰りを待っている遺族に対して不誠実だし、不親切だもんな。
「 シュンシュン、全骨してあげたんだ?
優しいじゃん 」
「 はぁ?
優しいって?
勘違いするな。
報酬に色を付けさせる為に決まってるだろ。
恩を売るんだよ! 」
「 最低な理由だな。
でもさ、理由はどうあれ感謝はされるんじゃないか?
全骨って珍しいみたいだからな~~ 」
「 本来なら遺体を持ち帰ってやりたいぐらいだ。
その方がたぷりとぼれるからな! 」
「 いや、ぼるなよ。
不謹慎だろ… 」
「 何が不謹慎なもんか。
誰にも出来ない事をやり遂げるんだぞ。
取れるだけ踏んだくって何が悪いんだよ 」
「 そだな~~ 」
悪ぶる気配の欠片も無いシュンシュンを前にして、何か言う気も失せた。
シュンシュンは何時だって傍若無人に我が道を行くんだ。
セロみたいだな……。
「 オレはシュンシュンのストッパーにはなれないのかな? 」
「 はぁ?
ストッパーだって?
何様だよ。
僕にストッパーなんて必要ない!
お前はセロフィート専用のストッパーだろ。
浮気したら面倒な事になるんじゃないのか?
僕は巻き込まれるのも当事者になるのも御免被るからな! 」
「 そうだよな。
シュンシュンのストッパーはセロとキノコンだもんな~~。
オレがシュンシュンのストッパーになるかなんて──、烏滸がましかったよな 」
「 別に “ 烏滸がましい ” とは思ってない。
──ゆ……友人に……そんな事、思う訳ないだろ!(////)」
「 友人って……。
シュンシュン…………オレの事、認めてくれるのか? 」
「 はぁ?
“ 認める ” って何だよ!(////)
お前はもうずっと前から僕の友人だった。
セロフィートの腰巾着だからじゃないからな!(////)」
「 シュンシュン──。
有り難な!(////)」
嬉しそうに笑うマオの笑顔が眩しい。
セロフィートにバレたら確実に消されるな、僕……。
ピンチだ!!
「 シュンシュン、何時向こうに戻るんだ? 」
「 3人目に接触してからだな。
この世界で犯罪者として獄中生活を送るか、僕等と元の世界へ帰り、一般人として生きるか──。
選ばせてからだ 」
「 獄中生活は選ばないんじゃないかな?
生きて帰れるのは2人だけか……。
依頼人と家族はさぞガッカリするだろうな…… 」
「 気にするな。
それは僕等の所為じゃない。
大体、10年も時間にズレが有るなんて思わないじゃないか 」
「 それはそうなんだけど…… 」
「 僕は刑務所へ行って来る。
見付かると厄介だから、マオは留守番な 」
「 分かったよ。
1階の喫茶店で時間潰しとく 」
「 好きにしてろ 」
ニヤッと笑ったシュンシュンは、転移陣を発動させると事務所から姿を消した。
オレは事務所を出て階段を駆け下りる。
1階の喫茶店──シャロックンのドアを開けた。
「 ──おぃおぃ、一体全体何が起きたんだ。
この騒ぎは何だよ!? 」
「 シュンシュン!
イカれたストーカー女が店に来て暴れたんだ。
刃物を出して滉也さんに切りか掛かろうとしたから止めに入ったら、この様だよ 」
「 マオ──。
この馬鹿がっ!!
御人好しにも程があるぞ! 」
「 だってさ、ほっとけないだろ?
マスターには毎日美味しい料理を食べさせてもらってるしさ、息子さんだって心を入れ換えてマスターの手伝いを頑張ってるじゃないか。
女にストーカーさせるなんてロクデナシかも知れないけど、マスターにとっては大事な息子じゃん。
マスターの目前で息子さんが刺される光景なんて見せられないだろ? 」
「 だからって、お前が身体を張って庇う必要は無いだろうが!!
怪我までしやがって!! 」
「 大した怪我じゃないよ。
刺された──っても大して深くないし 」
「 ……………………全く……。
僕が居ない事を良い事に無茶しやがって……。
セロフィートが居なくて幸いだったな…… 」
「 シュンシュン……。
なんか御免な…(////)」
「 はぁ…………。
何で嬉しそうなんだよ…。
僕は怒ってるんだが! 」
「 オレの為に腹を立ててくれてるんだろ?
シュンシュンに心配してもらえて嬉しいんだ(////)」
セロフィートが居たら、僕は確実にキノコンに差し出されてるな……。
マオがストーカー女に刺されたなんて、セロフィートの耳には入れられないぞ。
「 マオ、セロフィートには口が裂けても “ 刺された ” って事を言うんじゃないぞ! 」
「 うん?
何でだよ? 」
「 セロフィートの耳に入ったら、僕の身が危ないだろが!
キノコンに喰われてたまるかよ! 」
「 あはは~~…………。
気を付けるよ 」
「 呉々もだぞ! 」
「 ──マオ君、馬鹿息子を庇ってくれて有り難う!!
傷の手当てを── 」
「 あっ、大丈夫だよ。
“ 刺された ” ってのは例えだから。
刃先が一寸かすっただけだからさ、心配しないで!
滉也さんは怪我とかしてない? 」
「 自分より他人の心配かよ…… 」
「 あ…あぁ……俺は大丈夫だよ。
マオ君が守ってくれたからさ。
マオ君には迷惑を掛けてしまったな… 」
「 全くだよ。
女をストーカー化させるなんて、コイツに一体何したんだ? 」
シュンシュンはオレが縄で縛った女の人に目を向けて言う。
今にも女の人の頭の上に靴底を乗せて床とキスさせそうな顔をしている。
シュンシュン…………相当だな……。
「 まぁ、良いじゃんじか。
ストーカー女は締め上げてるし、もう滉也さんを襲ったりしないよ。
何か震えてるしな~~ 」
「{ 殺すつもりで刺した相手がピンピンして生きてるんだから、ガチで震えても仕方無いだろ }」
「{ あははぁ~~。
だよな~~? }」
うん──、滉也さんを殺すつもりで迫って来た物凄い形相をしたストーカー女の刃物は、滉也さんの前に立ちはだかったオレの胸部に深々と刺さていた。
怒り狂っていたストーカー女だったけど、オレの胸部にグッサリと刺さった刃物とケロッと平然な顔をしてるオレ見て、殺意が恐怖に入れ替わったみたいだ。
まるでオレを “ 人の姿をした化け物 ” だと言わんばかりに恐怖に歪んだ顔で見ては、ガタガタと全身を震わせている。
鳥肌も凄い立っているみたいだ。
「 そんなに恐がる事ないじゃん。
オレだって善良な市民の1人なのにさ! 」
「 警察は呼んだのか? 」
「 あぁ~~うん。
マスターが通報してくれたから来ると思うよ 」
「 そうか。
事情聴取を受けるんだろ。
帰る日が延びそうだな 」
「 そだな──。
オレの所為で御免なシュンシュン…… 」
「 全くだ!
警察が来るまで時間は有るだろう。
話がある。
事務所に戻るぞ 」
「 分かったよ。
マスター、シュンシュンと事務所に戻ってるから警察が来たら電話を掛けてくれるかな? 」
「 あぁ、御安い御用だよ。
マオ君、これ。
春麗ちゃんと食べてくれ 」
「 マスター!
こんなにケーキ貰って良いの!? 」
「 息子を守ってくれた恩人への御礼だよ。
遠慮しないで食べてくれ 」
「 有り難う、マスター♪ 」
マスターから美味しいケーキを受け取ったオレはシュンシュンと一緒に2階の事務所に戻った。




