ジャバウォックという名のドラゴン
私のGWは終了です。仕事頑張るぞー
フィアとティアシオンは、気づいた時には元の丘に戻ってきていた。ティアシオンが、不機嫌そうな声で言う。
「いかにもって感じの剣を手に入れたぜ」
そう言ったティアシオンの手には、鞘に入った剣が握られていた。フィアは嬉しそうに言う。
「きっとそれが、ヴォーパル・ソードなんだね」
フィアたちのもとに、ハートの女王と白の女王が駆け寄ってくる。ティアシオンの手にしている剣を見て、白の女王は微笑んだ。
「よかった、無事にヴォーパル・ソードを手にできましたね。これで、戦う準備を整えられます」
ハートの女王は、鼻を鳴らして言う。
「そもそもアンタのペットでしょうが。アンタがなんとかできないなんて、変な設定ね」
ハートの女王と白の女王が言い争いをしている中突然、アリスとランベイルが姿を現す。きょとんとした表情のアリスとランベイルに、フィアは駆け寄ると笑顔で声をかける。
「おかえりなさい。アリスさんたちも帰ってこられたんですね」
アリスはフィアの顔を見て、思い出したように言った。
「そうだ、あたしたちはまた変な部屋に連れ込まれて……」
「嫌な過去を見せられたというわけです。まぁ、そろそろけじめをつけないといけない案件でしたし? 無事に乗り越えられたと考えてよろしいのでしょうかね」
そう続けたランベイルの手にもまた、剣が1本握られている。鞘に入ったそれを眺めてから、ふと彼は空を見上げた。そしてため息をつく。
「来ましたよ、ヴォーパル・ソードをぶつけるべき相手が」
その言葉を聞き、他の一行も空を見上げた。恐ろしい羽音と共に、大きな翼を持った生物の影が、一行の頭上を猛スピードで通りすぎる。
『なんかすごい音がしてるんだけど、そっち、ラスボス来た?』
ルクアのどこか緊張感のない声で、フィアの硬直した体が少し解れた気がした。トゥルーの鋭い声が聞こえる。
『……ヴォーパル・ソードは手にできたんだろう? なら、何の問題もない』
『思いっきり感情をぶつけといで、そいつが諸悪の根源だからね』
「はい。ここで決着をつけます」
フィアは力強く言った。アリスもまた、自分のバッジから言う。
「優しい乙女をたぶらかした罪を、しっかり償ってもらいますわ」
『誰が優しい乙女をたぶらかしたというのだ?』
ジャバウォックは言って、地上へと降り立った。大きなその体は、まるで山が目の前にそびえたっているかのようである。その姿に圧倒されながらフィアは、本当にこの剣だけで、あの大きなドラゴンに勝てるのだろうかと思案した。不安そうに、剣先を鞘から抜こうとしているティアシオンを見る。すると、彼はまるでフィアの気持ちを察したかのように、ジャバウォックを睨みながら言う。
「大丈夫、物語修正師が作った設定に則ってるんだ、問題ないに決まってる」
「そうですよ。物語修正師は、僕たちに命を与えてくれた存在でもあります。そんなすごい人たちが作り出した設定に、間違いはありません」
ランベイルがティアシオンの隣に並びながら言った。フィアの隣にはアリスが並ぶ。彼女たちの後ろには、白の女王とハートの女王が立つ。ジャバウォックは、腹の底から笑うような声を上げながら言う。
『それが噂の、ヴォーパル・ソードとやらか。見た感じ、普通の剣にしか見えないがな。そんなへなちょこな剣だけで勝てると思っているのなら、さっさと業火に焼かれて消えてしまえ』
そう言って、ジャバウォックは言葉を続ける。
『どうしてそこの白の女王のペットを辞めたか知っているか? 元々のジャバウォックは、とても恐ろしいキャラクターだ。恐れられるべき存在だ。それがこの白の女王のペットという設定のせいで、台無しだ。わたしは、恐れられる存在であるべきだ。そんなとき、世界をわが物にしたいと願う、現実世界では自分に自信のない少女が現れた。愚かなやつよ。現実から逃避して、この虚構の世界で生きたいと願うのだ。しかしわたしからすれば、好都合だった。白の女王に仕えるより、楽しいことがたくさん起きるだろう、そう思って少女に加担した。結果は最高だった』
「おしゃべりは、そのくらいにしていただけますか。わたしたちは、先を急いでますので」
ひとりでに、フィアの口から言葉がもれる。元祖フィアの姿が、この世界に来たばかりの頃の自分に重なった。そんな彼女をばかにしているような口調の、ジャバウォックの話をこれ以上聞きたくなかった。強い視線でジャバウォックを睨む。
自分の話を中断させられ、ジャバウォックは明らかに機嫌を悪くしたようだった。
『ならばその望み、叶えてやろう。お前たちの死という形でな』




