7話 偽装作戦~後編~
さて意気込んで向かった放課後の訓練場なのだが、思った以上に見物人は多い。
魔宝技を披露すると誘ったフラヴィ、リーズ、ベルティーユ、フレデリークは良いのだが、クラスの男子一同が少し距離を空けて集まっている。
(男子諸君…もうサービスはしないよ!今まででも過剰だろうしね。)
「まずは火から行くね。」
俺は4人に告げるが大人数に見守られる中で何かをやるというのは、プレゼンテーション並に若干緊張する。どうせなら派手に…と多数の火球を多方面攻撃にしてみようと考えていた。
「ファイア!」
俺は言葉を発したが、それはフェイクであり実は無詠唱で発動している。いくつもの火の球は凄まじいスピードで様々な角度から標的にぶち当たると巨大な炎と化す。成功だと確信した俺はエリーヌの身体の大きな胸を張ってドヤ顔をする。
「これはオニキスの多重詠唱ですわね?」
「そうなの~?そうだとすると消耗が激しそうだね~。」
「火…一杯…かっこいい。」
「ま、まあまあですわね!」
4人のそれぞれの感想を聞いていると疑問もあるようなので答えてみることにする。ちなみに観客の男子生徒は俺の魔宝技など興味はなく、俺の尻ばかり見ている。スケベ心に素直な男子達だ。
「多重詠唱じゃないよ。今のは一つの魔宝技を分けて飛ばしただけだ。…エリーにもできたし、おそらく皆も練習すればできるよ。」
エリーヌも出来たのだから彼女らにもできるはずだ、と考えている俺は鼻を高くして自慢げに言ってみた。
「エリーにもできた~?どういうことー?」
「あ~…うん。イメージを固めて練習すれば私にもできたから~ってことかな。」
先程の言葉は本心故か気が抜けてしまったようで危ない発言だった。
さて、次は盛大に雷で行ってみよう。俺はどうしようか考えてみるが先程より単純な多段攻撃でいいかなと思い立ち、危険のないよう四人に少し離れてもらうと、幾つもの雷を小さな標的に集中させて落とすイメージをし、魔宝技を無詠唱で多重に行使する。
沢山の雷が落ちると、木製の標的は弾け飛び一瞬で炭化していた。雷が落ちるとドン!ドン!ドン!と大砲を撃ったような大きな音で鼓膜が破けてしまいそうになる。
「あ~。多重~詠唱は~こん~な~かん~じ~。」
振り返って4人に告げるが、耳が変になったのでフラヴィのような話し方になってしまった。他意はない。
「目が~…チカチカ~する~…耳~も…遠く~…なった~。」
「え~耳~が~変~です~わ~。」
「お~~~す~ご~い~。お~と~が~お~く~れ~て~き~こ~え~て~く~る~よ~。」
リーズ、ベルティーユ、フラヴィも俺と同様に大きな音を聞いたため耳が酷い状態になってしまったようだ。予想以上の爆音だったのでごめんなさいと心の中で謝罪する。
フラヴィについては、その耳が遠くなっている状態を少し楽しんでいる様子だった。
「雷のときは耳を塞いでお臍を見えないように隠しなさいって習うものじゃないの?」
フレデリークは耳を塞いでいたのか、さも当然のように俺たちに告げてくる。
(どこのお婆ちゃんだ!)
気持ちを切り替えて、次は土の地割れを起こしてみよう。魔光の系統は違うが、これからのためにも色々と試してみる価値はあるかもしれない。
大規模に地割れを起こすと拙いと考えて、なるべく小規模にイメージする。
「アースクエイク!」
今度は無詠唱ではなく普通に詠唱をしてみた。結構な揺れと共に地面が裂けて奥行き10メートル深さ3メートルくらいの割れ目ができる。
イメージ通り小さく収まって少しほっとするが、若干疲れを感じる。いつもと異なる状態だからだろうか、それとも詠唱を行ったからだろうか、魔光の系統が異なる魔宝技であるからだろうか。現状では検討がつかないので、機会があれば後に検証してみる必要がありそうだ。
「私の…得意系統?」
「赤光の系統じゃないですわよね。」
リーズとベルティーユの言葉に、その通りと告げるように俺は頷いた。
「この割れ目に落ちたら埋まりそうだよ~。」
「今迄のと比べると随分小さく感じるわね。」
フラフレコンビは相変わらずマイペースだった。
次の魔宝技披露の前に、地面の割れ目がそのままでは危険なので土を魔宝技で出して穴を埋めておいた。
今度は風にしよう。そういえば、付与を試したことがないと思い当たり試してみることにした。
すぐに訓練場の倉庫から木剣を借りてきて、木剣に風を纏わせるイメージを固めて付与してみる。すると風が木剣の周りを回るように勢いよく吹いており、手で触ろうとすると扇風機より若干強い風を感じることが出来た。その状態の木剣を振るってみるとカマイタチが発生し、切れ味の良い刀を振るったかのように標的に切れ目が入る。射程距離は10メートル位だろうか…。
「随分と大人しくなったわね。」
「派手なのが見たい~。」
「風って見えないから、華やかさに欠けますわよね。」
「地味…。」
四人の反応は、魔宝技の派手さに比例していた。
気を取り直して、同じような魔宝技だから光と闇を同時にやってしまおう。昔、光と闇が備われば最強だと謙虚な人も言っていたことだしね。
気楽にイメージして出してみると…黒い物体と眩い光が混じりあった球が浮いていた。
「何これ~?」
謎の球に触れようとするフラヴィだが、ちょんと球を指先で触れると、熱かったのか指を咥えて涙目になっている。
「ちょ~熱い!血が出て止まらないー…コレ危ないよー!」
試しに持っていた木剣で触れてみたら、光の部分に当った部分は炭になって焼け落ち、黒い部分に当った所は分厚い氷が貼り付いていた。光部分の熱エネルギーについてはまだ分かるのだが、闇の部分の冷気は何で起きているのか理解できなかった。
暫く放置しても消えないので危ないと判断した俺は、標的に飛ばしてみるが…標的をぶち抜いても消えることのない謎の球体。
仕方なく遠くに飛ばして見なかったことにしておこう。俺は山の方へ飛んでけー!と念じて、見えなくなるまで飛ばしていた。
「先程のは何でしたの?」
「随分と貫通力のある魔宝技ね。でも、わたしの方が凄いけどね!」
「私も…触ってみたかった。」
ベルティーユ、フレデリーク、リーズの三人へ危険だったからと説明する渋々納得してくれた。
これで全部だったかな?とやった順に思い出していく。そして、一番訓練したであろう水を後に回しておいたことを忘れていた。
では、盛大に雨でも降らせてみようと、"スコール"と詠唱をしてみる。そんな詠唱など本にも載っていないし、エリーヌにも聞いたこともないのだが…。
やがて、辺りにはとても強い雨が降り出し、何やら雹も時折落ちてきていた。全身がびしょびしょに濡れてしまったので、即座に風の魔宝技で上空に出来てしまった雲を吹き飛ばす。
一瞬のうちに空は晴れるが、辺り一面が泥だらけだ。
「あー、うん。やりすぎたみたいだ。ごめん。」
そう四人に告げると俺は濡れた上着が気持ち悪く感じたので、ボタンを外し服の前側を開いてヒラヒラとさせる。下着を着けてなかったけど、女子だけだからいいかな…と考えていたところで男子生徒たちが視界に入ってきた。完全に忘れていた。
剝き出しになった胸に男子の視線は釘付けだ。調子に乗って両手で胸を寄せてから上下左右に動かしてみる。胸の動きに合わせて男子生徒の身体が面白く動く。俺はおっぱいで指揮者にでもなってしまったのだろうか。
「ちょっと!エリーヌさん!!」
「……痴女ーヌ。」
「エリーは露出狂になったの~?」
「ぐぬぬ…わたしもこれには勝てないわ。」
ベルティーユ、リーズ、フラヴィの三人は俺の行動を咎めるが、フレデリークは何故か悔しそうにしていた。
「あ、ごめん。面白かったもんだから…つい。」
言葉の最後に「てへぺろ!」と添えて片目を閉じながら舌を出して、その場を誤魔化してみた。
――それから、先程の魔宝技により皆の全身がびしょ濡れになったため浴場へ向かうことにした。女子寮の入り口付近まで男子生徒がついてきたのは言うまでもなかろう。
さて、お楽しみのお風呂の時間だが、未だにエリーヌから返答はない。俺は二週間以上束縛されていた欲望を開放したいと思う。
「一番風呂だっー!!」
そう言って風呂に飛び込むフラヴィ。
――サブゥゥゥン!
お風呂に飛び込んではいけないよ。気を取り直して、標的を定めなくては…誰からにしませうか。
「ちょっと!飛び込むと危ないでしょ。ったく子供じゃないんだから。」
フレデリークがまるでフラヴィの母親のように注意をしていた。それを見た俺は標的を彼女へ定めることにした。今迄に散々なこと言われたので、一番の初めの生贄になっていただこう。
(ぐふふ…。)
「フレデリークさん。私が背中を流してさしあげますわぁ!洗い場にいきません?」
女口調がわざとらしいかもしれないが、俺はフレデリークの誘導を試みてみる。友達の少ない彼女は友情に飢えている。そんな些細なことを気にせずに食いつくであろう。
「えっ、え、ええ。わ、わかったわ!その代わり丁寧に洗ってくれないと怒るからね。」
突然に声をかけられるとは想定していなかったのか、彼女はかなり動揺していた様子だったが頷くとついてくる。
(身体の隅まで念入りに洗ってあげますとも!)
フレデリークを洗い場に座らせると、俺は彼女の背後に陣取り石鹸を泡立てる。最初は丁寧に背中を擦る。ブラシなどを使わず、素手でゆっくりとエステのようにマッサージしていく。
(伊達に小さい頃から両親や死んだ婆ちゃんのマッサージをしてなかったんだぜ!)
「き、きもちいっ…ハッ!――ま、まあまあね!」
まだ守りは堅そうだ。次はフレデリークの横に位置取り手足を揉み解しながら、筋肉の疲れをとるように洗っていく。
「あっ…そこっ…足の裏が気持ちいい…。」
普段ツンツンしている彼女が素直になってきたようだ。もう一押しでトドメだろう。血行の流れをよくなるように二の腕と太腿をマッサージしていく。
「…んっ……あっ……――んうっ!。」
そろそろ良さそうな雰囲気を感じたので、俺はフレデリークの後ろに回りこむと自分の身体の前面に石鹸の泡を満遍なくつけてから、自分の身体をフレデリークの背中に押し付けて後ろから彼女の胸に優しく触れるように洗っていく。
(ハァ…ハァ…。俺の方がやばいかもしれない…。)
左手はそのままフレデリークの胸を揉み、右手を俺には真っ白にしか見えない彼女の花園へと伸ばして触れてみた。ソコへ触れたときフレデリークの身体がピクンと震えたのだ。その動きに俺は理性がふっ飛んだ。
「お、俺は…理性を捨てるぞぉぉぉぉ!!!エリィィィィィィヌ!!!!!」
白く靄の掛かったソコを感触だけを頼りに俺は突き進むことに決めた。決めたのだ。引くわけにはいかないのだ!!
「…痴女ーヌ…。」
「今日は何かおかしいと思っていましたけど…これはあの…。」
不意に後ろから声をかけられた俺は一瞬のうちに正気を取り戻し声の主へと顔を向けるよう振り返ると、そこにはリーズとベルティーユが立っており、冷徹な視線を俺に対して向けている。
この状況、生粋のマゾならたまらないのかもしれないが小心者の俺にはキツい。
(くっ…計画が失敗じゃないか。…いや、まだだ…まだ、いけるはずっ!)
「フラヴィ~キィィィッー…。」
謎の声を聞いたのを最後に、俺の意識は突然訪れた衝撃によりどこかへ飛んでしまった。




