『略奪ルートで春兄攻略①』
※十話までお読み頂いていることを前提にさせて頂いています。
『通常攻略対象者を全て攻略すると発生するルート』という設定です。
『第十一話 嵐』から分岐
兄寄り(隠しルート)
⇒ 春樹寄り(略奪ルート)
会長のBL恋愛相談室の後は真っ直ぐ家に帰宅した。
精神的に疲労が溜まったのか、身体が重い上強い眠気に襲われていた。
リビングに直行し、ソファに雪崩れ込む。
部屋に行くのも億劫だからこのまま一眠りしてしまおう。
制服を着替えていないからまた兄に叱られそうだ。
そんなことを考えながら意識はゆっくりと沈んでいった。
『……きら』
誰かが僕を呼んでいる?
誰だろう。
『央、大丈夫?』
顔のすぐ近くで声がする。
ゆっくり目を開けると、そこには子供の頃の僕に似た美少年がいた。
小学生低学年くらいに見えるが、利発そうな落ち着きのある雰囲気を醸し出している。
美少年だと思った時点で僕ではないと分かっていたが子供の頃の兄だ。
そうか、これは夢だ。
場所は僕の部屋だが、やはり子供の頃の家具やおもちゃが置かれてある。
『おかゆ、作ったよ』
小さくても麗しい兄が持つお盆の上にはお粥が乗っている。
『さけの?』
ベッドに横になり、熱で顔を赤くしているのは兄より更に小さい僕だ。
どうやら風邪で寝込んでいるらしい。
『ごめん。鮭はなかったからたまごで我慢して』
申し訳なさそうな顔の兄からお粥を受け取り、小さな僕はお粥を口にした。
兄が見守る中口に運んだのだが、すぐに手を止めて首をかしげた。
『なんか……あまい?』
『え、あまい!?』
驚いた兄は僕からスプーンを奪い、確かめるように口に運んだ。
『ほんとだ……出汁と少し塩を入れたつもりだったんだけど間違ったみたい』
『でも、おいしいよ?』
そう言うと止めていた手を再開させ、食べ始めた。
無理に食べている様子も無いから本当に美味しいのだろう。
だが、兄は心配そうにその様子を見つめていた。
『ほんとに? 無理したら気持ち悪くなるから食べなくていいよ』
『たべる』
結局、僕はお粥を残さず食べた。
終始気まずそうに見守っていた兄も、空になった皿を見て安心したように微笑んだ。
少し覚醒してきたのか、これは幼い頃の記憶であることを思い出した。
兄ちゃんでも失敗することがあったんだなあ。
風邪をひいたときも両親は不在が多く、いつも兄が看病をしてくれていた。
『良かった。熱、下がってきたね』
兄の小さな手が僕の額に当てられた。
なんだかくすぐったい。
でも、気持ちいい。
落ち着けるし安心する。
目を閉じて心地よい感覚に身を任せていると、いつの間にか手の感触は段々と大きくて確かなものに変化していた。
(ん? 冷たい……)
冷やりとした感触を額に感じ、一気に目が覚めた。
誰かが夢の中の兄と同じように僕の顔を覗き込み、額に手を当てていた。
「兄ちゃん…?」
「悪い、起こしてしまったか」
目を開けるとそこには蒼い瞳の凛々しくて端正な顔があり、ドキッとした。
兄ではなくダーリンの方だった。
毎日来ているのだから、当然今日もお勤めのように来ていたのだろう。
だが、兄の姿が見当たらない。
「あれ、兄ちゃんは?」
「近所の主婦の方々に捕まっている。俺は先に逃げて来た」
なるほど、さすが兄ちゃん。
オールジャンル、幅広い層で大人気だ。
近所のお母様方は家事をしている兄のことを良く気に掛けてくれる。
僕の方はというと『お兄ちゃんのお手伝いをしなさい』と良く叱られる。
「お前、ちょっと熱くないか? 熱があるだろ」
「え、そう?」
それでさっき、おでこをペタペタ触っていたのか。
確かに意識がぼんやりとしている。
寝起きのせいかと思っていたがどうやら違うようだ。
「風邪ひいたんじゃないのか?」
今度は手ではなく、春兄の頭が近づいてきた。
何をする気だと驚いているうちに春兄の額が僕の額に当てられた。
これは……おでこtoおでこだ。
顔が近くて戸惑ってしまう。
照れてしまっているのか、熱のせいかは分からないが凄く顔が熱い。
顔が熱を持っているのが分かる。
関節が痛いし、涙腺が緩んでいる気もする。
起き上がりたいのに力が入らない。
「春兄、引っ張って起こして」
「ったく、ガキか」
春兄のバスケで鍛えられた逞しい腕に引っ張られて、勢いよく起き上がった。
腕が抜けそうだ。
痛い、凄く痛い。
涙腺が緩んでいるのに痛みで更に泣きそうだ。
もう少し、加減をしてくれないと!
「う、痛っ……」
抗議の視線を向けると目が合った。
「!」
「?」
春兄が一瞬驚いたように目を見開いた。
「春兄?」
「…………」
「どうしたの?」
「!?」
硬直した春兄の顔を覗き込もうと近づいたら、思いきり飛び退かれてしまった。
何? それはどういう反応?
あ、もしかして寝汗でもかいていて臭かったのかな?
まあいいや、それよりも……。
「力が強すぎて痛かったんですけど」
「だったら自分で起きろ。とにかくここで寝るのはよくない。部屋で寝ろ」
「うん、そうする」
「……危ねえ。あの顔は反則だろ」
「?」
春兄が何やらぶつぶつ言っているが、気にせず立ち上がろうとした。
でも身体がだるくて中々動けない。
「おい、大丈夫か? 歩けるか?」
「え、無理って言ったら運んでくれるの?」
歩くことは出来るが今は自分の部屋が遙か遠くに感じるから、是非とも荷物のように輸送して欲しい…………と思っていたら。
「え!? 春兄!?」
身体がふわっと浮いたと思ったら、春兄が僕の膝裏に手を入れて抱き上げていた。
もう片方の手はしっかりと僕の背中を掴んでいて、所謂お姫様だっこの状態になっていた。
なんだと……女子だった前世で叶えられなかった夢が今現実に……! ってテンションを上げている場合じゃない。
「春兄! 米俵みたいに担いでくれたらいいから! これは嫌だ!」
前世なら記念写真を撮って貰いたいくらいだが、現在男である僕には嬉しさよりも羞恥が勝る。
「米俵ってお前……おい、暴れるな! おっと」
「うわっ!」
恥ずかしくてジタバタしていると落ちそうになってしまった。
ついしがみついてしまったのは、全然鍛えていない僕なんかとは違う太い春兄の首だった。
「…………」
「……えっとー……」
おでこtoおでこの時のように顔が接近してしまい、気まずくなった。
春兄もびっくりした顔をしている。
動けずにどうしたものかと固まっていると、「はあ」と溜息をついた春兄は僕を抱え直して歩き始めた。
「え? 春兄、やっぱり歩くから!」
「騒ぐとまた落ちそうになるぞ。階段を上るから、そうやって捕まってろ」
捕まってろって……首にこのまま?
しっかり抱きかかえてくれている安心感とか、今の台詞格好いいなとか考えていると、挙動不審になってしまう。
「イ、イエッサー」
下ろして欲しいが、その気配がないので大人しく従うことにした。
歩かなくてもいいのは助かったが、一気にまた熱が出てきたような気がする。
ぐったりしてしまって力を抜くと、春兄の身体にもたれ掛かってしまった。
僕は春兄よりは全然小柄だけど、女子ではないからそれなりに重いし体積もあるはずだが、春兄は全くふらつくことなくしっかりと階段を上っていく。
スポーツマンイケメンめ、かっこいいぜ……熱が上がるじゃないか、くそー。
「素晴らしい体幹をお持ちですね。さすが鍛えていらっしゃる。逞しいですね。安心感がありますよ。頼れる男は素晴らしいですねえ。いやあ、羨ましい。さぞかしおモテに……」
「央、何を照れてるのか分からないが無駄に喋るな。静かにしてろ」
「……ハイ」
別に照れてたわけじゃないです、なんとなく喋ってないと落ち着かなかっただけです。
言い訳は心の中でして、大人しく黙った。
部屋につくと春兄は僕をゆっくりベッドに下ろしてくれたが、「じゃあな」とだけ言い残してさっさと出て行った。
「……兄ちゃんのところに行ってしまったのかな。…………。あ、いや、『行ってしまった』ってなんだ。当たり前じゃん」
自分の呟きに思わず突っ込む。
春兄は優しいけれど、それは僕が天地真の弟だからだ。
どうしてだろう。
風邪で心が弱っているのか、そんな当たり前のことが寂しく感じた。
そういえば部屋に連れて来て貰っている途中、玄関にご近所から貰ったと思われる野菜が置いてあるのが見えたが兄の姿は見えなかった。
荷物があるのだから帰って来たのだと思うが……。
トイレにでも行っていたのかな。
※※※
目を覚ますと窓の景色は暗闇に染まっていた。
時計を見ると、春兄と話した頃から四時間程経っていた。
熱が上がってきたようでさっきよりも一層関節が痛いし寒気がする。
本格的に風邪をひいてしまったようだ。
項垂れているとドアが開き、ひょこっと兄が顔を見せた。
可愛い、辛い。
兄の可愛い仕草には風邪薬の成分以上の癒やし効果がある。
熱で怠い身体が軽くなった。
「起きたみたいだね。風邪、大丈夫?」
「大丈夫……じゃないかも」
「そうみたいだな」
素直にそう答えると兄が困ったように微笑みながら、ベッドに身体を起こして座った僕のところまでやって来た。
膝をついて頭を寄せてきたので何をするのかと思ったら……春兄と同じことだった。
おでことおでこがくっついている。
兄弟だから春兄の時の様にドキドキはしない。
でもちょっと照れる。
「んー……熱、高いね。ちゃんと測ってみようか」
「うん」
手渡された体温計を脇に挟み、早速測る。
すぐに体温計はピピッと計測完了を告げた。
自分では見ずにそのまま兄に渡した。
「わあ……三十八度超えてる。明日は休んで病院だな」
「はーい」
「じゃあ、お粥作ってくるから」
「お腹減ってない」
「無理はしなくていいけど、少しくらいは食べなきゃ。薬を飲む前に何か入れておいた方がいいよ」
「んじゃ、鮭のがいい」
「残念ながら鮭はないな。卵で我慢して」
デジャヴだ。
さっき見た夢を思い出した。
お互い大きくなったが同じシチュエーションじゃないか。
「……砂糖と塩、間違えないでね」
そう言うと兄はきょとんとしたが、少しすると思い出したようで微笑んだ。
「あー……そんなことがあったなあ。覚えていたんだ?」
「さっき夢で見て思い出した」
「へえ。懐かしいなあ」
本当に懐かしい。
相変わらず両親は留守だけど、変わらず兄と仲良く生活が出来ていることが嬉しい。
「そういえば、春兄は?」
この時間だと帰っていることも多いが、稀に遅くまでいることもある。
今日はどうなのだろう。
「…………」
答えを求めて兄の方に目を向けると、黙ったまま止まっていた。
どうしたのだろう。
思わず小首を傾げてしまった。
すると僕が小首を傾げた意味が分かったのか、兄はボソッと一言口を開いた。
「……帰ったよ」
「そっか」
「春樹が気になる?」
「うん? まだいるのかなって思っただけ」
「……本当にそれだけ?」
「え?」
なんとなく声が冷たく聞こえた気がして、兄の顔を見た。
何か考え事をしているのか、視線を落として黙っている。
「兄ちゃん、どうしたの?」
「いや……なんでもない。お粥を作ってくるから。それまで寝ていなさい」
「うん……」
一瞬感じた冷たさはなんだったのだろう。
兄の様子が気になったが……。
お粥を作ってきてくれた兄の様子はいつも通りだった。
お粥もいつも通り美味しかった。
※※※
朝起きると熱は少し下がっていたが、学校は休んで病院に行くことにした。
昨夜のうちに楓と雛に、風邪で休むことになりそうだから朝の迎えはいらないと伝えていたのだが、心配してわざわざ顔を出してくれた。
連絡した意味が無いじゃないかとも思ったが有難いことだ。
楓なんて冷たいものなら食べられるだろうと、お手製のフルーツゼリーを作ってきてくれるという女子力の高さを見せつけていった。
雛の負けた感が半端なかった。
こんなところで女子力を争わなくてもいいと思うが。
家から一番近くにある総合病院で診て貰い、受けた診断は『風邪』だった。
診察室に入ってすぐに『風邪ですね。薬飲んでゆっくり休んでください。はい、次ー』と追い出されるくらい普通の風邪だった。
隣接している薬局に処方箋を出して薬を貰い、帰宅。
兄が用意してくれていた昼食を食べて薬を飲み、一眠りすることにした。
「んー……ん?」
暫く気持ちよく眠っていたが、スマホの着信音で目が覚めた。
通知に表示されている名前は春兄だった。
その瞬間にパッと目が覚め、慌てて通話ボタンを押した。
「春兄!」
『お、声は元気そうだが……具合はどうだ?』
「うん。平気」
『よかった。様子を見に行きたかったんだけど真に止められてさ。寝かせておくから邪魔するなって』
「そっか」
流石気遣いの出来る兄だ。
でも、体調も大分良くなってきたし、来てくれてもよかったのにと少し残念になった。
声だけ聞くと、無性に顔が見たくなるし……。
「もう大丈夫だから、来てくれてもいいよ?」
『真に叱られるだろ。それにちょっと楽になったからって騒いで、また熱が上がったらどうするんだ』
「……そんな子供じゃないけど」
『いいからまだ大人しくしていろ。そうだ。お前に聞きたいんだが、どうも真の機嫌が悪くてな。お前、なにか知らないか?』
「え?」
驚いた。
兄の機嫌が悪いなんて滅多に起こらないレアな出来事だ。
何時も穏やかに笑っている兄。
怒っているときは必ず理由があるはずだが、特に心当たりは……。
「……あ」
ふと浮かんだのは、昨日の兄の冷たい声。
『心当たりがあるのか?』
「え!? あ、いや……ない、けど……」
心当たり、と言われたらない。
昨日僕が『冷たい』と感じたのも勘違いかもしれない。
だって、兄はずっと優しい。
朝も普通だったし、昼食を作ってくれていたし……。
「春兄が何か兄ちゃんを怒らせるようなことしたんじゃない?」
『俺も心当たりがないんだけどなあ』
「ストレートに聞いてみれば?」
『聞いたけど、流されて終わりだ』
「じゃあ、本当に何も無いんじゃない?」
『いや、多分何かはある。俺には分かる』
「……そうかな」
まるで兄のことは全て分かっている、と言っているような言い草に無性に腹が立った…………って、うん?
春兄が兄のことを理解しているのは「流石相思相愛!」と、普段の僕にとっては萌えポイントなはずなのに、どうして苛々するんだ?
風邪の後遺症で僕のBL器官はぶっ壊れたのだろうか。
とにかく今は春兄との会話を優先しようと、この疑問は飲み込んだ。
「原因が分からないなら機嫌が良くなるように何かしたら?」
『そうか。そういう手段もあるか。真の機嫌が良くなることか……何だと思う?』
「…………。知らないよ。春兄が自分で考えなよ」
『そ、そうだな』
なんで僕が二人の仲を取り持つようなことを考えなければいけないのだ……って、飲み込んだばかりの疑問がせり上がってきた気がするが無視をする。
春兄のしゅんとした声で、今自分は突き放すようなきつい言い方をしてしまったことに気づいたが……しらない。
「僕、病人だし寝るよ。おやすみ」
『おい、待ってくれ』
「なんだよ、寝たいんだけど」
『真じゃなくて……お前が喜ぶことってなんだ?』
「はあ? 僕のことを聞いたって意味ないでしょ? 兄弟だっていっても趣味とか違うし。参考にならないよ」
『いや、そういうことじゃなくて、単純にお前の……』
「もう切るよ!」
僕だって混乱中なのに甘えられても困る。
それに今はムカムカし過ぎて春兄の話を聞いていられない。
「兄ちゃんの様子はよく見ておくから! 何もないと思うけど!」
そう言い捨てると、春兄はまだ何か言っていたがブチッと通話を切ってやった。
「全く、なんだったんだ。すっかり目が覚めちゃったし」
思わず愚痴ってしまったが、喉の渇きを感じて一階のリビングに下りた。
お茶を飲みつつスマホをチェックしてみると、楓と雛、柊からも風邪を心配するメッセージが届いていた。
見舞いに来ると連絡があったが、のんびりしたかったので全部断った。
暇だがこの面子が来ると絶対疲れる。
そんなことをやっていると、いつの間にか時間が経っていたようで兄が帰宅した。
「に、兄ちゃんおかえり」
春兄が『機嫌が悪い』なんて言うから妙に緊張しながら声を掛けてしまったが、兄からはいつも通りの笑顔が返ってきた。
「ただいま。起きていていいのか?」
「大丈夫」
「アイス買ってきたよ。冷たい物が食べたいかなと思って」
「ありがとう! 食べる!」
買い物袋から物を取り出す兄の隣に並んだ。
よかった。
やっぱり、機嫌が悪いなんてことはない。
ほら、春兄だって兄のことを全部分かっているわけじゃないんだ。
なんだか少し胸が軽くなった気がしてわくわくしながらアイスを待っていたのだが、何故か兄の動きは止まっていた。
ボーッと手元の袋を見ている。
「兄ちゃん?」
「……なんでもない。ほら、アイスは今食べるんだろう?」
「え、うん」
固まっていた兄だったがすぐに動き始め、僕にアイスを渡すと残りの買ってきた物を冷蔵庫に入れ始めた。
その様子はやっぱりいつも通りで、特にかわったところはない。
今のはなんだったのだろう?
「あ、そうだ。さっき春兄が電話くれたよ」
「……そう。よかったね」
全て冷蔵庫に入れ終え、袋を片付けた兄が僕の正面に立った。
何も持たず目の前で真っ直ぐたっているが、何か用なのだろうか。
兄の方が十センチ身長が高いため、視線を上げると……。
「兄ちゃん? どうしたの?」
兄は眉間に皺を寄せ、目を伏せていた。
困っているような、悲しんでいるような……。
「央」
名前を呼ばれ、頭を撫でられた。
わけが分からないが大人しく撫でられる。
「……オレは央のお兄ちゃんだよね」
兄がぽつりと呟いた。
独り言なのだろうか。
「ねえ。央はオレと春樹、どっちが好き?」
「へ?」
兄と春兄、どっちが好き?
そんなの兄に決まって…………あれ?
分かりきっている答えを出そうとしたが……何か引っ掛かるものを感じた?
い、いや、兄の方が好きに決まってる、決まっているのだが……。
兄への好意と、春兄への好意は違うわけで、同じ土俵で考えられないというか……。
何か言おうか迷っているうちに撫でていた兄の手が止まり、ぽんと頭に手を置かれた。
「まだ熱いね。寝てなさい」
「う、うん」
兄はそう言うと僕から離れ、リビングを出て行った。
着替えるために部屋に行くのか、階段を上がっている足音が聞こえる。
「兄ちゃん、どうしたんだろう……」
遠ざかっていく音を聞きながら呟いた。
春兄のいう『機嫌が悪い』は勘違いだと思ったが……様子がおかしいことは確かだ。
原因が何かは全く分からないが……。
今はまだ風邪の影響なのかちっとも頭が働かない。
「まずは元気になるしかないか」
言われた通りに寝ていようと自分の部屋に戻った。
ご無沙汰しております。
クリスマスになにかしようと思い立ったのですが、クリスマスネタは以前書いていたのでアップ出来ずにいた略奪ルートにしました。
後半は②は明日、26日に公開します。




