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-23- 先を読む

 夕方、帯川おびかわは明日の天気が気になり、テレビを見ていた。気象予報士が明日の天気予報を詳細に語る様子が画面に映し出されている。帯川は明日、屋外の重要な勤務先の仕事を任されていた。だから明日、降られては困るのだ。防水シートをかぶせれば出来ない作業ではなかったが、降られて困ることに変わりなかった。天気予報では明日、晴れる・・という予報士の解説がまことしやかに気圧配置図を映し出して語られていた。だが、帯川は疑っていた。というか、元々、帯川は物事には慎重な性格だったのである。ああは言っているが、降るかも知れない。いや、大いにその可能性はあるぞ…と、帯川は疑心暗鬼で先を読んだ。となれば、防水シートの準備は当然、必要となる。現場責任者としては、100名ばかりの作業者達にそのむねを伝えておかねばならない。ポンチョか雨合羽あまがっぱを準備してくるように・・という内容の電話をかける必要があった。にわかに帯川はいそがしくなった。課長補佐の窪池くぼいけに電話し、雨具の持参を連絡するようにと指示した。

『えっ?! だって明日は晴れそうですよ。天気予報もそう言ってますし…』

「甘い甘い! 君は甘いぞっ! そうは言っておっても、たかが天気予報。降るかも分からんじゃないかっ! 降らんと、誰が保証するっ!?」

『…ええ、まあ。それはそうですけど…』

 窪池は、帯川の威圧する電話の声に、思わず流された。

「分かれば、いいんだよ。じゃあ、な行の作業員までは私が電話するから、君は、は行以降の作業員に連絡してくれたまえ」

『はい、分かりました…』

 帯川がすべてに連絡し終わったとき、すでに10時前になっていた。妻の美咲はあきれて先に寝てしまっていた。帯川は冷え切った料理を一人、冷え切った表情で口にした。だが、帯川には、これで大丈夫だ…という安らぎの思いがあった。

 予想は大きくはずれ、次の日は、天気予報どおりの快晴だった。昨夜の帯川の多忙さは徒労とろうに帰していた。だが、晴れ渡った早朝の空を見上げながら、帯川は青空にひるまず先を読み、いやいやいや…まだまだ分からんぞっ! と、うたぐりの眼差まなざしで、ジィ~~~っと空をながめ続けた。慎重派が時間切れまで先を読むということは、確かに、よくある。


                    完

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