20
ソレは、大きな球体として、佇んでいた。
球体の中は花が千々に乱れ、風が吹き荒ぶ灰色の世界が広がっている。
それの外側は色とりどりの花が春のような陽射しをうけ咲き誇っていた。
その異様な光景に思わず息を呑む。
「コーラル、危ないからあまり近づくな。
勇者、あれなんだが、お前は分かるか?」
「いや、初見だけじゃなんとも、、、。
ただ、闇属性が絡んでいる事は分かるんだが、この国自体闇属性がメインだもんな。
その筆頭はお前だし。
だから本当に闇属性なのかは確信が持てない。」
「そうだ、闇属性である事は多分間違いない。
そしていつあれができたのかは不明なんだ。
分かる事といえば日を追うごとに球体が大きくなっている事だけ。
王である私がこの体たらく。不甲斐ない。」
相変わらず顔には靄がかかっていて表情は全く見えないけど、思いつめ、自分を責めているのは分かる。
「魔王、大丈夫よ。
勇者さまがいるし、私だっているから。
まぁ、私がいてもどこまで役に立つか分からないけどね。」
そう戯けてみせながら思わず魔王を抱きしめていた。
私のその行為に一瞬息を詰めた魔王。
「あー、はいはい。
オレもいる事を忘れないようにねー。
魔王、ここで剣抜いても大丈夫か?」
私と魔王を引き剥がしながら問う勇者さま。
我知らず顔が赤くなる。
普段から感情を表に出さない魔王。
王であるためには個人として人前に出ないように、と感情をコントロールしていると話していたいつかの昔。
そう言う魔王は孤高であり寂しくまた、支えたいと思った過去。
それをふと思い出していた。
「結構差が開きっぱなしだったりすんのか?
昔話を持ち出されたらどうしようもないんだけど。」
昔話?
何を持ち出すのかしらね?
「鈍すぎ。」
チラりとこちらを見遣りながら何もない腰に手を添える。
そこから、光輝く剣が顕われた。
以前みた剣より更に刀身は大きく、両手剣のように見えるソレ。
けれど勇者さまは軽々と片手で抜き放つ。
いつものように刀身に浮かぶ紋様はより複雑に細かく、光の明滅も一定のリズムを刻みながらも複雑化していた。
きっと剣としてのレベルも格段に上がっているんだろうと思われるも、不思議と恐怖は感じなかった。
「あれ?
コーラル、剣見ても怖くないの?
ホントに?マジで?
うわー。
やったねー。ここまでくれば、後はこっちのモン?
いやいや、油断大敵だから。」
「コーラル。
まさか、そうなのか、、、。
誤算だ、剣を恐れない日がこようとは、、、。
いや、しかし、瞳の色は同じだ。
一体これはどういう事だ?」
「あれ?
剣見ても冷や汗出ない。
もしかして、ビビらないレベルが上がったのかしら?
何度か見てると怖くなくなるとか、耐性上がった?
いやー、私だってやればできるんじゃない!」
三者三様、好き勝手話す。
誰も彼お互いの話しを聞いていなかった。