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愚者③

 一方で、反対側の貴族軍と緑炎騎士団の戦いは全くの真逆の展開となっていた。3000同士で始まったが緑炎騎士団の団長ミロス・カーヴェイトの巧みな指揮とその右腕たる”ジュバ将軍”の異名を持つグリー=ドゥ・グラウフィアスが騎兵を率いて貴族軍の右側を崩しにかかった事で劣勢となっていた。

 元々貴族軍はいくつもの貴族の集まりであるため統制はあまりうまく行っていない上に士気の低さも相まって劣勢となっていた。それでもいくつかの貴族が立て直しを図ろうと奮闘しているため総崩れと言う最悪の事態にはなっていなかった。しかし、それも時間の問題であり早急に手を打たねばいけなかった。

 そしてそれを行えるのはにらみ合うだけで動きすらしない中央軍のみだった。


「アバール様!右翼が崩壊しかけています!少数でもいいので右に援軍を!」

「問題ない」


 瓦解しかけている右翼に対するアバールの言葉はこの一言だった。明らかに問題しかない状況にも関わらずアバールはスコルピオン帝国軍の本陣をにらみつけるのみで一切戦況を確認していない。


「ここには癪だが精鋭たる王国騎士団や我が最強の赤狼騎士団がいるのだ。いかにスコルピオン帝国軍と言えどこれらを相手に勝つことなど不可能だ」

「いえ、右翼に両軍はいませんが……」

「サジタリア王国軍が負けるわけないだろう!そして今こそ時は満ちた!赤狼騎士団!前進!」


 もはやアバールのやっていることはめちゃくちゃであった。右翼が崩壊しかけているのを無視して中央軍を前進させる。場合によっては前後から挟み討ちにされる可能性すらあった。しかし、アバールは前方のみを見るばかりで右翼の様子など気にも留めていなかった。彼の頭にあるのは前方の敵を赤狼騎士団が瞬殺しレサトをそのまま落とすという妄想のみだった。


「あ、アバール様!無茶です!」

「黙れ!我の決定に口を出すな!さっさと赤狼騎士団に伝えて来い!」


 そう言ってアバールは怒鳴りつける。兵たちも悔しさで顔を歪めながらアバールの指示を伝えるべく本陣を後にした。

 そして数分後、右側でいいようにやられている貴族軍を見殺しにするように赤狼騎士団は前進を開始した。


挿絵(By みてみん)


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