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-61- 風呂屋

 国会でにぎやかな代表質問が行われている。実況中継のテレビ画面を観ながら邦枝くにえだ欠伸あくびをした。

「…ちっとも変らんなあ」

 那枝は欠伸のあと、そうつぶやきながら、さらに溜息ためいきを一ついた。何が変わらないのか・・といえば、与野党の国会議員の質問と、その答弁内容である。那枝に言わせれば、いつやら聞いた同じような質問と答弁を、同じ内容でまた蒸し返している…ということだ。もちろん、語られる文言もんごんは言葉、内容をいじってたくみにり変えてはいるが、よく聞けば、議員はやはり同じ内容を語っている・・となる。

「風呂屋か…」

 これも那枝の隠語だが、風呂屋→お湯ばっかり→うばっかり・・となる。

ぬるいな。もう、ひとべ!」

 しばらくして、また那枝は呟いた。那枝語では、風呂屋のお湯も熱め、温め、低めと、いろいろあるが、熱め→なかなかの発言、温め→もう少し熱い内容で語って欲しい、低め→有りきたりで、聞くにえない・・となる。

 那枝がテレビを消したとき、キッチンから妻の美咲が現れた。

「今日の料理は上手うまく出来たわ…」

 はっきりとは言わない小声に、那枝は、『今日も風呂屋だな…』と思った。

 世の中には、風呂屋が大繁盛することが、よくある。


                    完

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