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-22- それとなく

 世の中には目立つことを苦手にがてとする人がいる。まあ、多かれ少なかれ、人は大衆の中では意識はするものだが、大衆でない数人、あるいは一人の場合でも根本的に人と接することが苦手な人もいるのだ。麦畑むぎはたの場合がそうで、それとなく生きたい…と彼は願っていた。それとなく・・というのが味噌で、自分を勘定に入れられたくない訳だ。いわば、透明人間ではなく、いることはいるのだが、存在感がなく生きられる…というのが麦畑にとっての理想だった。それは他人から無視される・・というのではない。

「あっ! 麦畑さん」

「はい、何か?」

「いや! すみません、何でもありません。そこの穂耐ほたえさん!」

 呼び止められた麦畑だったが、呼び止めた村長の高温こうおんは、麦畑がくわをバットがわりにして素振すぶりしているのを見て、通りかかった穂耐にまとを変えた。麦畑は別に無視されたとも思わず、鍬の素振りを続けた。すると偶然にも鍬の先が抜け、空中に飛んで森から出てきた一羽のかもを直撃した。村長と耐穂は見て見ぬ振りをして去っていった。麦畑は鴨に近づいたが、すでに息絶えていた。麦畑は、こりゃ可哀そうなことをした・・と思うでなく、今夜は美味うまい鴨鍋が食えるぞ…と、それとなく思った。そして、その夜はそれとなく、そんな夜になった。満腹になった麦畑は、それとなく美味かったな…と思った。

 翌朝、麦畑は食べた鴨が急に可哀そうになり、それとなく墓をつくって残った部分を葬り、野の花をそれとなく飾ってやった。そして、じぃ~~っと墓を見ながら、まあこれでいいか…と、それとなく思った。人が無意味なことを、何げなくやってしまうことは、よくある。


                    完

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