-90- 模様
テレビ画面では大学教授や論客が世界情勢について、高尚な討論を展開していた。その画面を観ながら、榊根は、━ 地球には天気模様がいろいろとあるが、人模様も地域や国々で様々(さまざま)だな…その人模様が微妙に混ざって、世界の流れを左右することは確かに、よくあるぞ。天気模様は変えられんが、人模様は人が考えを変えりゃ、どうにでも変化できる訳だ…しかし、一人の人模様は弱いか? 大勢に取り囲まれりゃ、すぐ消える。そのうちその者も人模様に飲み込まれて消えてしまう。人模様が人間にプラスになりゃいいが、マイナスなら世界は破滅する。70年前の世界の歴史だ… ━ などと、大学教授や論客と同じように偉そうに思った。その傍には、伸び過ぎたウドン鉢があり、榊根は潜在意識で、しまった! …と感じながら、ウドンを啜っていた。味は申し分ないだけに、榊根にとっては返す返すも口惜しいウドン模様だった。ただ一つ、榊根が[技あり!]と柔道模様のように捉えたのは香辛料の七味である。
「フフフ…」
榊根は真剣に討論するテレビ画面を観ながら、思わず北叟笑んだ。榊根にとっては、天気模様も人模様も柔道模様も、どうでもよかった。囲碁用語のように、[味がいい]ウドン模様が榊根にとって、最高の模様だったのである。榊根は、いわば、目に見えない模様を張ることに成功したといえた。
世間では、互いに目に見えない自分の模様を広げ合い、上手くいけば、相手の模様を飲み込める・・ということは確かに、よくある。
完




