試食会2
試食会の続き
お酒の話も少しあります
ポテトチップとポテトフライを出した後、一旦調理場に戻る。
「ナムさん皆さんの評判良かったですよ」
石臼でスパイスを磨り潰しているナムさんに声を掛ける。
野菜サラダとドレッシングやポテトチップなどの揚げ物もナムさんに作って貰った。
2週間ほど前に冒険者の仕事が一段楽したのと、店の開店の目処が付いたので色々手伝ってもらっている。
揚げ物やサイドメニューやスパイスを磨り潰す作業を任せようと思っているので、今回の試食会のメニューのいくつかを任せている。
「本当ですか。ありがとうございます店長」
「大変だと思いますがスパイスはお願いしますね」
自分の店の店員になるという事で、ようやく様付けを止めて貰えるようになった。
出会ってから数ヶ月経つが長い道のりだったと思っていたら、
「ナムさんアレ何ですか?」
「皆様にお出した残りを食べたら気に入ったようなので、合間に食べれる様に追加で揚げたのですが」
ポテトフライやポテトチップの山盛りを食べているメイド達が居る。
自分の物に、アメリカのファストフードの様にケチャップをたっぷり掛けてモリモリ食べている。
「今回は人数が少ないのでちゃんと働いて下さい」
「すいませんケイタ様、何故か止まらないんですよ」
「そうよ。こんなの作るほうが悪いのよ」
珍しく息が合っている2人、
給仕している時、唇が光っていたのはつまみ食いしたのが原因か、
2人とも美少女なのに口の周りが油やケチャップで汚れているのがシュールだ。
「終わったら幾らでも食べて良いですから、それにポテトだけじゃなくてケチャップそんなに掛けたら太りますよ」
「「 うっ!! 」」
2人は自覚があるのか、摘まもうとした手を止めた。
「すぐ次の料理を出すので、手と口は拭いて下さいね」
鍋の中に入っている物を器に盛り、飲み物を準備する。
「パールは料理を、カエデは飲み物をお願いします」
「はーい、わかったわよ」
「分かりましたケイタ様」
◇ ◇ ◇
黄金の豚商会の代表トン・ピグは、
次の料理が来るまでの間、水を飲んで舌をリセットしながら考える。
(ドレッシングか恐ろしい物だ。生で野菜を食べる習慣が広がれば今後大きな市場になる)
油と酢と塩で簡単に出来ると説明したが、簡単ゆえに奥深く幾らでも組み合わせる材料で違う味の物を作ることが出来る。
(それにポテトもそうだが、冷やしたエールとの組み合わせも素晴らしい)
ポテトと飲み物の説明は無かったから次の料理で説明があるだろう。
扉がノックされ給仕が次の料理が運んでくる。
アマトで使われている器に盛られた物が6人それぞれに並べられていく。
すると赤い粉末が乗っている小皿を2種類並べて、ラッパ型のガラスの酒器を置く。
「モツ煮込みです。お好みでそちらの赤い粉をお掛け下さい」
モミジがガラスの容器に入れられた液体を酒器に注いでいく。
「セイシュです。お好みでぬるめと熱めもご用意致します」
「酒をぬるく熱く」よく分からない事を言い、他のメンバーに注いでいく。
クズハはそのぬるい物を頼んでいたので少し興味が出たが、今は料理を食べよう。
(モツは豚で後は野菜がいくつか入っている煮物か)
器の中を見て箸でモツを摘まみ口に運ぶ。
(柔らかいが歯ごたえもあり、プルプルした感触がなんとも不思議だ。あと味付けのミソやショーユで味付けをしていてショウガの風味が堪らない)
入っている野菜をそれぞれ食べてみるが、タマネギやポテトやニンジンなどに味が染みていてショウガ
がモツの臭みを消して上手く纏めている。
気が付くと器が空になり、赤い粉を試していない事に気が付き、
「モツ煮込みお替りはあるのかね」
「はい、少しお待ち下さい」
器を受け取ると部屋を出て行く給仕を見て、手元のセイシュを見る。
自分はあまりアマトのお酒のセイシュは好きではない、甘味が強く飲んだ後に後を引く感じが苦手なのだ。
見ると周りの連中が美味しそうに飲んでいる。酒好きのバーリが小さい器でちまちま飲んでいるのが不思議で自分も飲んでみる。
(これがセイシュか?、温度や喉越しが自分の飲んだ物とは全然違う。あと果物のような香りがする)
近くに置いてあるガラス製の器から注いで飲んでいると、
「トンはこの味、解るみたいだね」
「クズハ、このセイシュは何なんだ。甘さがくどくないし飲みやすくて美味い」
「ああ、ギンジョウの辛口だから飲みやすいんだよ」
簡単に説明を聞くと、使う米の削り方や作っている産地の水や杜氏によって味が全然違うらしい。
「今回の試食会で辛口のセイシュを出したいと言うから秘蔵の樽酒を開けたんだよ。しかしこのモツ煮と合うね」
「私もモツ煮が来たら一緒に楽しませて貰うよ」
「坊やは酒を飲まないらしいんだけど、さっきの冷やしたエールとポテトの相性もそうだけど、なんでこんな事を知っているんだろうね」
(本当に不思議だ、酒を飲まない人間が料理と酒の相性を知っているなんて)
理由はそんな難しい事ではなく、ケイタの両親がお酒が好きでつまみを作っていただけなんだが、
この様にして周りがどんどん評価していって知らないのは本人だけだったりする。
「お待たせしました」
給仕の子が自分のモツ煮とクズハの酒を持ってくる。
(今度はこの赤い粉を掛けてみるか、さて味は)
皿の粉を小指に付けて舐めてみる。
(辛い、なるほど自分の好みで辛さを足す訳か、では隣は何だ)
隣の皿も同じように小指に付けて舐める。
(辛くはあるが、先ほどのより辛みがマイルドで風味が違う。何種類かの違う物が混ぜてあるのか)
こちらの方をひとつまみ入れてモツ煮を食べてみると、
(辛みが加わると味が締まるな、これは入れた方が美味いな)
モツ煮を食べてセイシュを飲むという組み合わせを楽しんでいたら、
「トン、ハーピーの爪使わないなら貰っていいか?」
クーさんがこの調味料を欲しいと言うので、辛みが強い方を譲ったらモツ煮の中に全部入れる。
すでに他のメンバーからも貰って赤い粉を掛けているため、モツ煮の上は真っ赤に染まっているが本人は美味そうに食べている。
(これが欲しくて臨時休業したわけか)
クーの幸せそうに食べる顔を見て納得したら、
「トンあんたもぬる燗で飲んでみるかい」
興味があったので一杯貰う事にする。
アマトの焼き物の酒器に注いだのを受け取り飲む。
(ああ、ぬるめの酒がこんなに美味いのか、エールやワインではこの味わいは出来ないな)
喉を通る温かい酒の感覚に酔いしれていたら、
「失礼します、モツ煮は如何でしたか」
モツ煮と酒を楽しんでいたらいつの間にか部屋にケイタが居た。
◇ ◇ ◇
モツやジャガイモ、ニンジンの調理法や注意点などを説明する。
こちらの世界のジャガイモの芽や葉にも毒があるので念入りに説明して、
トウガラシの説明に移る。
今回の試食会で一番売り込みたい物なので熱も入る。
「クーさんの故郷の調味料で辛味が特徴です。モツ煮には乾燥させて粉にした物をお付けしました」
「2種類用意されていて片方が違う風味や匂いを感じたが」
トンさんが質問してくる。
「片方はトウガラシだけの一味トウガラシで、そちらの方にはいくつかのスパイスを混ぜた七味トウガラシです」
柑橘の皮、サンショウ、ショウガ、なんかを乾燥させた物を粉にして混ぜた物で七味には数が足りないが、今後混ぜる物を増やせば七味になるだろう。
「乾燥させているので日持ちもしますし、容器に入れて持ち運んでお好きな料理に振りかけて食べれます」
「坊や、その容器はなんでもいいのかい」
「乾燥した状態を保てるなら木でも竹でも小さいひょうたんでも何でもいいです」
「小僧、そのトウガラシもいいが酒の説明をしてくれ」
バーリさんがいきなり質問をして来ます。
「冷えたエールやセイシュも小僧が考えたのか!」
「えっと、そうですね。季節的にこれから暑いなるので冷たい飲み物が合うというのと、ミニスさんに作って貰った道具の説明も頼まれたので」
そういうとミニスに皆の視線が集まるが、
「ぬふふ、魔石ギルドの天才と料理の天才の合作が生み出した世紀の発明の話を聞きたいのかい」
腕を組んで偉そうにしているミニスを見て、皆が面倒くさそうに頷くと説明を始める。
自分が前に魔石ギルドにお邪魔した時に氷と風の魔石を組み合わせるというアイデアを使い新型の冷蔵庫を完成させたという事だが、
小さくて使い道の無かったクズ魔石を組み合わせて使うことで小型の物を作ることに成功したそうで、
サイズは大きなクーラーボックスほどなので個人の部屋に置く事ができるという物で、今後の主力商品になると力説する。
「どうかね、あちしの才能は」
((((( ほとんどケイタの手柄じゃないか!! )))))
皆の心の声が聞こえた気がするが、実際かなり優秀な商品だったりする、
魔石を使う道具類は一般の家庭で使うには高い値段設定なので今まで手が出なかったが、
クズ魔石を使うことでかなり安い値段で販売出来るので一般の家庭に冷蔵庫が普及する事も可能だ。
「これから暑くなってくる寝苦しい夜にキンキンに冷えたエールが寝室にバーリ欲しくない?」
「そりゃあ欲しいが」
「前いらないって言ったよね」
「くっ、どうすればワシに回してくれる」
「それは、誠意を持ってお願いすればね!」
なんかコントが始まったので、
「ミニスさん、意地悪しないで商品のモニター頼むのに、ここに居るメンバーの分はあるって言わないと」
「ケーちん言っちゃ駄目だよ。せっかくバーリの土下座見れそうなのに!」
バーリさんが凄い目でミニスさんを睨んでいますが、話がかなり脱線したので修正をして、
「ミニスさんの新商品の使い方でエールを冷やして飲むというやり方を試食会の場で使わせて貰いました。それとトウガラシを使った料理も今からご用意するので少しお待ちを」
10分程で給仕が次の料理を運んでくる。
平たい器に盛られた物が2皿それぞれ置かれる。
「お待たせしました。マーボードウフとマーボーナスです」
赤いソースにはトウガラシがたっぷり使われているのが見ただけで分かる。
他にも挽き肉や刻んだタマネギなども入っているが全体が赤く染まっているのでなかなか手が出ない。
「クーさんお待たせしました。特製の激辛マーボお待たせしました」
「ケイタ待っていたぞ!!」
受け取った皿を見ると、自分達の皿の物より赤く染まっていた。
刻んだ赤いトウガラシもかなり入っている様で見た目に鮮やかだが毒々しい雰囲気が出ている。
その皿にスプーンを入れてためらい無く口に運ぶ。
口に入れたら見る間に顔中に汗を搔き身体の血色が良くなったのが分かる。
だが幸せそうな顔で匙を口の中に運び続けるのを見て、他のメンバーも口に運ぶ。
『辛い、でも美味い!!』
見た目通りで辛味は強いが、挽き肉やタマネギなどの出す甘味がよく分かり。
ショウガやニンニクの出す香りが食欲を掻き立てる。
トーフの方は素朴な豆の風味や甘味がよく合う、ナスの方は噛み締めると出てくる油の甘味が辛いソースによく合う。
給仕の人達がよく冷えた水を置き、マーボを食べて痺れた舌にはたまらない美味さだ。
「ご飯と一緒に食べると美味しいので試してください」
ケイタがそう言うと、給仕の人達がご飯の盛られた器を皆の所に置いて行く。
クーがご飯の上にマーボーを乗せ食べるのを見て同じ食べ方をする。
『何だ、この米との相性は!!』
マーボの辛さと米の甘味が合わさり単体では在り得ない味が口の中に広がる。
辛味の出す独特な中毒性に皆が虜になっていくと。
「辛味が足りないなら一味や七味を足してください」
足す人もいれば足さない人もいるが、
『なるほど、こうやって使うのか!!』
それぞれが好きな辛さで楽しむ方法が分かり、
マーボー丼にして食う者や、マーボーをツマミに酒を飲む者、ひたすらマーボーを食う者、
三者三様の楽しみ方をしているが共通するのは、大量の汗を搔きながら笑顔で食べているという事だ。
「皆さん、今回の試食会は以上でお出しする物は終わりですが、お替りは要りますか?」
「「「「「「「「 もちろん!! 」」」」」」」」
試食会から宴会の様な雰囲気になったが、試食会で出された野菜類やトウガラシの栽培はトンさんの所で大々的に始める事に決まり。
クーさんの故郷からの輸入や栽培が安定したら一味や七味は竹や木の容器で販売する事になった。
試食会から宴会に突入した会場で、冷えたエールをジョッキに入れ上機嫌なバーリさんがカードを渡してきた。
酒樽と鎚の紋章が刻まれたカードでお礼を言うと、「次は火酒にも合うツマミで頼む!」と言われ了承する。
とりあえず厨房に戻って料理の追加を作る事にしよう。
次はパール回の予定、




