第12章 鑑定士アキラの評判
商人ギルドの中で、アキラの名が聞かれるようになるまで、
それほど時間はかからなかった。
「鑑定、早くて正確だ」
「値段の理由を、ちゃんと説明してくれる」
「無理に高く売ろうとしない」
評価は、静かに、だが確実に積み上がっていった。
鑑定士の仕事は、価値を見抜くことだけではない。
その価値を、相手に“納得させる”ことも含まれる。
「この傷は、古いですが意図的なものです。
価値を下げる要因ではありません」
「逆に、ここが問題です。表面は綺麗でも、内部が劣化しています」
アキラは、常に理由を添えた。
誤魔化さない。
盛らない。
分からないものは、分からないと言う。
その姿勢は、ギルド職員たちの信頼を自然と集めた。
さらに。
面倒見がいい。
「この帳簿、少し書き方を変えると楽になりますよ」
「美味しいお菓子を見つけたんです、お一つどうぞ」
頼まれなくても、気づいたことは、押し付けない範囲で伝える。
課長時代の癖が、ここでも生きていた。
「アキラさん、ありがとうございます」
「助かりました」
そう言われるたび、
彼はただ、軽く頷くだけだった。
そして、仕事が終われば――
資料室。
分厚い本を開き、
過去の鑑定例や歴史資料を読み漁る。
(……まだ、知らないことばかりだ)
優秀だが、驕らない。
結果を出しても、勉強をやめない。
その姿は、周囲の評価をさらに高めていった。
「鑑定士なのに、努力家だな」
「普通、あそこまでやらない」
そんな声が、自然と広がる。
やがて。
評判は、ギルドの外へも漏れ出した。
冒険者が、噂する。
「商人ギルドに、腕のいい鑑定士がいる」
「変な物を持ち込んでも、ちゃんと見てくれる」
「呪いも見抜くって話だ」
商人が、名を覚える。
「鑑定なら、アキラに任せろ」
「値段に納得できる」
名は、ゆっくりと広がっていく。
派手な宣伝はない。
噂話と、実績だけ。
それが、一番強い。
ある日。
ギルド長のグラハムが、アキラを呼び止めた。
「最近、忙しそうじゃな」
「おかげさまで」
「ふむ……良い評判が、外にも広がっておる」
老獪な目が、満足そうに細められる。
「この商人ギルドに採用した儂は大したものだろう?」
そう言われて、笑顔で答える。
「ご期待に添えていれば幸いです」
「その姿勢じゃ、才能だけでななく努力も惜しまない」
「普通の事しかしていませんよ」
「それが凄いのじゃ、凄い事を当たり前にする、それこそがな」
自分を評価しすぎなんじゃないかと思ってしまう。
すると、そんな心を読んだかのようにグラハムが続ける。
「評価は所詮他人がするものじゃ、
儂だけでなく、商人ギルドのメンバー、
果てにはそれ以外の人もアキラを頼りにしておる、これからも頼むぞ」
「ありがとうございます」
異世界に来て、生活の為にがむしゃらにやってきた事が、
確かに認められ、評価されている・・・
その事に嬉しさを覚えると共に、
これからも頑張ろうと気合を入れるのだっだ。




