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46話 シナリオは仕上がった

誤字報告ありがとうございますm(_ _)m!

 オンブロー伯爵の長男が、王宮の文官試験で落ちた事が、オンブロー伯爵が陛下に反発する切っ掛けだったのではないか。


 その数年前、国王が今の国王に代わった事で、王都内の文官の仕事に平民の登用が始まった。伯爵家を捨て平民を重用する陛下への反発が始まったと思われる。

 それはオンブロー伯爵だけではなかったらしい。


 もう一つの要因として、議席の問題が考えられる。

 選挙で選ばれた平民の議員に、国議会の議席が与えられる法案が出された時の反発は凄かった様だ。

 国議会ではオンブロー伯爵とその他大勢の反対があったものの、その法案は数年後には通った訳だ。


 国史を勉強している時に分かったのだが、今の政治体制は、結構最近出来たもの…丁度私が産まれた頃の様だ。

 新しい体制が整うまで年月がかかるのは解る。今の王様が平民を重用すると反発する、頭の堅い年寄りは大勢いるだろう。



 オンブロー伯爵は、私が思うに家族主義、一族主義が強いのだと。

 前世で言えば「モンペ」である。

 息子の為、孫の為の暗殺計画など笑えないが・・・。

 どうやら、オンブロー伯爵が黒幕ではなく、その上にかなりの高位貴族が幾人もの貴族を操っている様だ。誰かははっきりと言わなかったのは、今回の魔術大会で私が何かすると不味いのだろう(今まで何度か名前が出たので予想はつくが)。それほどの大物に掌で転がされていたと思えば同情しない事も無い。


 ほんの少しだけな。




「アシュリー様。その法案が通った大きな要因は、貴方のお父上ですよ」

「え、お父様が?」

「はい。私はその頃まだ宰相になって間もない頃で・・・グレンヴィル辺境伯のあの言葉が今でも忘れられません」

「父は何と?」


「法案に反対する者は、誰もが平民を蔑(さげす)み議会を掻き回す悪しき者の様に捲し立てたのです。そんな彼らに辺境伯は仰いました。

『平民は敵ではない』と、

『共に国を護り栄えさせる力強い協力者だ』と、

『彼らが居なければ国は成り立たない』と・・・。

 最後に『彼ら無くしてどの様に作物を得るのか、軍を育てるのか。聞かせてくれ』と詰め寄られた反対者は、次々と意見を変えていったのです」


 ほうほう!

 さすがお父様、言うね〜!

 カッコいいじゃないか!


「アシュリー、嬉しそうだな」

「もちろんです!さすがお父様です!」


「陛下が仰いました」

「・・・?」


「アシュリー・グレンヴィルの正義は、紛うことなきグレンヴィルの血を受け継いだものと」

「・・・!」


「これは内密のお話なのですが・・・先代の辺境伯つまりアシュリー様のお爺様ですね。陛下は昔、その辺境伯に『人の命より重いものはない』と叱られたそうですよ。先日の魔法学園でアシュリー様に叱られた時に思い出されたと仰っていました」


 そう言った宰相は、会ってから初めてその表情を崩し柔らかい笑顔を向けてくれた。嬉しいかもしれない…



 うん、嬉しい…



 嬉しい!嬉しい!嬉しい!


 どうしよう!

 すっごい嬉しい!


『神獣やーい!』



『何だ・・・』

『どうしよう!すっごい嬉しいんだ!』

『嬉しいなら良いではないか』

『この喜びは、私が前世の記憶を持っていると知らないと分からないんだ!』

『どういう事だ?』


『・・・ずっと、・・・ずっと私は違う世界の人間という罪悪感があった!それが、お父様やお爺様と同じ血が流れてるって!

 私の正義はお父様の正義だって!

 お爺様の正義だ…て・・・』


 目頭が熱くなる・・・


『そうか、そんな事が嬉しいのか。案外可愛い奴だの・・・』

『むーー!揶揄うなんて!「ケンシロウ様」って呼ぶよ!』

『何だそれは!』



「アシュリーは感動のあまり固まってる様なので、私から・・・」


 ロバート先生は、ぼーっとしてる様に見える私が神獣と話してるのが分かるのか、フォローしてくれてるみたいだ。


『もう少し喜ばせてやろうかの』

『何?何?』

『魔の森とお前達が呼ぶあの森で、お前の祖先だろう人間と我は契約をした。あれは、我の気まぐれに過ぎないが、あの者の魂が美しいと思わねば相手にもせぬ。お前はあの者の血をしっかり受け継いでおる』

『なに…それ…ほんとう?』

『本当だ。お前と同じ銀の髪に紫の眼をした人間であった・・・見た目だけではない、その真っ直ぐな気性もそっくりだわ!まあ、彼奴(あいつ)はお前の様に我を撫で回したりはしなかったがな・・・』

『それはもったいない!』


『・・・・・・』


『ありがとう・・・神獣、様。

 私、ずっと真っ直ぐ成長してみせるよ!』

『ああ、分かっておる』


 えへへっ



「・・・ということで、当日までに・・・

 アシュリー?現実に戻ってきたか?」

「はい・・・」


「何を泣いてたんだ?」

「嬉しかったから・・・」


 ロバート先生とコソコソと耳打ちをした後で、大事な話に戻ってきた。



「宰相様、大変失礼いたしました。あまりにも感動してしまったので・・・」

「今、カーネギー伯爵より、今回アシュリー様の編入に意見を申し立てた者たちの名前と、当日の席の位置をご連絡するお約束をしました。他にご要望はありますか?」

「はい。当日、側妃様とオースティン様は大会を観にいらっしゃいますか?」

「毎年、王族の皆様は観に行かれますので、今年ももちろん行かれるでしょう」

「分かりました」


 後は、何かあったかな?


「今思いつかなくても、もしまた何かご用がありましたら、何時でもご連絡ください」

「ありがとうございます」




 ・・・と、いうことで。


「先生。台本の変更です」

「だいほんって何だよ!」


 台本って通じないのか。


「オンブロー伯爵への脅しの文言です」

「ああ、お前の言う『思考電話』な」

「そうです。さっきまではこちらとの力の差を思い知らせ、神獣の威厳を借りて、二度と王族暗殺など企てないように脅すつもりでしたが、一部変更したいのです」


「お前、結構情け容赦ないな」


「そのつもりでしたが、一部変更です」

「どう変更する」


「お涙ちょうだい人情ものに変更です」

「訳が分からんはずだが、何故か分かってしまう自分が怖いわ!」

「ツーカーですから」

「それはもういい!」


「オースティン様の願いを匂わせます」

「ああ、なるほど・・・」


 やっぱりツーカーじゃないか。


「それで、この文の後に・・・

 ロバート先生の合図で私が・・・」

「ここに間を開けた方が・・・」

「伯爵の他の・・・」


 魔法演技とセリフとの兼ね合いも考えながら打ち合わせをして、シナリオの変更を完成させる。


 土人形のモデル達には全員面会した。

 小道具ももうすぐ揃う。

 後は本当に練習するだけだ。





 本番まであとひと月を切った頃、お父様から小道具が届いた。


 凄い・・・でかい。


 これはハロルドお兄様の作った魔道具だろう。見た目はアンティークのジュークボックスといった風である。

 スイッチなどはなく、この鉱石(?)魔石(?)に触れる事で曲が流れ止まる。

 石は3つあるので、それぞれに私が依頼した雰囲気の曲が入っているはずだ。


 早速聞きたい。

 聞いてみてもいいだろうか。

 うるさいかな?

 屋敷広いし、ちょっとくらいいいよな?


 よし!

(誰も良いとは言ってない)


 石に触れる。


 おお!

 これは、なんたら行進曲…なんだっけ?

 色んな所でよく聞いた・・・

 何か、すごいよく似てないか?

 まあ、名曲に似てるならいいけど。



 何か、屋敷中の使用人達が集まって来た。そりゃ、こんなでかい音で音楽流してりゃ来るわな。

 まあまあ、皆聴いてくんなまし!

 身振り手振りで、そう伝える。



 次は戦闘曲だよな。


 ほー!

 カッコいいな!


 始まりは映画のジョ●ズが現れるシーンみたいだ。


 ん?でもこれも聞いた事ある様な気がする。

 昔のカ●プヌードルのCMだったか?

 テレビのCM集で見たのが印象に残っている。

 他にも色々な所で聞いたような・・・

 まあ、似ていることもあるだろう。



 最後のエンディングの曲には、優しく壮大な雰囲気という抽象的な注文をしたのだがどうだろう。


 へぇ〜いいな〜

 うん、優しくていい曲だ。


 ・・・だが!

 これは絶対聞いた事があるぞ!ドラマの結婚式のシーンや他にも色んなシーンで聞いた、何とかという作曲家のカノンだ。


 どういう事だ?3曲ともが前世のクラッシックの名曲に似すぎている。重低音に欠けるので、演奏は前世ほどの迫力は無いが、絶対元は同じ楽譜だと思われる。

 この曲を作ったのはどういう人なのか、もしかしたら私と同じ前世の記憶があるのか?そうだとしても、世界的な名曲ばかりだから、日本人ではないかもしれんな。


 うーん・・・


 まあ、いいか。

 会うこともないだろうし。



 クラリッサがすごく驚いているみたいだが、どうしたのだろう。


「クラリッサ、どうかしましたか?」

「あの…これは…何ですか?」

「ああ、これはハロルドお兄様が作ってくださった、楽曲を聞かせてくれる魔道具です。グレンヴィル領の屋敷で楽団が演奏したものが入っている様です」

「楽団の曲なのですか?お嬢様ではなく?」

「そうだと思いますよ。私にこんな才能はありませんし、我が家にも音楽家はおりませんね」

「そうですか・・・」


 何か変だな?


 ん?

 クラリッサもこの曲に訝しむ何かがある?


 うーん・・・

 まあ、いいか。


 これはもう学園に持って行ってもいいだろうか?置く場所に困るかもしれないからヘンリー先生に相談だ。学園長には相談したくない。

 運ぶだけなら、私の怪力で朝飯前だからな!

 うん、怪力の使い道ができたかも。



 魔道具と一緒に花の種も届いた。


 うわぁ・・・大量だよ!

 どれだけ集めてくれたんだ。

 これは、ヨアブに頼んだに決まっている。

 ヨアブ爺さんありがとう!


 これなら、少し練習に使っても良いだろう。花の種に魔法をかけるのは初めてなので、思った通りに出来るとは限らない。練習は必要なのだ。


 花を高速で成長させたとして、茎や葉も成長するわけだが、必要なのは花だけだ。花好きの人にしてみれば、酷い事を考えているだろう。良い子に『お花さんがかわいそう!』と軽蔑されそうだ。


 申し訳ない!

 一応、花の種に謝る。


 庭師のノーランの所に行き、実験に使っても良い場所を聞く。


「花が増えても枯れても良いような所を使いたいの」

「はあ、増えても枯れてもですか?」

「ええ…どうなるか試したいだけなのよ」

「それでしたら、離れの方がいいでしょう!物置小屋の辺りでしたら、どの様になっても構いません。お嬢様のお好きなようにしてください!」

「ノーラン、ありがとう!」



 早速、ノーランの案内で物置小屋へ行く。

 木が積んであったり、使っていそうな場所は避け、雑草がまばらに生えている空いた場所に立つ。


 先ずは、この種を私が普通に成長させたらどうなるか・・・。

 種を数粒握り、花が元気に育つよう緑魔法をかける。


『花よ咲け!』


 私のイメージでは、種からにょきにょきっと芽が出て来て徐々に大きくなっていく・・・


 はずだった。


 今、目の前には途中の過程はすっ飛ばした薔薇の花が大量に咲いている。

 本当に一瞬だったよ!


 これは詠唱の所為か?

「元気に育て」だったら違った?

「咲け!」って命令したからとか?


 ・・・。


 茎がほとんど無く、葉もない。

 もしかして、私は無意識で必要なのは花だけである事を考えてしまったのか?


 ・・・。


 私はもう一度詠唱する。

 2つ続けてだ。


『花よ散れ!』『風に舞え!』


 すると思った通り、花びらが空を舞った。


 綺麗だ・・・だが・・・

 本当にすまん!


 もう一度謝っておこう。たった一瞬で、花の命を奪ってしまったのだから・・・。


 しかし、ほんの数粒の種でこれだけの花が咲くのだとすると、送られて来た花の種を全て使ったら・・・


 闘技場は花弁で埋もれるな。

 うん、使う量は考えよう。



 それからしばらく、緑魔法で花を咲かせ、風魔法で花びらを上手く飛ばす練習をした。ほぼ同時に2つの魔法を使うのだが、私の場合は詠唱が短いので苦にはならない。


 やっぱり詠唱は短い方が良い!



 練習を終えて周りを見ると、花びらだらけになっていた。

 こ、これは・・・掃除が大変なのではないだろうか。ノーランに申し訳ないな。



 そこで、ふと考えた。


 自分の魔法で掃除できるのでは?花びらだけ集め、それをブラックホールで吸い取るのだ。


 出来そうではあるが・・・ロバート先生に闇魔法は止められてるからなぁ。もし、花びらだけでなく別の何かを吸い込んでしまったら・・・。


 それは怖い。

 やめておこう。

 私は賢明な人間なのである。





1曲目の行進曲は『ラデツキー行進曲』

2曲目の戦闘曲は『ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」第4楽章』

3曲目は『パッヘルベルのカノン』

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