第2章2
久里浜の街中に響くような、でっけぇ爆発音を立てちまったから、ソンビ野郎に「ショータイム」の始まりを、教えてやったようなモンだろ。
振り返らなくったって、あいつらが来たのが判ったぜ。
…向かいの建物の影や、道路の植え込みの間から、真っ白い面した「生ける屍御一行様」が、いよいよお出ましになったのよ。
半年間の風雪に耐えた奴等の洋服はボロボロだったが、体の方はちっとも衰えちゃいねぇ。
オレの姿を確認すると、主人を見つけた「犬っころ」みてぇに、大喜びで向かって来やがる。
オレはポンプアクションのレシーバーを操作して、初弾を装填すると、狙い済まして一発目を、ぶっ放してやったんだ。
クソ!。残念なことに奴等との距離が離れすぎてるみてぇで、散弾のパターンが拡散しちまって一匹も倒せねぇ。
もっと近くまで引き付けなきゃ、奴らの頭を吹っ飛ばすことは出来ねぇだろうが、チューブマガジンの残弾数よりゾンビ野郎の方が、圧倒的に多そうだから、こっちも躊躇しちまった。
…けど、ゆっくり考えてる場合じゃ無ぇ。
トラックの運転席に戻るまでに、俺が腰だめで撃った威嚇射撃の三連発は、昔のカンが取り戻せなくって、アスファルトの路面に孔を開けただけよ。
その上、奴等、こっちが慌ててトラックのエンジンを始動してる間に、ぐるっと前の方を取り囲みやがって、とんでもねぇ馬鹿力で、車体をバンバンぶっ叩き始めやがった。
ボディが凹んで変形する前に、トラックを前進させて前に居た野郎を、何匹か轢き殺してやったんだが、仲間を置いてオレだけ先に行っちまう訳にもいかねぇだろ。
それでオレは、ギアをバックにぶち込んで、駐車場の方にトラックを後退させたんだ。サイドミラーはゾンビ野郎の攻撃で、どっかに行っちまってたから、カンを頼りにアクセルを踏んだぜ。
フェリー乗り場の駐車場じゃ、自衛隊の奴等も、ゾンビ相手に応戦してるらしい銃声が聞こえてきた。
トラックのサイドウインドウから覗いて見ると、錆びた乗用車の向こう側で、平岡って大男が、二百連のボックスマガジンを装着したミニミマシンガンをぶっ放してる。
中島や城戸崎も無事みてぇで、膝撃ちの姿勢からトラックを追いかけてきたゾンビ野郎を狙い撃ちはじめた。
オレは、六輪駆動の残骸が横転して、火を吹いてる近くまでトラックを寄せたんだ。残骸の側にゃ、可哀想に身動きしねぇ護衛要員の三人が、赤い水たまりの上で『おねんね』してやがったっけ。
黒のジャンプスーツが、埃で真っ白になっちまった伊東の野郎は、俺の方を指差しながら、「脱出する」って金切り声で叫んでる。
奴の命令で中島のアホや、スミスって言うアメちゃんは、何とかトラックの荷台に這い上がった。
マシンガン野郎とノッポの城戸崎も、怪我をして動けねぇらしい「グレーネードランチャー」の男を引き摺ってやって来た。
ゾンビ野郎に囲まれねぇうちに、トラックの荷台に這い上がれたそいつ等は『運』の良い奴等よ。
一番遠くに居た、米森って「ふとっちょ」野郎は、ゾンビに追いつかれて、悲鳴を上げながらM16を乱射してる。
そいつを見た荷台の奴等は、援護射撃を始めたんだが、向こうが接近戦になっちまってるから、味方に当たるのを警戒して、やたらに手は出せねぇ。
その上、トラックの方もゾンビ野郎の手が伸びてきたから、救出しようったって無理な話よ…。
伊東の奴が、喘ぎながら「発車させろ」って言いう前に、オレはアクセルを踏まなきゃならなかった。
…恐る恐る「ふとっちょ」の方を覗うと、奴の上に、何匹かのゾンビ野郎が、折り重なるように飛び付くのが見えたのよ。
ゾンビ野郎は、六輪トラックの爆発に巻き込まれて殺られちまった自衛隊あがりの奴らの所にまで殺到してたから、これから仲間入りの儀式が始まるんだろう。
オレは、そいつ等の恨みを晴らしてやるつもりで、正面から来るゾンビ野郎に強化バンパーの威力を思い知らせてやった。
大通りに出るまでの間に、十数匹を挽肉ミンチに変えてやったが、トラックのハンドルを取られねぇように、運転するのには苦労したぜ。
そのうち、奴等の破片がタイヤの溝に詰まって、スリップするようになってきた。
ハンドルを切ったって、思ったように曲がらねぇから、路肩でポンコツに変わりかけてる、赤いスポーツカーに、突っ込みそうになっちまったよ。
…けど苦労した甲斐は有って、何とか奴等の包囲網を突破すると、打ち合わせ済みのコースに、トラックを向けることが出来たのよ。




