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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第八章 3紳士、都会で名を上げるⅢ 傷を舐め合う道化芝居編 【推奨レベル24~】
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323 出動! 紳士同盟

「ラダ様!! す、好きだ!! おれと……、けけけ結婚してくれ……!!」


 月の綺麗な夜、おれはネムジア教の聖地ネムノスでラダさまに告白した。

 ……ニセモノの方のラダさまな?


 そしてその後、おれの記憶は少し途切れる。

 ラダさまが国境の門を超え、『魔族領』に入ったと聞かされる所まで記憶が飛ぶ。


 おれはてっきりフラれたショックで記憶を失ったのかと思っていたけど、どうやら違ったらしい。

 多分あの時、おれは石化したのだと思う、ラダさまのスキルで。



 それはそうと、おれは今、消えかかっている。

 おれは、ヤマダの忘れてしまった8年間から成る別人格なので、いつかはこんな日が来るとは思っていたけれど、いざとなると寂しいもんだ。


 まあ、ヤマダが忘れてる記憶を全て取り戻して人格が統合されるって考えたら、そこまで深刻になるようなことでもないんだろうけど……。





 ――おい、「もう一人のヤマダ」、どうかした?



『ああ悪い、なんだっけ……?』


 おいおい、大丈夫かよ?

 寝てる場合じゃないぜ? 今、みんな大好きエッチなシーンじゃんよ?



『心の賢者タイムってやつさ』


 ええっ、まてまて。もうかよ!? ずるいぞ!!

 おれだって一人になりたい。



『とはいえ、この【神域】から出られないし【超次元三角】も開かないと』


 ――それよ。ナカジマの【アイテムボックス】は開くのにな、何が違うんだ?

 でも、【アイテムボックス】から出したタオルを腰に巻いたら、タオルも消えたってさ。



『そもそも、ベリアス様のこの【神域】、目的が勝ち負けじゃないからな……』


 ――それよ。この【神域】の中では全員が全裸非武装。エロくて平和なスキルと言えなくもない。

 辛うじて、おれの手元には『ガリアンソード』が残ったが、オーラを抜くと今にも消えてしまいそうだ。







「ナタリアさん、これ、なんとかなりませんかね?」


「うーん、自分だけなら、範囲外に出ちゃえばいいんだけどね?」


 歴戦の英雄ナタリアちゃんに相談してみたが、【神域】そのものをなんとかするのは難しいらしい。



「ねえねえ、ナカジマ氏の、【空間転移】で出られないのー?」


「うむ。試したがダメだった」


 ――!? ナカジマのヤツ、いつの間にか【空間転移】なんて出来るようになってたらしい。初耳だ。

 ちなみに、ナタリアちゃんは、【時間召喚】というスキルで自分だけなら脱出できるそうな。すげえ!



「ところで、なんでラダさまの鎧は消えてないんですか?」


「シーラさま! ヤマダさんがわたくしにさっそくセクハラをしてくるんです!!」


「せくはらってなにー?」


 ――ちゃうわい!



「ラダ様の鎧は、魔王とも戦える特別製だ」


 ラダさまに代わってナカジマが答える。

 じゃあ戦ってくださいよ? と頼んでみたが、敵の本体が居ないと戦いようがないとのこと。


 ――それよ。以前、神獣クラムボンと戦った時との違いは、【神域】から自由に出られないということと、敵の本体が攻撃もしてこない代わりに無敵状態ということだ。



「ぼく思ったんだけどさー、これもうほっといてもいいんじゃなーい?」


 タナカの言うとおり、おれもちょっとそう思い始めている。

 全裸の観客一万人をボコればいいんじゃね? ナタリアちゃんやヘルガさんがいれば、なんとかなりそうな気がしている。



「じゃあ、みんなでいっちょ暴れてる観客を大人しくさせちゃいましょうか?」



「こ、この格好ではちょっと……」


 ……あ。ですよねー? ヘルガさんは仕方ない。



「姫さま~、私、恥ずかしくないので、皆さんのお手伝いしてきますね~?」


「だ、だめです、ルル! 娼婦だからって、恥じらいを忘れたら女として終わりますよ?」


 へー、彼女、ルルって名前なのか。木ノ花(このはな)ルルと名前まで一緒じゃん?

 てか今、「娼婦」って言ったよね……!? ルルさんって娼婦なの!? おれは聞き逃さなかったぞ!?



「……!! ボクも! ボクもちょっと、この格好じゃ恥ずかしいかも?」


 ……うそつけ! ナタリアちゃんは恥ずかしくないでしょ!?

 今更どうした? とは、ちょっと言えないわけだが。





「……それじゃあ久々に、『紳士同盟』で出動だ!」


「おっと、お待ちください。そのセリフは、わたくしのですよ?」


 ……? 何言ってんだ、ラダさま?


    

「実は、『紳士同盟』のリーダーは今、ラダ様ということになっている。本人がやりたいというものでな」


「はあ? だって、ラダさまは聖女でしょ?」


「今更戻ったところで、聖女のやり方なんか忘れちゃいましたよ。わたくしのことは、リーダーとお呼びください」


 心底どうでもいいが、要するに一緒に戦ってくれるということだろうか?





「……そしたら、リーダー? ここはひとつ、よろしくお願いします」


 ふふん、仕方が無いですね――と、満足そうにラダさまは、膝の上のシーラさまをベンチに下ろして立ち上がる。


 ラダさまから離れたシーラさまは、鎧の効果範囲から外れてすっぽんぽんだ。

 ……こら! タナカ、見るな!!



「ナタリアさん、シーラさまを頼みます」


「おまかせー。がんばれヤマダー」

「ヤマダがんばれー」


 よーっし。いっちょ、うちのかわいいシーラさまに、ヤマダのかっこいいとこ見せちゃおうかな~? 一般のお客さん相手に無双したりして。





「さあ、『紳士同盟』出動です! 美女達を守って、王都に名を知らしめなさーい!」


 ――シュビビビーーーー!!

 石化した人間のバリケードを乗り越えようとしてきた全裸の観客達を、ラダさまの指先から発射されたレーザービームがなぎ払う。


 そして、ずんぐりむっくりした見た目を裏切る身軽さで、ひらりとバリケードに飛び乗る鎧のラダさま。

 おれ達も慌ててよじ登る。





「なんだてめーら、邪魔するんじゃねぇ!!!!」

「こっちは、ベリアス様の許しをもらってるんだぞ!!!!」

「俺達にも、美女をよこしやがれ!!!!」


 ――そうだ、そうだ!! と、いきり立った観客達が口々に叫ぶ。

 ベリアス様のスキル【王令おうれい】にあてられて皆、正気を失っているようだ。


 ……いや。中には、さほど影響を受けていないにもかかわらず、周囲のどさくさに紛れて欲望を解放しているやつもいるんじゃねーかな?

 何しろこの王都には大迷宮があるのだ。きっと高レベルな冒険者も結構混じっているに違いない。……さっきはああ言ったけど、無双はちょっとキツそうだ。





 石化した人間のバリケードの上にすっくと立った『紳士同盟』。おれ、ナカジマ、タナカの旧メンバーにラダさまが加わった四人。


 群がる観客達を見下ろし、鎧姿のラダさまが名乗りを上げる。 



「おやまあ、ここはキノコの山ですかね? わたくし達は『紳士同盟』! ここから先へは通しません!」


 ――シュビビビーーーー!!

 ラダさまのレーザービームが足下を切り裂き、全裸の観客達を怯ませる。





『何を恐れる!!? 敵は少数だ、怯むな!! 防御スキルのある者は前に出ろ!!』


 ――むむ!? ベリアス様の声が、観客達の指揮を始めた。

 縮み上がっていた彼等だったが、再びムクムクと元気を取り戻す。



『――隊列を崩すな!! タイミングを合わせろ!! 魔法用意、狙えー!!』


「やむを得ません、キノコ狩りです。早い者勝ちですよ?」


 ――ジャララーーーーーーガギン!!!!

 ラダさまは、鎧の腰からアンカー付きの鎖を射出!

 魔法を準備していた一団の真っ只中に突き刺ささる。

 

 その鎖を巻き取って、鎧ごとその一団に突っ込むラダさま。そのまま肉弾戦に突入する。   



「――鎧に隠した聖なる誓い! 女だてらに紳士同盟! 謎の女紳士レッド・リーダー!!」


 ――!? いつの間にか、ラダさまの灰色の鎧が鮮やかな赤に染まっていた。

 タマネギ頭のどんくさそうな鎧がいくぶんか素早そうに見える。具体的には三倍ぐらい?

 ラダさま、魔法以外もいけるのか。……知らんかった。

 てか、急に自己主張するね? どうした!?





 ナカジマは、周囲の石化した人間を一度【アイテムボックス】に収納すると、敵陣の頭上に降らせる。石化人間の雨だ。……チートだな。


  

「光るメガネは正義のしるし! 甘えたキッズは私がさばく! 断罪紳士ナカジマ・ブラック!!」


 ……え!? もしかして、それ全員やるの? 『紳士同盟』、今そんなことになってるの!?

 ちょ……まってまって、聞いてない!! えっと、ラダさまがレッドで、ナカジマがブラック? そうするとおれはやっぱり……。


  

「美女と美少女と、お年寄りの味方! 天下御免のカレー好き! 愛の紳士ムラサメ・グリーン!!」


 ――って、グリーンカレー好きなの!!? イエローでしょ!!? カレー好きはイエローでしょうがっっ!!?

 くっそ、グリーンは元『草原の勇者』のおれでしょうが、タナカのアホめ!


 タナカは、魔法【風刃】を連射している。そして時々、ラダさまやナカジマがやり過ぎて瀕死の観客達に【肉体治療】を放つ。相変わらず凄い効き目だ【肉体治療】……!



 ……さて、タナカにグリーンを取られてしまったおれは……えーっと……。





 ――ざわ……!!?


 ――ざわ……!!?

 ――ざわわ……!!!?

 おれが悩んでいると、不意に、いきり立った全裸の観客達が色めき立つ。

 

 なにごとかと見渡せば、彼等の視線は背後のバリケードの上に――。

 


 振り返るとそこには、往年の美人女優、木ノ花ルルの若い頃にそっくりのルルさんが堂々と立っていた、全裸で。

 ……いや、違うぞ!? 両乳首と股間を光魔法三点付与で隠した、「恥じらい有り」バージョンのルルさんだ……!! 多分、実況の三人娘をマネたのだろう。


 

「エロ紳士歓迎~! 『ハニー・ハート・メスイヌ』王都本店、年末年始も営業中~! ルルでーす!!」



 ――ぶ……、ぶるぉぉおぉぉぉ!!!!

 それ、お店の宣伝ですよね!!? というおれのツッコミは、いきり立った観客達の歓声にかき消された。


 バリケードから飛び降りたルルさんは、自ら進んでいきり立った観客達の中に歩み進む。

 




 ――は、うぅっ……!?



 ――おっふぅ……!!



 ――なんの……あ、ああっ!!



 ルルさんが、群がった彼等の股間をひと撫でするにつれ、いきり立ったモノは次々と果てていく!!


 ……しかしおれは見た、ルルさんの指先から何か触手的なモノがにょろりと出たり入ったりするところを。なにあれ……こわい。





「明日はきっといいことあるさ? がんばれアラフォー、安全紳士ヤマダ・グリーン……!」


 おれは、小さな声で名乗りを済ませた。グリーンかぶりだが、ルルさんに夢中で誰も気付いていない。……しめしめ。





「ちょっと、ヤマダさん! グリーンは、ぼくなんだけどー!?」


 ちっ、タナカに気付かれたか。



「そんなことより、いいのタナカ氏? あそこに観客のご婦人方が取り残されているぞ?」


 おれが指さしたのは、さっきまでベリアス様に黄色い声援を送っていた、全裸のおばさま集団だ。

 観客席の片隅に寄り集まった彼女達を遠巻きに値踏みする男性客達は、行くべきか行かざるべきか? 立つのか立たないのか? 瀬戸際せとぎわの判断を迫られている。



「よくないよ! なにやってんだよ、ヤマダさん! 早く助けに行ってよ!!」


「じゃあ、グリーンはおれな?」


 えー、ずるいよー! とか言ってるタナカ・イエローを無視して、おれはスキル【飛翔】で空へと飛び立った。

 攻め寄せる観客達の頭上を飛び越えて、おばさま集団の下に向かう。





『気をつけろ、ヤマダが来るぞ!! 防御スキル展開!!』


 おれの前に屈強な男達が立ち塞がる。

 ……むむ? いかにもパーティの前衛っぽい面構え。



「出ろっ、【浮遊盾】!!」

「させるか!! スキル【鉄板召喚】!!」

「スキル【硬化】発動!!」

「くらえ、スキル【土壁】!!」

「ふっ、【電磁バリアー】!!」  


 聞いたことあるヤツやら知らないヤツやら、前衛っぽい男達の各種防御スキルが一斉に発動する。

 

 ――しゃらくさい、「モチモチの剣」でまとめて切り裂いてやる……!!





『ちょ、ちょっと、待ってくれヤマダ……!』


 ――ん? どうしたんだよ「もう一人のヤマダ」、変な所で止めて?

 スキル【硬化】の人が、タイミング外されておっとっと……ってなってるじゃん?



『言っておきたいことがある。……重要なことだ』


 ……? おう。



『たぶん、次か……その次の【勇気百倍】でおれは――』


 ――その時、突然周囲の音が消えて、聖女セリオラ様の切羽詰まった叫び声が円形闘技場に響き渡る。



『いやだっ!!!!? うそっ!!!!? うっ……うそっっ!!!!? ダメダメダメダメダメダメダメ~~~~~~!!!!』


 セリオラ様のスキル【独壇場どくだんじょう】で静まりかえった会場に、彼女自身の声だけが高らかに強い気持ちを主張する。





 ――ぶりっ!!!! ぶりぶりぶりぶりっ……ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅ~~~~~~!!!!


 悲鳴に続いて、湿った排泄音がファンファーレのように鳴り響く……!!









「あーっ、あのひと、うんちしたー!!」


 スキル【独壇場】の効果が失われてもなお静寂に包まれた会場に、シーラさま推定四歳の無邪気な声だけが、やけにはっきりと聞こえた。

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