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深遠に在る呟き  作者: 望月あさら
■ 4 ■
39/42

4-12

――力が欲しかった。皆を守れる力が――。




 火事。

 目の前で、紅の炎。

 大きかった。

 全てのものを飲み込まんとするほどだった。

 その中に、人がいた。

 見えた。

 よく知った、人間。

 悶えていた。

 苦しんでいた。

 熱がっていた。

 救いを求めていた。



 ――助けて――。



 自分は無力だった。

 自分が吹かせられるほどの風は、炎の前にあっけなく散った。

 何もできなかった。

 ただ手をこまねいてその人が焼かれ灰になっていくのを見ているだけだった。

 何もできなかった。

 自分には力があったのに。

 他の人とは違う力があったのに。

 救えなかった。

 何もできなかった。



 ――何もできないなんて……何が『精霊使い』だ――!



 無力だった。

 無力であることを知った。

 自分は何もできないのだと……。



 ――力が欲しい――。

 ――力が欲しい――。

 ――皆を救えるほどの力が欲しい――!



 『精霊』が。

 去った。



 誓いを破ったと気付いた時には、遅かった。 

 『精霊』が、去った。



 なのに。



 ――この子に『精霊』の祝福を――。



 祝福?

 何の力にもなれない自分が祝福?

 『精霊』に見捨てられた自分が祝福……?



 違う。

 違う。

 違う。



 ちがう。

 ちがう。

 ちがう。



 救えない。

 祝福などできない。

 『精霊』は、もういない。

 だから……。



 違う。

 違う。

 違う。



 ちがう。

 ちがう。

 ちがう。



 しかし、次に何かあった時、救えるなら。

 皆を救うことが、できるのなら。

 そんな力が、自分にあったなら。

 それほどの力が、あったなら……!



 力が、欲しい。

 皆を救えるほどの力が。



 力を得ることができるなら。

 力を、手にすることができるなら。



 力を得ることができるなら。

 力を、手にすることができるなら。



 力を得ることができるなら。

 力を、手にすることができるなら。



 力を……力を……力を……。



 力が……力が……力が……。



 欲しい。



 力を……。



 ――ソノ望ミ、叶エヨウ――。



 誰?



 ――我ハ、『マ』――。



 『魔』?



 ――我ハ、汝ノ望ミヲ、叶エル者――。



 『魔』……?



 ――我ハ、汝ノ望ミヲ、叶エル者――。



 『マ』……?



 ――我ハ、汝ノ望ミヲ、叶エル者――。




 ……力を、ください。




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