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69話 雑貨屋と器具屋と屋台の行商

誤字報告ありがとうございますm(_ _)m!

 収拾がつきそうもないほどに盛り上がっている街の人々の様子を見ながら、ロッティ先生は少々呆れたようである。


「これは、もう買い物出来そうもないかしら」


 え?それは残念すぎる!

 いかん、いかん、ちょっと切り替えよう。


「ねぇ、私、笛を探しておりますの。何処に行けば買えるかしら」


 周囲の盛り上がった空気は読まず、一番近くにいたおじさんに歩み寄って声をかけてみる。


「ふ…笛でございますか?えー…それは楽曲を奏でる長いものでしょうか、それとも鳴るだけの短いものでしょうか」

「ピーって鳴るだけのもので良いのです。短い物が良いですね」

「それなら、そこの雑貨屋でもございますし、あの曲がり角を曲がった所にある器具屋にもあります」

「ありがとう!早速行ってみるわ」


 よし!

 これで買い物再開だ。

 街の人々もさっきより静かになった。


「ロッティ先生、クラリッサ、行きましょう」

「アシュリー…あなた切り替えが早いわね」

「はい!」



 雑貨屋に行ってみると、色んな笛があった。これは飼っている動物の躾に使ったりする事が多いらしい。誰でも簡単に作れるのだと、お店の人達が嬉しそうにいろいろ話してくれる。

 私達が自分のお店に入って来たのが余程嬉しいのだろう。


 店主の手作りだという笛を二つ買って帰ろうかと思ったのだが、クラリッサが店内を見て目を輝かせている。欲しい物でもあるようだ。


「クラリッサも欲しい物があれば一緒に買って行きましょう」

「よろしいのですか!」

「え、ええ⋯構いませんよ」

「ありがとうございます!」


 そう言ってクラリッサは嬉しそうに商品を選び始めたので、私とロッティ先生も一緒に見て回ることにしたのだが、この雑貨屋はかなり面白い。前世で100円均一の店を見て回っているような…そんな面白さがある。


 クラリッサが一番に目を付けたのが「洗濯はさみ」である。前世でよく見たコイル状のバネは使われていないが、同じ原理のものだろう。「これで洗濯物が飛んで行きません」と喜んでいるのは使用人らしいチョイスであるが、私は今まで使われていなかったという事実の方に驚いた。


 次にクラリッサが目を付けたのは…あれは何だろう?

 クラリッサは見つけられてとても喜んでいるようだ。


「これは何ですか?」

「これはアシュリー様をもっと可愛くできる道具です!」


 は?私を可愛く?

 その丸いもので?


「アシュリー様、これは髪を巻く道具でございます。そのままでもご使用になれますが、こちらを少し温めてからご使用になりますと、よりきれいに髪を巻くことができます」

「アシュリー様の髪をクルンと巻いたら、もっともっと可愛くなりますよ!」

「そうでございましょう!ああ!私もアシュリー様が髪を巻かれたお姿を拝見出来たら・・・」

「きっとまた来ますわ!」


 何やら、クラリッサと店員が意気投合している…。

 まぁいいか。


 二人のテンションについていけないので、その後はロッティ先生と二人で店内を見回った。クラリッサは自分の物など選びそうにないので、私が何か選ぶことにしたのだが、私が選ぶよりロッティ先生の方が趣味も良いだろうということで、二人でクラリッサの髪飾りを選んでいる。


「忙しそうなクラリッサにはこれが良いのではないかしら。ほら挟むだけでいいんですって。私も買って行こうかしら・・・」


 先ほどの洗濯バサミと同じ原理で作られた、髪を挟んでまとめたりできる髪飾りがなかなか良さそうだ。クラリッサに一つ、ロッティ先生にも一つ包んでもらう。

 面白いからいろいろ買ってしまいそうだが、この店ばかりで買い物するのも良くないかもしれない。そろそろ移動した方が良いだろうか。

 クラリッサにもそう言って、この店での買い物は終わりにした。

 店の人達はお見送りしながら、頭を何度も何度も下げまくっていた。こちらが恐縮しそうであるが、ロッティ先生と自分の身分を考えれば当然のことであった。



 もう特に必要なものは思い浮かばないので、先ほど教えてもらった「器具屋」という所に行くことにした。ほんの少しの距離であるし街の様子も見たいので歩いて行きたいとお願いして、馬車は邪魔にならない所に待機してもらう。


 ほんの100mほど歩くだけだが、街の人々が嬉しそうに呼びかけてくれる。今日一日でいったい何人の…いや、何百人の人と会っただろうか。さすがに全員の顔は覚えられないが、昨年も会った人は何となく覚えている。


 あれは武器屋の店主だ。

 もう少し大きくなったら剣も作ってもらうからな、その時はよろしく頼むよ!そんな気持ちで手を振ってみたら、嬉しそうに手を振り返してくれた。


 ははっ!

 他の人達も手を振りだしたよ。

 手を振ってる間に目的地に着いてしまった。



 店の名はそのままの『器具屋』という看板の店に入ると、これまた嬉しそうにお店の人が出迎えてくれる。でも、好きに見せてくれるようで出しゃばって来ないのがいい。

 雑貨屋よりもう少し職人寄りといった風な店であるが、面白そうな商品置いているのは変わりない。クラリッサはまた目の色を変えて店内を回りだした。私とロッティ先生は二人でゆっくり見て回る。



「これは何に使うものかしら」

「これは多分、野菜の皮を剝くものでしょう」


 この辺りはキッチン用品っぽいし、前世で見たピーラーに似ているからそう答えたのだが・・・


「アシュリー様!よくお分かりになられましたね!これは『皮むき器』と言って、皮を剥いたり、芋の芽を取ったりできるのです!とても良い道具だと思うのですが…全然売れなくてあまり出回ってないのです…とても便利なものですのに・・・」


 近くにいた他の店員がすごい勢いで話しかけてきたと思ったら、いきなり落ち込み始めたよ。まぁ自信作が売れてないとなれば落ち込むか。ピーラーが便利なことは知ってるから料理長に買って行こう。


「グレンヴィルの厨房にいくつか土産で買って行きましょう」

「あ…ありがとうございます!きっと料理人の方々にも喜んでもらえるはずです!」


 大喜びの店員は、土産だと聞いたからか商品を丁寧に包み始めた。


「ふふっ…きっとこの後、あの商品には『グレンヴィル家厨房にてご愛用』とかいう付加価値が付くのよ♪」

「そうなのですか?」

「商売ってそういうものでしょう」


 確かに。

 商品価値を上げる為には利用できるものは利用しないとな。

 私の買い物はきっと役に立つだろう。



 おっ!鐘の音が聞こえる。

 昼の鐘なので訓練までにはあと鐘一つ分である。

 そろそろ帰らねばならないだろうか・・・。


「あら、もうお昼ね。どこかで何か買って食べましょうよ」


 ロッティ先生は街で買い食いをするつもりらしい。大賛成である。


「前に来た時は、パン屋でパンをいただいたのよ。焼きたてのパンはとても美味しかったわ♪」

「ロッティ先生は外で食べることに抵抗はないのですね」

「ええ、テーブルでごちそうをいただくのもいいけど、外で食べるとまた違った美味しさを感じるのよ。アシュリーはそんなことないかしら」

「はい!私は野営で食べる食事が一段と美味しく感じます!」

「それはまたちょっと違うような気がするわね…」


 そんな話をしながら街道を歩いて行くと、お昼時だからかそこかしこからいい匂いが漂ってくる。私はその中でも一段と(かぐわ)しい匂いを放っている店へ突進した。


 これは・・・アレだ!


「アシュリー様!?」

「アシュリー?何があった・・・」


 慌てて後を追いかけてくるクラリッサとロッティ先生。

 置いてけぼりにして申し訳ない。


「いらっしゃいませ!アシュリー様!」

「クラリッサ、私はこれが食べたいです!」

「これは何ですか?私は初めて見る食べ物ですね。クラリッサは分かりますか?」

「はい・・・何となく」


 クラリッサは分かるのか、さすが物知りだな。


「侍女様もご存じですか?私はコーク領から来た行商人で、国中をこの『たこ焼き』を売って回ってるんです!とにかく食べてみてください」

「はい!いただきます!」


 私がすごい乗り気なので、仕方なくロッティ先生も食べることにしたようだ。もし食べられなくて残しても私が食べるから大丈夫だ。

 テーブルと椅子も用意されているので、焼きたてをすぐに食べることができる。


 美味い!!


 ちょっと甘いソースは思った通りの味。

 外はカリっと中はほにゃっと、そして大きなタコ。

 コーク領ではタコも獲れるのか…いいなぁ~グレンヴィルは海に面してないからなぁ~、魚介類不足だよ。タコを腐らせずに持ち歩いているということは、この行商人は氷魔法が使えるのかな?


「あら、思った以上に美味しいわね。でも熱いわ!」

「はい、熱いです。でもそこがまた美味しいのです!」

「このソース、とても美味しいです」


 クラリッサも嬉しそうに食べているので良かった。

 売り歩いているという事は、今日はたまたま買えただけで、もしロッティ先生が街に買い物に行こうと誘ってくれなかったら食べそびれていたということだ。


「ロッティ先生。今日街へ連れてきてくださってありがとうございます!」

「ボールを買いに来て『たこ焼き』で一番感謝されたわね…複雑な気分だわ」

「そ、そんなことは・・・」


「ねぇ、あなた店のご主人?」

「はい!息子と二人でやっとります」

「明後日、領主の屋敷でこの『たこ焼き』を作ってくれないかしら」

「え…え?えーーーーーーー!?」



 驚く店主を他所に、少年と言っても良いほどに若い息子と商談を進めるロッティ先生。どうやら息子の方が商魂逞しいタイプのようである。

 話すうちに、この息子が水魔法の使い手で、父親が火魔法の使い手だと分かった。父親は貴族の三男だったらしく、兄が家督を継ぐ前から海産物屋の商人として暮らしていたらしい。妻が病気で亡くなってから店は長男夫婦に任せ、次男と二人で旅を始めたのだと言う。

 見たところ結構立派な馬車なので、元貴族だというのも頷ける。これに大量のタコが積まれているのだろう!でも、我が家に売りに来たらいっぺんに無くなるかもな・・・。



 良い時間になったので、楽しかった街の散策も切り上げて屋敷に戻った。


 そして私が買った(お金を払ったのはクラリッサなのであまり自分で買ったという実感はない)土産を厨房に持って行ったのだが・・・

 なんと、我が家の料理長は、ピーラーよりも早くナイフで芋の皮が剥けてしまう達人だった!


 しょんぼりする私に慌てた料理長は


「ああ…アシュリー様!他の者はこんなにナイフは使えませんから助かります!」


 慰めるように言ってくれたが、あの器具屋で売れなかった理由が分かったよ。慣れた人はピーラーなんか要らないんだ。私は前世でもピーラーしか使えなかったからな…うん、よく分かった。

 店には、子供のお手伝い用として売り出した方が良いとアドバイスしよう。


「私は料理長と少し打ち合わせをしていくわ。『たこ焼き』のことも話しておかないとね」

「はい。では、私は訓練の支度をしなければなりませんので失礼します」



 ふふふふふ・・・


 午後の訓練ではあのボールを使ってキャッチボールをしよう!誰がどれくらい投げられるか把握しておかなければいけない。あまり差が出ないようにチーム分けしないとな!


 差が出るのも問題だが、一度もボールに触ることもなく当てられて終わりそうな少年二人が浮かぶ。

 ノルベル君とダニエル君だ。

 ジョン君はなんだかんだと要領よく逃げそうで大丈夫な気がするがどうだろう。

 彼らをどうするか。

 彼らも戦いに加えたい。


 うーん・・・。


 いっそ、強い者が弱い彼らを護りながら戦えばいいのではないか?これは騎士として良いルールになりそうな気がする。


 お姫様を護る騎士(ナイト)

 いや、お姫様は失礼か⋯

 チェスのように王様(キング)にするか。


 キングが当てられたら負け。

 いいんじゃない?

 ナイトは必死で護るだろう。


 守られて終わりでもなぁ⋯

 チーム全員が一度はボールをキャッチしなければならないというルールを足せばどうだろう。

 キャッチした人が投げなければいけないのは、元々のルールだから、一度はボールも投げられる。


 うん、そうしよう!


 キングを二人に絞って2チームにするか、ジョン君もキングにして3チームにするかは相談して決めよう。


 すごい楽しみになってきた!





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