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(4)A 2018年6月1日金曜日 告示日

2018年6月1日金曜日 日向肇


 生徒自治会長選挙告示日。昨年は古城に頼まれて推薦人として名乗り出て古城と陽子ちゃんと一緒に選挙戦を始め吉良小夜子が対抗馬で出てきた事で激しい選挙戦になった。あれから1年か。


 午後の授業が終わると生徒自治会室へ向かった。すると階段の踊り場で陽子ちゃんと出くわした。


「やあ」


なんて言いながら手を振られたのですかさず「やっ」とばかりに手を振り返した。


「私が先だったから私の勝ち!」

「ほんと陽子ちゃんは負けず嫌いだな」


 陽子ちゃんに「フフン」と鼻で笑われた。陽子ちゃんが先に階段を降りて行く。俺がその後に続いた。彼女の長めの髪が揺れているのを見入ってしまう。ふと我に帰ると聞いた。


「陽子ちゃん、生徒自治会室に寄る?」


 陽子ちゃんは足を止めて振り返って俺の方を見上げた。


「まあ、誰かさんのおかげで副会長ですから寄らないとね」

「でも今日は古城が立ち会う日じゃなかったっけ?」

「それはそうだけどね」


 陽子ちゃんと俺のどちらが副会長をやるかについて去年俺が陽子ちゃんを説得して副会長を引き受けてもらったのだった。概ね上手く行ったし我ながらいいアイデアだと思ったのだけど俺の監査委員の仕事より仕事が多くなる事もあって冗談半分こうやって俺の事を責めていじってくる時がある。

 選挙管理委員会は古城が委員長で陽子ちゃんが総務委員長・選挙管理副委員長兼務になっている。選挙管理委員は原則総務委員であるクラス委員長の兼務だ。

 俺はと言えば監査委員。監査委員の大仕事は去年度決算であり、同じく監査委員の吉良小夜子と会計委員会の連中と一緒に取り組んで4月中に終えていた。古城や陽子ちゃんも手伝ってくれたけど何故こうも会計や書類仕事がまともじゃないクラブがあるのかという事は勉強になった。吉良の奴、容赦ないので陰でどれだけ事無きを得るように調整したのかとボヤきたくなる。

 そんなこんなで選管委員でもない俺が行く必要はないと思うのだが陽子ちゃんに面倒な仕事を押し付けた結果になった事は遺憾に思っていて、陽子ちゃんの方も俺が一人で先に帰るとは思ってないようだったのでこの点はこれ以上触れずに彼女の後をついて行った。


 1階の下駄箱の列の前に出た。陽子ちゃんが振り返って答えの分かっている質問をしてきた。


「肇くんは先に帰る?」

「陽子ちゃんに付き合うよ」

「ふふっ。ありがとう」


 そんな事を話しながら下校やクラブに向かう子達をかわしながら下駄箱入れの前を通り抜けて生徒自治会室へ連れ立って向かった。


 生徒自治会室の引き戸をガラッと開けると古城と当番の1年生男子、2年生女子の選管委員が既に来ていたので手を挙げて声を掛けておく。


「お疲れさん。もう誰か届けを出しに来たか?」


後ろから陽子ちゃんも入って来た。


「こんにちは」


 2年生女子が俺の方を向いて首を横に振った。A組の委員長の月山つきやまさんだった。そして陽子ちゃんの方を向くと態度が一変した。


「まだ誰も来てませんよ、日向先輩。……陽子先輩、わざわざ来てくれたんですね!今日は当番じゃないでしょう?」


 俺は1年生男子の委員と顔を見合わせて苦笑した。どうやら陽子ちゃんのファンの子らしい。その気持ちは分かる。古城もお手上げという身振りだった。


 今日は古城は当番で来ているんだしたまには俺がコーヒーを入れてあげるか。


「コーヒー入れようと思うけどみんな飲むか?」

『はーい』


 みんな遠慮なくその言葉に乗って来たので電気ポットに水を入れて準備を始めた。


 コーヒーについては古城はうるさい。お母さんが美味しいコーヒーへの執着がある人らしいのは一度ならずお目にかかったので承知しているので遺伝か?と思っている。


「日向くん、コーヒーの粉、安いやつなんだからケチっちゃダメじゃないかな」

「古城。人の淹れたコーヒーにケチをつけてくれるな。こういうアメリカンの方が健康にいいんだぞ」


ま、俺がそう思っているだけかも知れないが。


「やっぱり濃い方が美味しいと思うけどなあ。どう、陽子ちゃん」

「んー。ここは公平に中立で」


 笑顔でどちらにもつかないからという陽子ちゃん。とりあえず俺は陽子ちゃんに異議申し立てをした。


「陽子ちゃんは俺の味方だと思ってたのに」

「時と場合によります」

「私は古城会長に一票です!」


 月山さんという子は熱烈な陽子ちゃんファンだけどその次に古城のファンでもあるらしい。


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