第1話 【 泥の中の神童 】
本作品は『麒麟と龍の系譜』の前日譚(全10話完結)です。一人の少年がチート能力で南方大陸を平定する爽快サクセスストーリー!
今(レイが、祖父ルヴァンとの誓いを立てる日)から半世紀以上前――。
南方の密林地帯に広がるこの大地は、巨大な「メカル王国」などではなく、数十の弱小小豪族が血で血を洗う乱世の極みであった。
日照りと飢饉、そして隣国の略奪。
明日の命すら保証されない時代に、のちの「大王」となる一人の少年が誕生する。
彼の名は、ルヴァン。
「またシアムの野盗どもか……! 逃げろ、村を捨てて森へ走れ!」
悲鳴と怒号、そして赤々と夜空を焦がす炎。
当時、弱小小豪族の三男坊に過ぎなかった十歳のルヴァンは、燃え盛る集落の中で絶望に打ちひしがれていた。
「ルヴァン、走れ! お前だけでも生き延びるのだ!」
長兄が血を吐きながら叫び、敵の長槍に突かれて倒れる。
次兄もまた、村の女子供を逃がすための盾となり、集団で襲い来る野盗の刃に沈んだ。
「兄上……! 兄上ぇぇッ!」
自分には何もない。力も、兵も、地位もない。
泥にまみれ、兄たちの血を浴びながら、ルヴァンは己の無力さに歯を食いしばった。
(なぜだ……なぜ僕たちは、ただ奪われ、殺されなければならない!? 強い者が勝ち、弱い者は踏みにじられる……そんな理不尽が、この世の正理だというのか!)
その怒りと拒絶が頂点に達した、まさにその瞬間だった。
――ドクン!
胸の奥深く、魂の底で何かが弾ける音がした。
ルヴァンの全身の脈胞が跳ね上がり、両腕の肌に不気味かつ神秘的な「青い紋章」が浮き上がる。
古代より南方大陸の覇者にのみ宿ると語られながら、数百年間誰も目覚めさせることができなかった伝説の異能――『神竜の刻印』の覚醒であった。
「な、なんだあのガキは! 腕が光って……!?」
ルヴァンを仕留めようと迫っていた野盗の一人が、異変に気づいて足を止める。
だが、遅かった。
「お前たちを……許さない……ッ!」
ルヴァンが吼えると同時に、彼の身体から青白く輝く莫大な魔導の炎が爆発的に噴出した。
その炎は頭上に集い、巨大な神竜の顎の形を成す。
――ゴーッ!!
一瞬だった。
腕をひと振りしただけで、猛烈な熱風と衝撃波が放たれ、ルヴァンを囲んでいた十数人の野盗が一瞬にして吹き飛ばされた。分厚い鉄の胸甲はひしゃげ、木々は根こそぎなぎ払われる。
「化け物……! 化け物が出たぞあぁぁッ!」
残された野盗たちが、武器を投げ捨てて腰を抜かし、脱兎のごとく逃げ出していく。
泥の中に一人残されたルヴァンは、激しく脈打つ自身の両手を見つめた。
そこに宿るのは、一国の軍勢すら一人で滅ぼし得る、圧倒的な「規格外のチート能力」。
「……これが、力……」
少年ルヴァンの目に、か弱き子供の面影は消えていた。
内に宿る凄まじい熱量と、冷徹なまでの決意。
「僕は強くなる。もう二度と、誰にも何も奪わせない。……僕がこの乱世を終わらせ、全ての民が笑って暮らせる『最強の王国』を創るんだ!」
ここから、一人の無名な少年による、怒濤の「国取り物語」が幕を開ける。
ルヴァンは『神竜の力』を遺憾なく発揮し、瞬く間に近隣の野盗集団を従え、自らの私兵団を結成。
ただ力でねじ伏せるだけでなく、持ち前の知略をもって敵対する豪族同士を対立させ、漁夫の利を得る形で領地を拡大していった。
十五歳で一族の長となり。
十八歳で周辺の五大豪族を傘下に収め。
二十二歳になる頃には、この南方大陸で最も勢いのある若き英傑として、その名を轟かせることになる。
のちに歴史が「大王ルヴァンの快進撃」と呼ぶ、無敗の覇道。
それは、現代のWeb小説で語られる「チート無双」そのものの爽快感をもって、南方大陸を飲み込んでいくのであった。
(第1話・完)
©2026 [インフィニティ・G・イプシロン]. All rights reserved.
【次回予告:第2話】
弱小豪族から一気に頭角を現したルヴァン。しかし、彼の前に「南方最大の軍閥」が立ちはだかる。数倍の兵力差を、覚醒した神竜の力と悪魔的な戦術で粉砕する「無双の初陣」へ!
明日も、19:10 に、投稿します。よろしくお願いいたします。




