ベアード砦攻防戦2
「フハハハハハッ!!!脆弱なる人間どもよ!我ら魔王軍に投降せよ!さすれば奇麗に食ってやろう!フハハハハハッ!!!」
十二将と思われるオーガはそう言って何が面白いのか笑っている。周りのゴブリンも笑みを浮かべておりご馳走を前に食欲が押し寄せているようだ。
流石にそんな事をさせる訳にはいかないので俺はナタリー・ダークネスに話しかける。
「ナタリー、ここからあいつに攻撃できるか?」
「出来なくてもやる。なんかあいつ、ムカつく?苛つく?とにかく殺したい」
「お、おう」
オーガの何処に怒りを感じたのかナタリー・ダークネスは眉をひそめ真っすぐにオーガを見ている。いや、睨みつけている。
ナタリー・ダークネスは両手を上げると手の平の先に黒い球体が生まれる。その大きさはあっという間に人間を超えベアード砦並みに大きくなった。
「フハハハハ、ハ……。な、なんだこれは!?」
「喰らえ、勇者の怒り」
ナタリー・ダークネスはスローイングの要領で黒い球体を投げ飛ばす。黒い球体は山なりにオーガの真上から落ちていく。そしてそれがぶつかると球体は周辺すら飲み込み大きくなっていく。
「くっ!ナタリー!これは何だよ!?」
「ん、飲み込んだものを消し飛ばす魔法。もっと大きくなる」
「そう言う事は先に言え!レナードさん!」
「え、ええ!全員後退!後退せよ!」
レナードさんの指示に従い壁の上の兵士たちが向かってくる球体から離れる。
幸い球体は壁に触れそうな寸前で消えたため砦への被害は皆無だった。
「いえい」
「いえい、じゃねぇ!危うく巻き込まれかけたぞ!?」
「ん、大丈夫。その時は、守った」
「そう言う問題じゃねぇよ……」
全く悪びれないナタリー・ダークネスに俺は頭を抑える。……レオル帝国の者たちも苦労していたんだろうなぁ。
取り合えず敵の様子を確認する為に俺はナタリー・ダークネス、レナードさんと共に壁の上から様子を見るのだった。




