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歩む者と胡坐をかく者

 サジタリア王国の勇者ハバトと出会った翌日、俺はアレフを発って王都アポロンへと向かった。ハバトは昨日のうちにはアレフを発っていた様で出会う事はなかった。個人的にはその方がありがたいがな。


「そう言えば、ナタリーはハバトと会った事があったのか?」

「……一度だけ。帝国の城、で」

「そうか……」


 それ以上は話さなかったがナタリーの表情を見る限りあまり良い出会いとは言えなかったようだ。


「……アポロン。の、次は?」

「んー、そうだな。ジェミナイ連邦を通ってヴァーゴ王国にでも行ってみるか」


 アレフにて手に入れたこの世界の地図を見ながら俺は思案する。南に向かったハバトやスコルピオン帝国に攻め込もうとしている軍勢との鉢合わせは避けたい。そうなると自然と西に固定されてしまう。とはいえ別に問題はないしもめ事を避けられるならそうしたいしな。

 そんな訳でアポロンの次の行先を決めた俺たちはサジタリア王国王都アポロンを目指して歩むのだった。













 スコルピオン帝国遠征軍約1万は7000の軍勢でアポロンを出発しアレフの郊外で3000の貴族軍と合流、スコルピオン帝国国境の都市レサトを目指して進軍していた。

 レサトはかつてサジタリア王国の都市であったが30年以上前にスコルピオン帝国に奪われていた。サジタリア王国はスコルピオン帝国への圧力をかけることが本命だがこの都市を奪還する事も計画に入れていた。とはいえ軍勢は僅か1万。都市を攻め落とすには足りなかった。しかし、総司令として軍の指揮を執っている者はアバール・デュ・セイエレンという人物は本気でレサトを奪還しようと考えていた。このアバールという人物は軍務卿の甥に当たり軍務卿のコネだけで今の地位にいた。その為大した能力はなく簡潔に無能と言っていい人物だった。


「我がサジタリア王国の都市を奪還するのだ!」


 アバールの勇ましい皮だけの言葉に彼を支える兵士たちは冷ややかな視線を送る。そもそもの話1万のみ、正攻法で都市を取れるわけがないがアバールはそれにすら気づいていない。彼を支えている兵たちは レサトの実の籠らない勇ましい言葉を耳にしながら今後の展開を考えるのだった。


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