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裏切り者

無事に帰ってきたはずの基地は陰鬱が漂っていた。

メンバーの一人が瀕死で帰ってきたなら当然ではあるが。

レイナの応急措置を行ってきたヒトミと緑葉がすぐそばの共有スペースとなっている部屋に戻ってきた。

二人とも顔に生気はなかった。


「レイナの容態は?」


僕はそう聞いた。


「とりあえず、今は大丈夫です。でも…切れた腕は元には戻らないと思います…」


ヒトミは静かにそう答えた。

切れた腕はくっつかない。当然だ。不死身に近い治癒能力を持っていない限り。

僕は不意に自分の腰の辺りを撫でる。そこにはもう傷は無かった。

自分じゃなく、レイナが不死身だったら、彼女は元通りの五体満足になれただろうか。そんなことばかり考える。


「…野くん、蒼野くん!」


緑葉に声をかけられハッとする。緑葉もとても辛そうな顔をしていた。


「今回のことは…私がいながら…ごめんなさい」


ここに来て二回目の緑葉の謝罪だった。


「いえ、別に緑葉さんのせいじゃないですよ。あれは敵が悪いんです」


僕は精一杯の残力でそう言った。

そう、レイナを重体まで追い込んだのは敵だ。敵が悪いのだと、僕は自分自身にも言い聞かせた。

不意に部屋のドアが開く。

そこには灰坂が立っていた。


「3人とも集まってくれるかな」


静かにそう言う。

誰も答えはしなかったが会議室へと向かった。


会議室には既に赤宮、黒雨、桃谷、紫野、白野原姉弟が居た。

全員既に急襲の件は聞いてあるようで張り詰めた顔をしていた。


「みんな揃ったね。理由は他でもない、今回の急襲の事についてだ」


「待った。黄賀が居ないぞ」


赤宮がそう横槍を入れる。


「シバくんには敵の索敵を頼んでる、今回蒼野くん達を襲ったのはA(Angel)B(Blessing)U(Union)の一人だからね」


確信のある言い方で灰坂は言った。

恐らく以前、相対したことがあったのだろう。


「敵の名前は朱華(はねず)(そう)、能力は『風になる』こと。彼の能力がよく分からないまま出現区域に行ってしまって危ないところだった。その時はシオリちゃんとシンヤくんが行ったからシオリちゃんが目眩しして、急いでシンヤくんの能力で離脱したんだけど…」


灰坂は言葉を切る。

言いたいことは全員がわかった。


「今回の、話は、それだけじゃ、ないでしょ?」


桃谷が言うがよく意味がわからなかった。

他になにか話すことでもあったのだろうか。

その問いに答えるように灰坂が再び話し始める。


「そう、これからが本題。なんで朱華は蒼野くん達の場所を知っていたのかというところだ。確かにシオリちゃんの顔は見たことあるだろうけど、買い物に行ったのを知ってたかのようなタイミングだったからね」


「つまり、この中の誰かがA(Angel)B(Blessing)側って言いたいの?」


紫野が核心を突く。

一気に部屋の温度が下がったように感じた。

疑心暗鬼が辺りを覆う。


「あの、D(Demon)C(Cursed)A(Angel)B(Blessing)を見分ける方法って無いんですか?」


僕は沈黙を壊してそう聞いた。


「少なくともD(Demon)C(Cursed)だと確定させる方法はある」


灰坂は答えた。

答えたあと、手元から能力でハンカチとその上に何かを出した。

それは小さな石ころだった。


「それ、なんですか?」


「正体不明の物質で出来た石、としか言い様がないね」


灰坂は分からないというジェスチャーをしながら言った。


「これにD(Demon)C(Cursed)が触ると、」


言いながら灰坂はその石ころに手を触れる。

すると少しづつではあるが、灰坂の手が黒く焼き焦げたようになる。


「痛いからあまりオススメはしないが…というか蒼野君以外皆既にやってるけどね」


そう言って、灰坂は石をこちらに差し出した。

よく見るとその目には疑いが見えた。

恐らく、最初からだろう。

他のメンバーからも似たような視線を感じる。


「分かりました、触りますね」


石に手を触れた。

ほんの一瞬、チクリとした痛みを感じたような気がしたが、すぐに消えた。


そして手には──

何の跡も残っていなかった。


「…ごめんね、蒼野くん」


灰坂はそう言って懐から銃をだして──







僕を撃った。


……To be continued

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