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-69- 似ている…

 疲れていたこともあり、のんびりと出かけることにした宇佐山は、10時過ぎにブランチ[朝食と昼食を兼ねた食事]を済ませると、家を出た。腕を見ると、思ったよりは早く、11時にはなっていなかった。

 いつもよく通る道を歩いていると、これもいつものように人がチラホラと見え始め、街へ入ると、やがて人々がワイワイ、ガヤガヤと話しながら歩く雑踏になった。まあそれでも、それもいつものことだったから、取り分けて気にする風でもなく宇佐山は歩いていた。しばらくしたときだった。ふと、前方から対向して近づく中年男に宇佐山の視線が合った。瞬間、宇佐山はその男が馬に見えた。その男が通り過ぎた瞬間、宇佐山は思わず、「似ている…」とつぶやいていた。

「はっ?!」

 距離が近かったこともあり、その男は立ち止って振り向くと、宇佐山にき返してきた。

「いえ! 失礼しました。人違いです…」

 一礼して宇佐山はソソクサと去った。『まさか、馬違いでした』とも言えんしな』と宇佐山は思いながら、フフフ…と笑みを浮かべた。そして、しばらくまた商店街を歩いていると、また一人の男と視線が合った。普通の若者だったが、どこから見ても山羊やぎだった。宇佐山は通り過ぎたとき、また「似ている…」と小$声を出していた。

「んっ?! なんですか?」

 若者は、瞬間、変な顔をしてたずね返した。

「すみません。人違いでした…」

 宇佐山はすぐ頭を下げ、あやまった。変な人だ…とでも言いたげな顔つきで若者が去ると、宇佐山は人の顔を見ないよう、下を向いて歩きだした。

 腹が空いたので一軒の洋食屋に入ろうと顔を上げた、そのときである。商店街の街路を歩く人の顔が、すべて動物に見えたのだった。牛も河馬かばぶたもいた。宇佐山は立ち止って目をこすったが、やはり人々の顔はすべて動物だった。こりゃ、動物園へ行く手間てまはぶける…と、宇佐山はニンマリとした。

 まあ、こんなことは、そうない話だが、ふと、○○○に似ている…と思うことは、よくある。


                    完

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