-39- チャレンジ
晴耕雨読とは、よく言われる。その四字熟語の意味は、━ 田園で世間の煩わしさを離れ、心穏やかに暮らすこと━ となる。晴れた日には外へ出て田畑を耕し、雨の日は雨滴の音を聞きながら静かに書物などを読んだり学んだりし、あるいは家内の諸雑事をのんびりとする・・ところから派生した意味らしい。誇張して意味を捉えれば、その日に出来ることをする・・すなわち、ムダを省くということにも繋がっていく。雨の日に田畑は耕せないぞ! 晴れた日には外でいくらでもすることがあるだろうがっ! と、いう訳だ。ところが、そうともかぎらないことが、世の中にはよくある。
「ああ…降り出したな。今日はやめるか」
御台所は、仕方なく外出をとりやめ、居間に置かれた畳の上の座布団にふたたび座った。つい、今しがた立ったばかりだったから、まだ生温かい。さて、これからどうしたものか…と、御台所はこれからの行動を巡った。普段には思いつく雑事が、こういうときにかぎって浮かばず、御台所は、… と、空になった湯呑の茶を啜ろうとし、? 空か…と、また置いた。次に腕を組んだ。そして徐に部屋の隅を見た。そこには偶然、半月ばかり前に買っておいた雨具のポンチョ[簡易なカッパのようなもの]があった。傘を買う目的だったのだが生憎、財布の持ち合わせが少なく、他に買うものもあったからポンチョにしたのだ。ポンチョは山、ハイキングなどで使うアウトドア装備の一つだが、まあ、いいか…と御台所は買って部屋の隅に置いたままになっていた。御台所は、よしっ! チャレンジだっ! ふと、御台所は某国の大統領や織田信長公にでもなった気がして、雨の中を耕してやろうじゃないかっ! と決断した。決断とは大仰な言い方だが、このときの御台所の意気込みは、やってやろうじゃないかっ! の意気込みで凄かった。ポンチョを身につけ雨靴を掃いていると、自分はそんな大物でもないか…と思いなおした。
外は幸い土砂降りから小降りになっていた。ポンチョ姿の御台所は、鍬を手にすると、畑を耕し始めた。割合と作業は順調に進み、苗床の準備をした畑の畝は出来上がった。これで、あとは苗を植えるだけだ…と、安息の息を吐き、御台所は家の中へ戻った。世の中ではチャレンジ精神が不可能を可能にすることが、よくある。
完




