警備兵二人組みの日常
巨大な壁に囲まれた王国があった
円形の壁が三つ重なったその様子は、上空から見れば弓道の的っぽく見えただろう
一番中央が、王城があり貴族が住むエリア
その一つ外側が、一般人が住むエリア
一番外側が、畜産や畑などが行われ、尚且つ貧民などが住むエリアだ
壁の外は魔獣が跋扈する未開の土地である
まあ、場所によってはすぐに襲われることも無いので適当に畑とかあったり、人が住んでたり、農村とかがあったりするのだが
壁の一番外の門は、王国の壁に入るための検問だ
一際厳しい調査が行われ、多くの兵士が配置されていた
崩れていたら一大事である壁の調査確認も、頻繁に行われている
これは、壁の調査に出た警備兵二人の物語である
「いやぁー。きましたね」
「きましたねぇ」
「見てくださいよあれ」
「ね。ていうかなんで敬語なのコレ」
「どうっでもいいよね、それ。いまどうでもいいよね? え?」
「何でキレてるのアナタ。ゴメンゴメン」
「っとに。たのみますよ」
「はいはいはい」
「で、あれよ。アレ。ゴブリン」
「あー。いますねー、ゴブリン」
「なんで壁の近くにいるの。ゴブリン。なに、巣でもあるの?」
「あるかも知れないね。ゴブリンは一匹見たら百匹居るって言うからね」
「え、あれ、ゴブリン見つけたときどうすればいいのゴブリン」
「あのー、見つけた場合は」
「え、ゴブリンだよね? ゴブリン見つけた場合? ゴブリン?」
「うん、ゴブリン」
「ゴブリンかー」
「も、うるせぇなぁ!」
「ぶふっ!」
「ゴブリンっていいたいだけじゃねぇーか! ははは!」
「いや、ちょっといいたくなっちゃったゴブリン」
「ったく、ちょっ、もーおー!」
「ははは!」
「たのんますよもー! えー、なんだっけ。はい。あ、ゴブリン見つけた場合ね。ゴブリンはほら、アレだよ。見つけたら倒して」
「うん」
「あのー、見つけた場所と」
「はい」
「戦闘状況とかを書類に書いて報告する感じですよ」
「えっ、まってそれ」
「はい。はい、なによ」
「書類書くの?」
「かきますね。はい」
「日誌とかのあのー、通常業務以外でってこと?」
「ですねぇ。書きますねぇ」
「え、やだ」
「やだじゃねぇーの。何がヤダだよ」
「いや、だってそれはほら。警備兵の仕事じゃ無くないですかそれ」
「うん、警備兵の仕事だね思いっきり」
「ちがう、そうじゃなくてほら。書類書くのがこう、違う感じが」
「違いませんよ。何も違いませんよ」
「いや、だってほら、あれ、書くんでしょ? 書類こう、用紙用意してぇ、かりかりーって」
「かりかりーってなんだよ。っていうかもう、アナタ面倒くさいだけでしょう書類書くの」
「うん」
「いっちゃった! 認めちゃった! ダメだからねそれ。まずいからね?」
「え、そんなまずいの?」
「だってアナタ、危険でしょう? ゴブリンほっといたら」
「いや、あれだ。あれ、アレ、ゴブリンじゃないかもしれない」
「ゴブリンだよどう見ても。え、どう見たらゴブリンじゃないの逆に」
「だってお前、ほら。壁の近くにいるわけじゃん」
「いるねぇ」
「ゴブリン顔の人かもしれないじゃん」
「どんだけだよ」
「ふふふっ!」
「笑っちゃってんじゃ、ドンだけだよ! ねぇーよ! アナタあれ、どう見てもゴブリンだからね?」
「ちっがう、あるじゃん! ワンチャン! ワンチャンあるじゃん!」
「ねぇーよ! ゼロチャンだよこれ」
「ゼロチャンってなに?」
「うっせーよ! しらねぇーよ! もう! ぶふっ!」
「ははは!」
「ああ! うっさい! もう! とにかくアレゴブリンだから! 討伐するよマジで!」
「まーまーまー! まてって! もー、最近の若いやつは血の気が多くてかなわん」
「同い年だからね。同期だからね俺ら」
「一回! 一回話して見よう!」
「ムリだよ」
「可能性があるでしょ! 一回だけでいいから! 会話を試みて、こう、文化的なー、あれだ。交渉を、して、ほら。なんか、話し合ってみよう」
「せめて言い訳考えてから動け?」
「だっ! もう、いいじゃん! 話し合ってみよ! 意外とどうにかなるかもしれないじゃん!」
「マジで? 俺やだよ? アナタ話しかけてくださいよそれ」
「大丈夫。マジ、ちょっと自信あるから。文化的なやつで」
「文化的っていいたいだけじゃないのそれ。もー」
「文化的って言いたいって言うか、もう書類書きたくないし戦いたくないし」
「言っちゃった!」
このあと、ゴブリンは襲い掛かってきたので、倒した