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国盗り狂騒曲~下剋上☆戦国浪漫譚~  作者: 由木 ひろ
風林火山編
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第四十死合い 旅の兄妹-1

 レンジから貰った団子を食べ終わった男はレンジの手を握り、


「ほんま、助かったで!! 死ぬかと思うたでー!!」



 そんな男にレンジは、


「なんだ、お腹が空いてただけかよ! ビックリさせやがって・・・」


「お腹が空いたら死ぬ事も有るんやでー!

 ほんま、ありがとさん!!」



 そんなやり取りをしていると一人の少女が竹の水筒を持って現れた、


「誰でつか?」


「おー、すまんなーカレン! わいの為に水汲んで来てもろうてー」



 そう言いながら男は少女が汲んで来た水の入った水筒を受け取り一息に飲み干した、


「あーーーーうめーーーーー!!」



 口から零れる水を手で拭いながら、


「カレン、お前もちゃんとお礼を言え! この人がわいに団子を恵んでくれたんや!

 命の恩人やで~!!」



 少女はペコリと頭を下げて、


「ベルにいの命を救ってもらって感謝するでつ!!」



 命の恩人とか言われてレンジは頭を掻きながら、


「命の恩人って! 団子位で大袈裟な・・・」


「いや! わいが言うんや、間違い無い!!」


「それよりも、何でこんな所で倒れてたんだ?」


「よくぞ聞いてくれはりました。

 わいら兄妹は旅の途中で路銀ろぎんを使い果たしてしもうて、泊まる事も食事も出来んかったんや。

 もうあかんかとおもいましたわ!」


「そうなんだ・・・・・・」



 レンジは少し考え込んで幸村に、


「わりい、なんかこいつら放っておけないから俺の家に一先ず連れて帰るわ!

 兄貴の方はどうにでもなるだろうけど妹がかわいそうで・・・・・・」


「好きにしろ! 俺は先に行く!!」


「わりいな! 後から追いつくから!」



 幸村は三人を置いて見回りを続ける為に歩き出した。

 残された三人。レンジは男に、


「俺、今一人暮らししてるんだ。良かったら家で暫く休んで行けばいいよ!」


「ほ、ほんまでっか!! 食事まで恵んでもろうて・・・

 なんてお礼を言えばええんか・・・

 まさか、あんさん仏様の生まれ変わりかいな?

 カレン、喜べ! これで暫く寝る所に困らんで済むぞ、ちゃんとお礼を言え!!」



 少女は再度ペコリと頭を下げた。


「ここからそんなに遠くないから家へ案内するよ」


「おおきに!!」



 男は立ち上がり近くにあった大きな風呂敷を担いだ。


「何、それ?」


「あっ、これでっか! わい、こう見えて堺の商人ですねん!

 堺で流行っている布などを売って大儲けしようかと・・・

 向こうで流行ってる布など、地方で売れば三倍、四倍で飛ぶように売れますさかいに」


「じゃあ、なんでそれ売ってお金稼がないの?」


「それですがな。売るために大きな町を目指してる途中に力尽きてしもうて・・・

 情けない話やで、ほんま!」


「そうなんだ・・・・・・」


「あっ、挨拶が遅れてすんません!

 わい、風龍寺紅丸ふうりゅうじべにまる言います。よろしゅう!!

 そんでコイツが妹の風龍寺可憐ふうりゅうじかれんです」


「俺は赤城蓮二、よろしく!」



 ひょんなことから旅の兄妹の面倒を見る事に成ったレンジ。

 ベニマルと名乗る男は背は幸村とレンジの間位で目は起きてるのか寝てるのか分からないほど細く八重歯が特徴的で身なりは商人と言うよりどこかの金持ちのボンボンと言ったお洒落な恰好である。

 妹のカレンは兄と対照的に真ん丸おめめの可愛い子供であった。

 レンジは妹のカレンに、


「俺の妹と同じ位の背だな! 歳いくつ?」


「八歳でつ!」


「ふーん。妹の一つ上かー。

 所でこの辺で水汲める場所ってどっかあったっけ?」



 レンジの問いかけにカレンは山道の下に流れる川を指さした。


「ま、まじかよ!」



 カレンの指さした川は大人でも簡単に降りれそうもない絶壁の下だった。

 川までゆうに15メートル位の落差があった。


「またまたー、冗談だろ?」


「ホントでつ!」


「・・・・・・」



 兄のベニマルの影に隠れながら話に応じるカレンにレンジは懐から飴玉を取り出して与えて見た。

 始めは怪しんでいたがレンジももう一つの飴玉を口の中に入れて、


「う~ん、うまい!!」



 それを確認したカレンも同じように飴玉を口の中に放り込んだ。

 カレンは味わったことの無い甘さに、丸い目玉をより真ん丸にして驚いて、その後幸せそうな顔をした。

 レンジは満足そうに家路に向かう。それを見ていたベニマルも、


「すんません! わいにもそれ、もらえませんでしょうか?」


「いいよ!」



 飴玉を舐めるベニマルも細い目を開いて感動した。

 そして家についた3人。レンジは、


「汚いとこだけど自分の家と思って寛いでいいよ!

 大体の物は揃ってると思うから好きに使って。

 トイレはそこの奥ね! 井戸は家の裏に有るから!!

 それじゃあ、俺仕事があるからまた後で!」


「何から何まで、ほんまなんてお礼を言えばええんか?

 ホント、すんません!」


「いいって、別に・・・

 じゃあ!!」


「いってらっしゃい!!」



 レンジは幸村に追いつくために足早に目的地の村を目指す。


 レンジの家に転がり込んできた兄妹、一体この先どうなることやら・・・・・・



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