第三十九死合い コンビニー4
次に日、レンジは店を開ける準備をしていた。
「お~い、レンジーーー!!」
千代の声である、出勤してきた権平についてきたようである。
「おはようございますじゃ!」
「おはよっす!!
千代も、おはー!」
「おはー!」
「すみませんレンジさん、千代を一人で置いとくのも心配で連れてきてしまいました・・・」
「大丈夫っすよ! 確かに近くにいた方が安心して働けますからね!」
早速レンジと権平、それに千代で開店の準備に取り掛かった。
「うんしょ、うんしょ」
「おい! 千代は手伝わなくていいぞ!」
「私もやるの~!」
「あはは、まっいっか!!」
千代は自分より大きな大根を店の中から外に並べる為に必死で運んでいた、
「あの~、わしは何をしたらええじゃろうか?」
「ああ、権平さんの出番はまだ先です。座っていてください」
「じゃが、わしだけ座っているわけには・・・」
「気にしないでいいっすよ、力仕事は俺がする契約ですし。
うちはスーパーホワイト企業を目指してるんで。
日の出から日の入りまで営業、残業無、昼飯付きで十時と三時には休憩有です!!
どうですか?」
「はあ・・・・・・」
「あっ、それにここでは俺の事は店長と呼んでください!
ん? いや、店長は権平さんで、俺オーナーかな?
って事で俺は今日からオーナーなんでよろしくっす!
頼みましたよ、店長!!」
「はあ・・・」
レンジは昔テレビで見た中年ホストがホストを引退してコンビニ経営を始めて、挫折から成功までを追ったドキュメンタリーを思い出しながらその中で、店員を大事にしてこそ成功の秘訣と言う言葉を思い出して従業員を大切にしながら店の経営を行う事にした。
店は順調だった。(レジはないが便宜上ここではレジと呼ぶ)レジを権平さんに任せてレンジは仕入れに力を注いだ。より良いものを大量に仕入れる為に、時には街道の分かれ道まで出向いて行って仕入れに力を注いだ。
忙しい日々が続く。収益は上がり資金力もついて来た。
(う~ん! かなりいい感じだな!!
金も出来たし、そろそろ居候生活からおさらばするか・・・)
仕入れを大量に行った時は手が空くので店を権平に任せて幸村と村々の見回りを行うレンジだが店と幸村の屋敷を往復するのも時間がかかるので幸村の屋敷と店の中間地点に家を借りる事にした。
一人暮らし用のアパートなど存在しないので仕方なく一軒家を借りた。
借りた家はレンジには広すぎるものだった。
引っ越しを済ませたレンジ。引っ越しと言っても幸村の屋敷から運び出したのは剣道具一式だけだった。
前に住んでいた人が置いて行った生活必需品はそこそこ揃っており人生初の一人暮らしを始めるのであった。
レンジは新しく借りた一軒家にダイノジに寝転がって、
(くーーーーーーー! 一人暮らし! いえーーーーーーぃ!!)
誰にも気兼ねなく過ごす自分だけの時間とスペース。心はウキウキだった。
広い部屋で大きな声で歌ったりしてみた。大声で叫んでみる。
今までだったら幸村にうるさいと文句を言われていた事が思う存分出来た。
暫くすると急に冷静になって、話し相手もいない事に気付いてしまう。
特に広すぎる部屋がやけに孤独を感じさせる。
レンジはスマホを取り出してお気に入りの音楽を聴いて寂しさを紛らわせた。
一週間が過ぎた頃、ウキウキだったレンジも少々ホームシックぎみになっていた。
幸村との見回りでは必要以上に幸村に話しかけた。
そんなレンジにかまう事無くクールに見回りを続ける幸村であった。
ある日の事、隣の村へ見回りへ向かう為、山道を歩いていると途中の少し開けた道の傍らに一人の男が倒れていた。
それを見つけたレンジはすぐに男に駆け寄り声を掛けた。
「おい! 大丈夫か? どこが痛い? 病気か?」
男はお腹を押さえて、
「う~っ! め、め、めし~」
「なんだ? め? 目がなんだ? 目が痛いのか?」
「は、は、はら~!」
「目じゃ無くて腹か? 腹が痛いのか?」
必死に男に話しかけるレンジ。幸村はレンジの後ろで二人の様子を眺めている。
男は続ける、
「はら、腹減った・・・
何か、食い物を!!」
「ん? 腹減った!! なんだ、空腹で倒れていたのか?」
レンジはおやつに買った団子を懐から取り出して男に渡してみた。
男は獣の如く団子に食らいつく。
団子を食らいつくして手に着いたタレも綺麗になめて男は、
「ごちそうさん!!」
手を合わせて感謝を述べる。
一体この男は何者なのだろうか・・・・・・




