愚者④
「進めぃ!我らは最強の赤狼騎士団!正面の敵を倒しレサトを奪い取るのだぁ!」
「「「「「お、おおぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」
赤狼騎士団団長シャーグ・ロカーは団員たちを鼓舞しながら騎士団を前進させた。真っ赤な鎧を着こんだ彼らは戦場において大いに目立ち彼らの姿勢も相まって威風堂々とした姿に見えた。加えてその容姿に劣らぬ実力を持つ彼らはサジタリア王国と長年敵対関係にあるレオル帝国にすら警戒される程でここまでサジタリア王国が存続していたのは精鋭の王国騎士団に加えて赤狼騎士団の様な実力のある騎士団がいくつか存在しているからだった。
そんな彼らと対峙するのはファング騎兵団と言う軍隊だった。スコルピオン帝国においてもあまり知名度がない彼らを見てシャーグは簡単に勝てると笑みを浮かべる。
「(敵は全てが騎兵。下馬して戦うならともかくその状態では守る事すらままなるまい。この勝負、勝ったな)」
シャーグは自らの下に舞い降りる栄光の道に酔いしれるが彼は気づいていない。右の戦線が崩壊寸前という事とスコルピオン帝国が守勢なのは事実だがその中でも”攻勢”は仕掛けられるという事に。
突如としてファング騎兵団が突進を開始した。助走なしで最高速度近くを出す彼らをシャーグは驚愕の表情で見つめる。しかし、彼は指揮官である。彼の停止は騎士団の次の行動を阻害することであり結果としてファング騎兵団が前列とぶつかる事を許してしまった。
ファング騎兵団はその騎馬隊の利点を生かして騎士団の中に食い込んでいく。その名の通りまるで牙の如き凶悪な攻撃にようやくシャーグの思考は回復する。
「っ!迎撃しろ!騎馬隊は左右から敵を倒せ!歩兵は周囲の味方と合流し塊を作るのだ!」
「団長!右から敵が来ます!」
「何だと!?」
矢継ぎ早に指示を出すシャーグだったが突然右から敵の来襲があり驚きの声と共に右側を見る。そこには本陣の丁度右側に殺到する敵兵の姿があった。騎馬隊で編成された彼らは”ジュバ将軍”グリー=ドゥ・グラウフィアス率いる緑炎騎士団であった。
優秀な敵に率いられた騎馬隊は混乱する赤狼騎士団に大打撃を与えていく。
前方と右方からの攻撃に崩壊寸前の騎士団を見てシャーグは何故こうなったのかを幾度となく考えながら後方へと撤退を開始した。しかし、そんなシャーグが見たのは本陣に絡みつく敵の姿だった。




