表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/32

第3章 異世界アルセリオンへ

視界が、白から色へと変わった。


 風の匂いがする。

 土と石、そしてどこか香辛料の混じった、異国の空気。


「……ここが、アルセリオン……」


 そう呟いた瞬間、自分の声が自然に周囲へ溶けた。

 違和感はない。

 耳に入ってくるざわめきも、理解できる言葉として脳に届いている。


(……本当に、言葉は問題ないんだな)


 目を開けた先は、都市部だった。


 石畳の広い通り。

 三階建てほどの建物が並び、木と石を組み合わせた造りが多い。

 露店の呼び声、馬車の音、人々の足音。


 ファンタジーの世界――だが、想像以上に“生活感”があった。


「魔物肉の串焼き! 安いよ!」


「ポーション補充は済んだか? 今日は森が騒がしいぞ」


 耳に入る単語に、自然と眉が動く。


(……魔物、ポーション、冒険者)


 通りを歩く人々の中には、明らかに武装した者たちがいた。

 剣、斧、弓。

 革鎧や軽金属の防具。


 彼らは堂々としていて、街の人々も特別視していない。


(冒険者が“職業”として成立している文化か)


 日本で言えば、自衛官や消防士のような存在かもしれない。


 むしろ自分の方がじろじろ見られている。


 どうしてだろう?と思ってはっと気が付いた。


 「スーツのせいか」


 この世界の服装としては、かなりおかしな服装なのだろう。


 まず、服を何とかしなくては・・・


 と思って鞄の中を開ける、

 財布を見ると、日本の円から、何やら硬貨に変わっていた、

 おそらくこちらのお金なのだろう。


 手持ちは2万円ちょっと、

 神様は商人ギルドに日本の貯金分は置いてあると言っていたので、

 とりあえず600万円分ぐらいはある事になる。


 日本では決して少なくない額だが、

 異世界でどれほど保つのかは分からない。


 宿代はいくらか。

 食費は。

 家賃は。


 何より――


(仕事をしなければ、減る一方だ)


 当たり前の現実が、異世界でも変わらないことに不安を覚えた。


 通りの端で立ち止まり、周囲を観察する。


 耳が長い人がいる、いわゆるエルフだろうか?

 大きなハンマーを持った小柄な男性はドワーフかなと検討をつける。

 しかし、いわゆる獣人といわれる、耳や尻尾のついた人はいない。

 少なくとも、外見は皆人型をしていた。


 冒険者らしき集団が屋台の前で話し込んでいる。

 酒場らしき建物から、笑い声と音楽が漏れている。

 商人が値段交渉をしている。


 とりあえず服屋だな・・・


 と思って服が大量に置かれている店に行く。


 店にはずらりと服が並んでいるが、何を選んだらいいのか分からない。


 とにかく店主に声をかける事にした。


 「すみません」


 「はいよ」


 「服が欲しいのですが、どんなのがいいか分からなくて・・・」


 「おや、お兄さん、随分と変わった服を着ているね、異国の人かい?」


 「えっと、はい、遠くから来ました」


 「そうかい、そうかい、どんな服をお探しで?

  普段着かい?仕事用かい?」


 しばらく考えて、職を探さないといけないので、

 仕事用を買っておこうと思う、

 それ以上は荷物になるし、この国でどんな立場の人が、

 どんな服を着るかも分かっていない、

 もう少ししてから、買い足してもいいだろう。


 「とりあえず仕事用の服で」


 「そうだね、今も立派な生地の服だから・・・この辺りかね」


 と、ほいほいと5着程出してくれた、

 それを試着させてもらい、体にフィットして、

 見た目も良いものを購入する事にする。


 「これいくらですか?」


 「5000リラだよ」


 5000リラ、そう思って財布を見る、

 すると不思議とこの硬貨が5000リラだと分かる。


 神様が、言語に苦労はしないと言っていたが、ここにも効果はあるようだ。


 財布から5000リラを出して渡す。


 「まいど・・・それとこれは商談なんだが」


 「なんですか?」


 「今まで着ていた服売ってくれないか?1万3000リラでどうだ?」


 買った服より、売値の方が高くて驚いていると、迷っていると受け取ったらしく。


 「いや、1万6000リラ出す!頼む!」


 そこまで言われて、正直相場とかはまるで分からないが、

 持っていても荷物になる所なので、売る事にする。


 「分かりました、売ります」


 「そうか!」


 そう言うと、店主は握手を求めてきて、硬く握手をして、

 スーツの代金を受け取った。


 


 その後、服屋の店主と別れ、また街中をきょろきょろしながら歩く。


 食べ物は店が立ち並び、露店も多い、

 調理できなくても、問題なく生活できそうだ。


(住む場所も必要だな)


 野宿など論外だ。

 治安がどうであれ、拠点がなければ動けない。


(次に、仕事)


 冒険者になるつもりはない。

 だが、鑑定スキルが役立つ場は、必ずあるはずだ。


 情報を集めないとな。


 串焼き売りのにおいにつられ、食べてみようかと思いながら、

 街をまた歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
32歳の中間管理職・陣内さんの、冷静で地に足の着いた異世界転生がたまらなく魅力的です! 派手な戦闘スキルや英雄願望ではなく、これまでの社会人経験が活きる「鑑定」を選ぶところに、彼の堅実で優しい人柄が表…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ