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普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


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第8章 市場とガラクタ

 休日の朝。


 アキラは、商人ギルドの建物を出て、市場へ向かっていた。


休日には普段ある露店だけでなく、個人が不要品を売る、

 いわゆるフリーマーケットのようなものが、

 決められた場所で開かれる。


 ここでは個人が勝手に値段をつけるだけあって、

 市場よりずっと安くで値段がつけられていたり、

 逆にぼったくりもあって、目利きが試される場所だ。


 しかし、”鑑定”のスキルを持つ俺としては、

 これ以上ない掘り出し物を探し当てる場所となっている。

 

 最近ではすっかりはまっていて、

 週に2日ある休日のうち、天気さえよければ、1日は足を運ぶようにしている。


 市場は、いつ来ても活気に溢れている。


 食器や服が多いが、

 革製品に、粗末な装飾品。

 そして――


「掘り出し物だよ! 安いよ!」


 その言葉ほど、信用できないものはない。


(……とはいえ)


 アキラは、露店を一つずつ見て回る。


 鑑定士の仕事は、

 “価値のある物を高く売る”ことではない。


 “価値があるのに、安く扱われている物を見抜く”ことだ。


 小さな金属片。

 欠けた指輪。

 歪んだ箱。


(鑑定)


 意識を向けると、情報が流れ込む。


――装飾用銀細工

 状態:破損・劣化による変色

 推定売価:修復前 50リラ

      修復後 4000リラ


(……やっぱり)


 露店の主人は、それをただのガラクタだと思っている。


「これ、いくらですか?」


「それ? 30リラでいいよ」


 アキラは、即座に頷いた。


(買いだ)


 次。


――古代文字刻印プレート

 用途:魔道具

 状態:腐食

 推定売価:修復前 価値なし

      修復後 35万リラ


 値段は100リラとついていた。


腐食している上、ほとんどの人には単なる丸い使いようのないプレート

 にしか見えないのだろう。


 店の端の方に、まったく売る気がない様子で置かれていた。


(そもそも、魔道具とさえ気づいていない値段設定じゃないか?

 確かに魔道具は”修復”できるかリスクはあるが、

 ”修復”さえできれば、価値は凄いぞ)


こちらも購入する事にする。


「本当にこれを買うのかい?」


店主は思いがけない物が売れて、驚いていた。


(……市場は宝の山だな)


 もちろん、値段以下のガラクタの方がずっと多いが、

 ごくまれに、こんな当たりに出会える事もある。


 鑑定を重ねるうち、

 ふと、ある記憶が蘇る。


 神の前で見せられた、スキルの一覧。


(……“修復”)


 あの時は、選ばなかったスキル。


 だが、今なら分かる。


(鑑定と、修復)


 相性が、あまりにもいい。


 鑑定で価値を見抜き、

 修復で本来の価値を取り戻す。


 (”修復”の店を探して、頼んでみようかな・・・)


 思考が、自然と未来を描き始める。


 市場で拾ったガラクタが、

 正当な評価を受ける“商品”に変わる。


 アキラは、

 あえて“今は売れない物”を選んでいった。


 欠けた装飾品。

 古い道具。


 どれも、修復前提で価値が跳ね上がる物ばかりだ。


(……全部、賭けだな)


 だが、数字は嘘をつかない。


 鑑定結果が示す“修復後価値”は、

 確かな根拠だった。


 市場を一周する頃には、

 袋の中には、小物がいくつか入っていた。


 金額にして、1000リラ程度。


(失敗しても、痛くはない)


 だが成功すれば――


(……ぼろ儲けだな)


 アキラは、ふっと笑った。


 日本では、ここまで分かりやすい“可能性”を手にすることはなかった。


 だが、ここは異世界。


 スキルと努力が、正当に噛み合う世界だ。


 ガラクタは、まだガラクタのまま。


 だが――


(いずれ、宝になる)


 アキラは袋を抱え、次の出会いを予感しながら、市場を後にした。

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