第1話 デレラ、恋に落ちる
乙女市。
美少年、美青年との恋愛を夢見る乙女の住む場所。
恋が叶うことは、努力次第。
まだ恋をしていない、女の娘が一人。
乙女崎デレラ。16歳。
ボリューム金髪のお嬢様。
大財閥の家柄で、大豪邸に住んでいる。
少女マンガを読みあさり、全ての男の子にときめいている女の娘。
特に、カッコいい男の子。ベスト1は、決められない。
だって、皆んな、カッコいいのだ。
「選べないですの」
ヒロインは物語の中で、一人に決めたりするけれど。
恋に恋するデレラは、まだ、決める心がわからなかった。
本物の恋を、まだ知らない。
「デレラ。肉屋でコロッケ買ってきて欲しいでございます」
母。乙女崎ユキヒメは、シングルマザー。
たまに楽しむ、肉屋のコロッケ。
肉屋のコロッケを買ってくるのはデレラの役目だ。
「わかりましたですの。お母様」
デレラは、白いワンピースとピンク色のミニトートバッグを片手に、肉屋に向かった。
第1話 デレラ、恋に落ちる
肉屋。近くの曲がり角。
「うわ」
「きゃああ」
歩行者同士で、ぶつかりかける。
デレラと、眼鏡の男の子。
「すみません。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですの…」
転ぶところだった。
文句の一つでも、言いたいデレラだったが、眼鏡の男の子は目立たない美男子だった。
瞳が優しい。少女マンガの男の子もカッコいいけど、現実の男の子もカッコいい。
ドキドキ。
同年代くらいだろうか。
気になってしまう。
知りたくなってしまう。
「き、気になりますの」
「え」
「貴方は、誰ですの」
「僕は、雪堂メグミといいます」
雪堂メグミ。18歳。
眼鏡の美男子。
心から優しい心の持ち主。
「…キミは?」
「ワタクシは、乙女崎デレラですの」
「乙女崎…。あの大豪邸の家の娘なんですね」
メグミくんは、デレラの住む大豪邸の近くに引っ越して来たばかりだという。
「ぶつかって、すみません」
目線を合わせてくる。
「だ、大丈夫ですの」
デレラは、目線をそらす。
ドキドキ。
ドキドキする。これは、何?
「これから、どこかへ行くんですか」
「肉屋へ、コロッケを買いに行くんですの」
「僕も同行しますよ」
メグミくんは、手を差し伸べる。
「はいですの」
導かれるまま、手を乗せる。
二人で、肉屋のコロッケを買った。
「美味しそうなニオイがしますね」
「オススメなんですの」
二人、並んで帰る。
乙女崎家。大豪邸の前。
「では、さようなら」
メグミくんは、自分の家に帰ろうとする。
さようなら…。
「…さようならは、嫌ですの」
ギュギュギュッ。
メグミくんのシャツの端っこを、思いっきりつかむ。
「…お別れは、嫌ですの」
「え」
「メグミくんと、離れたくないですの」
「デレラちゃん?」
「ワタクシのお家は広いですの。お部屋に住んで欲しいですの。離さないですの」
とにかく、離れたくなかった。
離したくない。このまま、ずっと一緒にいたい。
シャツをつかむ手が強くなる一方だ。
手が赤い。
「デ、デレラちゃん。わかりました。ひとまず、お家にお邪魔しますから。話し合いしましょう」
メグミくんが、気をつかう。
「メグミくんは、ワタクシとずっと一緒ですの」
デレラは、メグミくんと絶対に離れたくなかった。




