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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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会長の誕生日

本日は会長の誕生日です。会長ルートの世界線です。


そして、お知らせです。

コミカライズ『BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました』のグッズが、コミックマーケット102(8/12、13開催予定)KADOKAWAブースと、カドカワストア(通販)などで販売されることになりました!

アクスタや複製原画セット、タンブラーなど素敵なグッズがたくさんありますので、コミケに行かれる方はぜひKADOKAWAブースを覗いてみてください。

 本日は八月三日である。


 あと十五分ほどして日付が変わると、八月四日――会長の誕生日だ。

 誕生日になった瞬間におめでとうの電話をしたいから、自分の部屋で寛ぎながらも、ずっとスマホの画面を睨んで時間を確認している。

 遅い時間だけれど、会長は普段からこの時間ならまだ起きていると聞いているから、電話をかけても大丈夫だろう。

「何だかちょっと緊張してきたな。おめでとう、意外になんて言おう……あれ?」

 持っているスマホが、電話の着信を告げている。

 しかも――。


「……会長?」

『央。今、少し外に出られるか?』

「え、今ですか? こんな時間に? 外は真っ暗ですよ」

『出ると言っても家の前だけだ』

「!」


 ……ということは?


「もしかして、もう僕の家の前にいたりします?」

『ああ』

「ええっ」


 慌てて窓から外を見ると、確かに会長らしき人影を見つけた。本当にいるよ!


「すぐに行くから、ちょっと待ってください!」


 隣の部屋にいる兄に気づかれないように注意しながら部屋を出る。

 玄関の扉も静かに閉めて外に出ると、私服の会長がいた。

 暗闇の中でも、僕に気づくと微笑んだのが見えた。


「央」

「会長、急にどうしたんですか」

「お前は明日が何の日か分かるか」


 どう考えても、誕生日のことだと思うが……。

 まさか、この質問のためにわざわざ来た、ということはないよね?


「えっと……明日っていうか、あと十分もすれば会長の誕生日ですけど……」


 すぐに答えると、会長は満足そうにニヤリと笑った。


「そうだ」


 嬉しそうだなー! 僕に忘れられていないか心配だったのかな?

 色々とうっかりする僕だが、さすがに会長の誕生日は把握している。


「チェックのためだけに来た……って言いませんよね?」

「もちろんだ。お前に一番に祝われてやろうと思ってな」

「何だそれ。どこの王様ですか」

「ははっ! まあ、お前に祝って貰おうと思ったのもあるが……。単純に、お前のことを考えていたら、お前の顔が見たくなった」

「! そ、そうですか」


 急に人を照れさせないで欲しい。

 一気に顔が熱くなった。

 暗くてよかった……と安心していたら、まだ満足そうな表情をしている会長と目が合った。


「にやにやするの、やめて貰っていいですか」

「していないぞ?」

「してるから! ……って撫でるな!」


 抗議をしたら、ガシガシと頭を撫でてきた上にニヤニヤ度が増したので、これ以上は何も言わずにいよう。


「まったく、こんな夜中に突然来て何なんですか……。ここで話すより、家に入りません?」

「いいのか?」


 会いに来てくれたのに帰れ! とは言えないし、僕も会えて嬉しいし……。

 それに、もうすぐ日付が変わる。


「せっかくだから、僕に誕生日になる瞬間を祝われてください」

「何をして祝ってくれるんだ?」


 会長を連れて家に戻りながら話す。


「ハッピーバースデーって歌ってあげますよ」

「それはいいな」

「いいのか」


 もっといいものを寄越せ、と言われるかと思った。

 受け入れられると、それはそれで困る……。


 二階に行くと兄を起こしてしまうので、会長を連れてリビングに入った。

 そして、時計を見たら――。


「えっ! 12時過ぎてるし」


 外で話している内に日付が変わる瞬間を逃してしまったようだ。


「「…………」」


 思わず二人で顔を見合わせた。

 会長は特に気にしている様子はないけれど、僕は結構ショックだ。


「会長、お誕生日おめでとうございました……」

「過去形にするな。まだ当日だ。歌ってくれるんじゃないのか?」

「え、本当に歌って欲しいんですか」


 絶対嘘だ、と思ったけど、会長を見ると歌待ちな顔をしてドーンと立っている。

 仕方ないなあ。


「ハッピーバースデー ディア 夏希ちゃーん……むぐぅ」

「お前な。茶化さずに歌え。『ちゃん』はいらないだろ」


 ちょっと恥ずかしいのを我慢して歌ったのに、片手で両頬を掴まれた。


「らって、夏希ちゃんの方が、語呂がいい……って話しづらいなー!」


 いつまで人の口をタコにさせるつもりだ。

 腕を掴んで離したが、会長はまだ歌待ちの構えだ。……はあ。


「分かりましたよ。ハッピーバースデー ディア 夏希。……はい、これでいいです――。…………!?」

「ありがとう」


 突然会長が近づいて来てびっくりした。

 そして、正面から抱きしめられて更にびっくりした。

 家に来るのも突然だし、こういうのも急だなあ。

 行動力が人一倍ある会長は好きだけど……とても困る。

 今日は誕生日だから許してあげるけど。


「……どういたしまして」


 お礼を言って僕も会長の背中に手を回した。

 この人が生まれてきてくれてよかった。

 僕も転生して出会うことができてよかったなあ。

 そんなことを考えながら、しばらく何も言わず、そのままの時間が流れた。


 そして、会長の肩越しに何気なく前を見ると――。


「…………」

「!!!? 兄ちゃん!」


 空いたリビングの扉から、据わった目でこちらを見ている兄と目が合った。うわああああっ!

 慌てて会長から離れたけど、ばっちり見られたああああっ!


「邪魔して悪いけど、どうして夏希が?」


 兄に変なところを見られてしまった……いや、変といってもエロくはないけど!

 エロいところだった生きていけな…………あ、兄ちゃんの気持ちが分かったかも!

 なんて内心大パニックな僕とは違い、会長は機嫌良さそうに兄の質問に答えた。


「央に会いたくなってな。そして誕生日を祝われに来た」


 素直だなー!

 変に嘘をつく必要はないけどさあ……。

 会長の言葉を聞いて、兄はきょとんとしている。


「……そう。夏希、誕生日おめでとう。でも、こんな時間に来るんじゃなくて、もっと早い時間に来るようにね」

「どうしても央に会いたくなったのがさっきだから仕方ないんだ。だが、次からは善処しよう」


 この人黙ってくれないかなー!

 わざとかな? 僕をあたふたさせるために言っているのかな!?

 僕はもう、静かに両手で顔を覆っておこう……。


「とにかく、騒いだりしないと思うけど……静かに……絶対に静かにね?」


 どういう意味の、どういう念押しだ!?

 僕が腐っているからかもしれないが、やたら意味深な忠告をして兄は部屋に戻って行った。


「…………」


 僕は何も言わないぞ。

 顔を覆っておいてよかった……。


「なるほど。静かにすれば、何をしてもいいということだな」


 何がなるほどだよ!

 僕は聞かなかったことにするからな!


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