⭕ 手紙 1
22時、塾が終わった帰り道。
塾帰りの学生が多い。
残業上がりのサラリーマンに混ざりながら最寄りのバス停に並んだり、最寄り駅へ向かって歩いている。
サラリーマン達の顔は暗い。
残業作業で疲れているのだろう。
定時で帰宅の出来るサラリーマン達の顔は溌剌としてさえいるのに、残業上がりのサラリーマン達の目は死んだ魚のような目をしている。
「 みっこ,まこちゃん、明日ね! 」
「 あ、うん。
さっちゃんも気を付けてね 」
「 バイバイ、さっちん! 」
「 最寄りのバス停が近いって良いよね…。
何で最寄り駅って遠いんだろう… 」
「 本当だよね~~。
15分も歩かないとなんて嫌過ぎるぅ~~ 」
「 毎日毎日、学校が終わったら帰宅もしないで塾に行かないといけないなんて最悪だよ…。
これが後2年も続くなんて…… 」
「 親の期待に応える為に塾通いなんてしたくないよね~~。
一寸反発するとさ、『 貴女の為なのよ! 』って言われて話を切られて話題を変えられたゃうんだよねぇ。
お姉ちゃんと兄貴が優秀だから、アタシにまで “ 優秀 ” を押し付けようとして必死なんだからさ~~。
もうウンザリだよ… 」
「 私も似たようなものかな。
私は長女だから、妹と弟の “ 御手本にならないといけない ” って昔から言われてて、一流大学に合格しないといけない流れになってて、迷惑してる……。
合格しても勉強に付いて行けなかったら意味なと思うんだけどね… 」
「 御互いに大変だよね~~ 」
「 そうだね……。
勉強は嫌いじゃないけど、段々と嫌いになって来てるの… 」
「 息抜きしたいよね~~ 」
「 したいね~~ 」
なんて友人と雑談をしながら最寄り駅を目指して歩いていると何かが頭の上に当たって落ちて来た。
「 何だろう?? 」
アスファルトの上に落ちたのは封筒??
拾い上げると可愛い封筒だった。
「 うわっ、何この可愛い封筒!
何処に売ってるんだろうね! 」
「 そう、だね……。
誰かが窓から落としちゃったのかな? 」
封筒の表には何も書かれていない。
封筒を引っくり返して裏を見ると名前が書かれていた。
「 まこちゃんの名前が書いてあるね。
まこちゃん宛だね 」
私は封筒を左隣に居るまこちゃんへ手渡した。
「 えぇ~~?!
アタシ宛なんだ?
何だろう? 」
「 家で読んだら? 」
「 そうする 」
まこちゃんは封筒を鞄の中へ入れた。
雑談を続けながら最寄り駅に到着。
最寄り駅は1番線 ~ 6番線まで在る大きな駅だったりする。
まこちゃんは5番線から発車する電車に乗って帰る。
私は3番線の電車に乗って帰るから、改札口から最寄り駅に入って、階段の前でバイバイする。
「 明日、学校で! 」なんて御互いに言い合って、笑顔で手を振って分かれた。
何時もと変わらない “ バイバイ ” だった。
明日の朝には、此処で「 おはよう! 」って笑顔で言い合って、一緒に改札口を出て学校に登校する変わらない日常が来るって、当たり前に思っていた────。
「 ……………………友達だったまこちゃんが行方不明になって──、1年経っても見付からなくて……。
それから娘の様子が少しずつ可怪しくなって来たんです……。
私……どうしたら良いのか分からなくて………… 」
「 名刺、持っててくれたんだね、茄步さん 」
「 はい……。
財布に入れて……御守り代わりにしてました…… 」
「 初めて依頼を受けた時は高校生だったのに、高校生の娘が居る母親になってるなんてな~~ 」
「 ふふふ…(////)
あの時は本当に──。
勇気を出して両親に相談したら、父から “ 転勤する事になった ” って言われたんです。
父は単身赴任する気でいたみたいですけど、私の話を聞いて、家族で転勤先に引っ越す事になって── 」
「 へぇ、良かったじゃん。
転校先では嫌な事はなかったのか? 」
「 お蔭様で(////)
友達も出来て楽しい学生生活を送る事が出来ました(////)」
「 そっか、安心したよ。
良かったな、シュンシュン 」
「 そうだな。
連絡をくれた──って事は依頼だな。
幾ら用意出来るんだ? 」
「 シュンシュン!
報酬の話は後で良いだろ 」
「 ふふふ…(////)
春麗さんもマオさんも変わりませんね。
お2人のやり取りを見ていたら何か安心しちゃいました(////)」
「 あはは~~。
“ 漫才みたい ” って良く言われるんだよな…。
此方は漫才なんてしてないのにさ! 」
「 ふふふ…(////)」
「 茄步は笑ってる方が可愛いよ。
辛い時こそ “ 笑え ” とは言わないが、笑顔を忘れるな 」
「 春麗さん…(////)
有り難う御座います…(////)
御世辞でも嬉しいです 」
「 僕は御世辞なんて言わない。
失礼だぞ!
気分を害したから10万上乗せな 」
「 シュンシュン!
がめついにも程が有るだろ~~ 」
「 煩い!
僕の繊細な心が傷付いたんだ! 」
「 繊細な心って──。
シュンシュンの場合は鋼鉄の心の間違いだろ 」
「 何だとぉ!! 」
「 あははっ…(////)」
「 ほら見ろよ、茄步さんに笑われてるだろ~~ 」
「 僕の所為みたいに言うなよ。
それで──、茄步は僕に何を依頼したいんだ?
娘を正気に戻したいのか? 」
「 ………………娘が可怪しくなったのは……手紙の所為なんじゃないか……って思うんです 」
「 手紙??
何で手紙で可怪しくなるんだ? 」
「 茄步、実物は有るのか? 」
「 持って来ました。
──これです。
娘が持っていた手紙です 」
「 可愛い封筒だね 」
「 何だ?
封筒の中に毛髪でも入ってるのか? 」
春麗は封筒を開けると中から1枚の便箋を取り出した。
折り曲げられている便箋を広げると────。
「 何も書かれてない?
手紙なのに? 」
「 そうなんです。
何も書かれてないんです。
なのに娘は手紙を怖がっているんです…… 」
「 ふぅん?
何も書かれてない手紙が怖いねぇ。
妙だな 」
「 差出人の名前は書かれてないみたいだな。
“ 森僉導流様へ ” って書かれてるな。
この “ 森僉導流 ” ってのが、茄步さんの娘さん? 」
「 はい……。
娘宛に来ているのに便箋が真っ白なんて可怪しいと思って…… 」
「 シュンシュン、何か感じたりしないか? 」
「 ふぅん……。
コイツは面白い。
この便箋に書かれている文章は、茄步の娘にしか読めないようになってるんだ 」
「 シュンシュン、そんな事が出来るのか? 」
「 陰陽術にも似たような術はある。
僕の呪術で読めるようにしてやるよ。
少し待ってろ 」
春麗は御札を取り出すと短い呪文を唱える。
御札はオレンジ色の炎を出し、便箋を焼いた。
便箋は燃え出しはしたが、灰にはならず文字が浮かび上がって来た。
「 ほら、これで読めるぞ 」
「 うわっ、凄いなシュンシュン!
これが便箋に書かれてる──何か読み難い字だな… 」
「 マオさん、これは丸文字と言って、女子がラブレターを書く時に良く使われていた字でした。
見慣れない人には読みにく難いかも知れませんね 」
「 茄步、読めるか? 」
「 私も丸文字は苦手で…… 」
「 折角、読めるようにしたっての誰も読めないのかよ。
仕方無いな、読める筆跡に変えてやるよ 」
「 そんな事まで出来るのか?
陰陽術って凄いな、シュンシュン! 」
「 フフン!
僕だから出来るんだぞ!
ちゃんと尊敬しろよ 」
「 してるよ。
あっ、弓弦さん,玄武さんが書くような達筆な字は駄目だからな!
読めないから! 」




