70話 ドッジボール講習会
たくさんの誤字報告、お手数お掛けいたしました。
本当にありがとうございますm(_ _)m!!
街から帰って来た時、セバスチャンにお願いしておいたので、ボールは既に訓練所に運ばれているはずだ。
いそいそと訓練所に行くと、袋に入れられたボールが7つ置かれていて、子供達が囲んでいた。
「アシュリー様、こんにちは!」
「はい、こんにちは!」
「アシュリー様、これはボールですか?」
「そう!今日、街で買ってもらったのよ!」
「すごい、こんな真ん丸な柔らかいボール初めて見ました!何をするんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!『ドッジボール』という競技で、このボールを投げて当てるのです」
「へぇー」
そうか、研修生だけじゃなく子供達もドッジボールできたらいいよな。
まだ時間早いし、少し遊ぶか♪
「ちょっと皆でキャッチボールしましょう!」
「キャッチボール?」
今日来ている子供は9人、私を入れたら10人だ。2組に分かれても十分遊べる。
「みんな集まって!」
年の順に並ばせて、交互にチームを分けていく。
コートはどうしようか…ちょっと面倒だが、作った方がいいだろう。
「ちょっと待っててね」
確か公式ドッジボールのコートは10mくらいだったと思う。
頭にコートのイメージをして魔力を手に集中する。
『ドッジボールのコート!』
訓練所の地面に真四角が二つくっ付いた線が描かれている。
地面の色より濃い黒に近いこげ茶色の線だ。
「これで良し!今分けたクインティンの組の子はあちらの四角の中に入って、一人外野を選んでちょうだい」
「がいやですか?」
「そう、敵を挟むためにこっちの外側に来るのよ。ああ、二人でもいいわ」
「分かりました」
「私たちも二人外野に行きましょうか。向こう側へは誰が行く?」
「はーい!アシュリー様のボールを取るんですよね?僕が行きます。後は…トム、一緒に行こう!」
「うん!」
お、ソルとトムか。
ソルの理解の速さのおかげで簡単に決まった。
向こうも決まったようだ。
「まずはボールを投げ合ってみましょう!クインティン達はそっちの半分で投げ合ってね。私達はこっちの方で投げ合うわ」
ボールを二つ出してキャッチボールをしてみた。
ボールがお互いに届くかどうかも問題だ。届かないようならばコートを小さくしなければならない。
「アシュリー様、ボールが軽くて大きくて投げにくいです!」
手がまだ小さい子供達にはちとボールが大きいかもしれない。
「手だけで投げては飛びませんよ。腕はなるべく伸ばして、肩は引き、こうして反対側の足を広げて前に出し、体重をかけながら飛ばします」
私がソルに投げたボールはほぼ真っ直ぐ飛んで行った。
「おぉっと!」
ソルはボールを弾いて取れなかったので、落としてしまった。
「この競技はボールを落としたらダメな競技ですからねー!ソルが外野でなければはアウトです!」
「えー!」
「ふふっ!このボールは身体も使って取るといいんですよ。その時にボールが前に進もうとする力を逃すように、少し身体を引くと良いのです。さあソルもクインティンも投げてみて」
「いきますよー!」
ソルの投げたボールも結構真っ直ぐ飛んで来る。なかなか良いスピードだ。それを抱え込むような姿勢でしっかりキャッチしてみせる。
「あっ!分かりました!」
さすが騎士団の見習い達である。理解が早い。
皆がキャッチボールを再開する。
「アウトー!」
「クソっ!」
「このボールが取れるかっ!」
「そんなへなちょこボール簡単さ!」
「あなたたちは味方同士なのですから、取りやすいボールを投げないと!そういう取り難いボールは敵に向かって投げるのよ!」
「分かりました!」
全員が何度かキャッチボールできたところでゲームを始めることにした。
「では、ゲームをしながらルールを覚えましょう」
「「「はーい!」」」
「中と外で挟んだ敵チームにボールを当てていきます。
頭に当ててはいけません。頭に当たってもアウトにはなりません。
一度取って落としてもアウトです。
アウトになった子は外野に行かなければなりません。もともと外野だった子はその時戻れますが、アウトになって外野に行った子は、敵をアウトにしなければ戻れません。
最後に中に残った人数が多い方が勝ちです!」
「がいやはどこから投げてもいいのですか?」
「ダメです。その横線からだけです。縦線まで来て投げるのはだめです」
公式ドッジボールでは外野の線が縦線まで少し伸びていたが、面倒なので横線だけにしよう。
「分かりました、やってみます!」
ジャンプボールも教えて、いざ開戦だ!
「行くよ~!!」
「「おー!!」」
「ウィニー、アウト~!」
「クソッ!すぐに戻ってやる!」
「トムは戻っておいで~」
「はい!」
「あっ!アシュリー様に取られた!」
「ふふっ♪今度はこちらが攻める番ですよ」
「逃げろ~!!」
「あー!当てられた!」
「まだボールは地面についていません!そのボールを取るのです!」
「はい!?」
「当てられた子のボールが地面につく前に味方が取れればアウトになりません。惜しかったですね」
「敵に取られたら?」
「もちろんアウトです」
当たったボールは線から出たので外野のボールになることも説明し続行である。
それから当たったり当てられたりと楽しそうにドッジボールをしていると、研修生が訓練所に入って来たようだ。
一番乗りは王子とエドゥアルド様か。
「おっ!また楽しそうなことをやっているな!」
「ドッジボールという競技で遊んでます」
「そうか!私も遊びたい!」
「どうぞ、しばらく見学してルールが何となく分かったら入ってもいいですよ。あ、でも入るのは人数が合うように別れて入ってくださいね」
「エドゥアルド、お前もやるか?」
そういえば・・・エドゥアルド様の体調は良くなったのだろうか。
「王子殿下、私と交代しましょう。ソル、悪いけど王子のことよろしくね」
「承知しました」
「おっ?おぅ…よろしく頼む」
「とにかく敵のボールに当てられないようにしてください」
王子は任せておいて、エドゥアルド様の体調を確認する。
「お顔の色は随分良くなったと思いますが、無理をされてはいませんか?今日一日お休みされても良いのですよ?」
「大丈夫です。今朝もゆっくり休ませてもらいましたので、身体も楽になりました。あまり寝ていると余計に身体が怠い気がするので来てしまいました」
うん、それは分かる。
「では、体操やストレッチなどは参加しましょう。走り込みなどの体力強化はなるべく休んで様子を見た方が良いかと思います」
「アシュリー様がそう言うのなら、少しずつ様子をみながら参加します」
「そうしてください」
エドゥアルド様は思ったより素直そうだ。
王子は・・・思いっきり楽しんでるな!
「あー!楽しそうなことやってる!僕も仲間に入れて〜♪」
デヴィッド君とジョン君も来た。最近、この二人は一緒に来るな。繋がりは⋯反国王派の親持ちって事くらいだと思うが、仲が良いとは思えない。少し要注意かな?
「良いですよ、ジョン様もやりますか?」
「ジョン君どうする?」
「私は⋯ボールなど触ったこともない!」
「じゃあ、初体験といこうか!実は僕もなんだ。変なとこに飛んでったらごめんよ〜」
「え?やるとは言って・・・」
「行っくよ〜!」
無理やり手を引いて連れて行ったよ…人を巻き込むのが上手いデヴィッド君であった。ジョン君もやりたそうな感じはあったので良いだろう。
そうこうするうちに、次々と研修生が入って来ては、誰もがドッジボールをしたがった。
分かるよ、その気持ち!やりたいよな!
始まるまではしていても良いことにして、どんどん人数は増えていった。
もちろん、私も再び参入だ!
こうして見ると、ボールを投げることに慣れていないからか、研修生達もそれほど球速は速くないので、キャッチを落とす人も少ない。少し前から投げている子供達の方がコツが分かって来たようで、ボールが山なりではなく真っ直ぐ飛んでいく。
研修生達にも投げ方のコツを教えよう。
「皆様、ボールには回転をつけた方が早く飛んでいきます。良いですか、こう投げる手と反対の足を前に出して体重移動をすると共に、腕を振りかぶって、ボールが離れる寸前に手首を使って回転させるのです」
「ほぉ!手首をもっと動かすのだな!」
「はい、投げたい方向の寸前まで手から離さない方が真っ直ぐ飛びます」
バスッ!
「グェッ!」
おっと、強く投げすぎたか。
王子よ、すまん!
「アシュリー・・・加減してくれ・・・」
「申し訳ありません。でも、ボールをキャッチする時も、こう、力を逃がすように瞬間に身体を少し引くと、ボールは跳ね返りませんし身体への当たりも軽減出来ます」
「そ、そうか⋯もう一度投げてみてくれ」
ボスッ!
「グッ⋯」
よし、少しコツを掴んだようだ。
王子よ、頑張れ!
「アシュリー様、私にも投げてくれませんか」
「はい、行きますよー!」
ダドリー長男の要望に応えると、次々に投げて欲しいという声がかかる。皆、投げるより受ける方が好きなのか?
「皆様、いつかこの『ドッジボール』の試合を組みたいと思っておりますので、投げる方も練習してくださいね!詳しいルールはまた後ほど説明いたします」
「試合ですか?」
「はい、これはチームで対決する競技なのです。チーム分けも力に合わせて考えます。基本はボールに当たったら『アウト!』ですから、強く速いボールが投げられること、どんなボールでも落とさず取れること、それが勝つ為のコツでしょうか」
「だったら、ボールに慣れないといけないから、いっぱい練習させてね!」
「ふふっ デヴィッド様、分かりました。今日はドッジボールに関係がありそうな訓練も加えましょう」
今日は、100mダッシュの代わりにターンの練習を加えてやろう!ヘクターが来たので、ちょうど良い、打ち合わせをしておこう。
「お嬢様、私はまだボールに触ってもいないのですが、いきなりお嬢様の投げたボールなど取れませんよ!」
「ヘクターなら大丈夫よ!」
「どんな勝手な信頼ですか!」
「今から参加すればいいのよ!」
そしてヘクターにもドッジボールをさせる。
「ちょっと!アシュリー様とヘクターが味方同士なのは卑怯です!」
「あら、ダメかしら」
「じゃぁ、ヘクターはあちらの組ね」
「はいはい・・・」
よし、ヘクターに当ててやる!
そう思ったが、なかなか当たらない。
やるなお主!
私ばかり投げていては練習にならないので、他の人にどんどん取りに行かせる。
私は取り難いボールを取って外野に回す。
なかなかのチームプレイだと思う。
私のチームにはノルベル君を入れた(無理やりだったが)。
私が護っているのが分かったのか、無駄に走り回らずボールの動きに集中しているようだ。
「ノルベル君。あのボールを取るのです!」
相手チームにいるダニエル君が投げた山なりのボールは外野まで届きそうもない。
「はい!」
後ろに下がってキャッチしようとしたが、ボールは跳ね返ってしまった。
「あっ!」
すかさず、ソルがそのボールをキャッチしに行く。
コートぎりぎりの所で見事キャッチしてくれたのでノルベル君はセーフだ。
「あ…ありがとう」
「どういたしまして!」
うん、良い傾向だ。
「アシュリー様、訓練の時間になりました」
「分かりました、ありがとう。皆様、訓練の時間です!」
お手伝い騎士が時間になったと教えて来てくれたので、ドッジボールは終わりだ。
皆の残念そうな顔が・・・非常に面白い。
ラジオ体操と軽いランニングとストレッチはエドゥアルド様も参加し、その後は少し様子をみる。
「では、今日はドッジボールにも役に立つターンの練習をしましょう!」
いつものダッシュの時に使うポールは使わず、さっき魔法で書いたドッジボールのコートに二つのグループに別れて横一列に並んでもらう。片方は私とヘクター、もう片方はクインティンとサンダーで挟む。
「いいですか、これから私たちがキャッチボールをしますので、それに合わせてターンをしてもらいます。ボールを持っている人から離れるように後ろへ下がり、ボールが投げられたら直ぐにターンしてまた後ろへ下がります。その繰り返しです。まずはゆっくり始めましょう。」
クインティン達にも合図をして、ゆっくりキャッチボールをする。ヘクターはあんなことを言っていたが、しっかり出来るではないか!
「下がりすぎると当てられますよ」
「なにっ!?」
「ふふっ!」
「こわっ!」
そして、だんだん速くする。
「速くなったぞ!」
「ターンが遅いですよ〜!」
もっと速くする。
「ついて行けん!」
「ターンサボったらダメですよ〜!」
しばらく続けると、もうターンどころではない人続出である。後ろへ下がるのも難しいのだ。
ノルベル君とダニエル君は何度も転んでいる。
「はい、ここまで!」
「ダッシュもキツイが、これもキツい・・・」
「太ももが痛いです」
「ターンをしてから後ろに進んでいては遅いのです。回りながら身体は後ろへ下がる。敵から目を離さずに身体は次の行動に備える。戦闘の基本ですよ」
「うっ…確かに」
「ダニエル様とノルベル君は、ターンするときの方向が間違ってるので転ぶのです。引いている足の方へ回るようにね。ボールから目を離さないためには、回る方向の足を下げていれば早く回れますよ」
「は、はい」
「あ、ありがとうございます」
「投げる人を交代しましょう。大縄跳びの時のように」
そうして、四半時を過ぎるくらいは…いや、もっとやったかな?ターンの練習をした研修生たちはヘロヘロだったので、ちょっとやりすぎたかもしれない。
休憩時間には詳しいルールの説明をしよう。




