女忍者(くノ一)と早食い大食い対決!?
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さて、メシである。風呂を上がって着替えた俺は、食堂へやってきた。
昨日は魔物の襲来や俺の出現で忙しなかった影響で、一堂に会しての夕飯ではなかった。
今回は、学園の教職員と生徒が揃っての食事である。しかも、トヨハ姫も臨席している。
ちなみに、円卓がいくつも並んでいる立食形式だった。
奥のほうがトヨハや城からついてきた身分の高い者、あとは校長や教頭など。
その次は、教職員たち。入口に近いほうに生徒や兵士たちといった感じだ。
俺は仕方なく、教職員たちのテーブルに向かう。
「皆さん、昨日はお疲れ様でした! 学園と兵士のみなさんのおかげで、魔物の侵攻を防ぐことができました。そして、危機を救ってくださり、なおかつ講師を引き受けてくださったナサトさまに、あらためてお礼を申し上げます!」
さすが姫騎士といったところか。儀式慣れしているというか、挨拶慣れしているというか。
俺にとっては、堅苦しくてしかたないのだが。
「みなさんは国の礎です。今宵は我が国の名産品をとりそろえた晩餐で、英気を養ってください」
そういうだけあって、なかなか豪華な食べ物が並んでいる。
上質な肉に新鮮な魚、彩豊かな野菜とフルーツ。見ているだけでも本気度がわかる。
生徒や俺に期待しているという現れだろう。
俺としても、メシが美味いに越したことはない。
「わー、すごい! おいしそー!」
「サキ、まだ姫様の挨拶の途中ですわよ……」
こんなときでもサキとミナミはマイペースだ。
そして、そんなふたりを見てトヨハは微笑を浮かべる。
「ふふ、そう言っていただけると食料を用意してよかったです。それでは、お料理が冷めてしまわないうちにいただきましょうか。それでは、どうぞ召し上がれ」
こうして、晩餐会が始まった。
というわけで――俺は、ひたすらエネルギー摂取モードに入る。
まずは、肉! 次に、肉! そして、肉!
「うん、いい肉だな。これは極上だ」
百回世界を渡りあるいてきただけあって、俺の舌は肥えていた。
戦いのほかに楽しみといえば、食べることだ。
腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったものだ。マズいメシでは、力も出ない。
というわけで、ほかの教職員と親交を深めることなく俺は、ひたすらガツガツと食べまくる。
「おお、言い食べっぷりでござるな!」
そんな俺を見て、声を上げる奴がいた。
目の前にいた、忍者装束を着た女だ。
「拙者も負けてはおられん!」
どこの時代から来たんだというような口調で言うと、俺に対抗するようにムシャムシャとメシを食べ始める。
「ほう、俺に対抗するとは」
「ふふ、勝負でござる!」
というわけで――俺は女忍者と早食い兼大食い競争を開始した。
俺に挑むとは、いい度胸だ。
そして、一時間半後……。
「……ぐふっ、拙者の負けでござる……」
俺のハイペースについてこれることなく、女忍者は撃沈していた。
まぁ、よくもったほうだ。というか、つい貴重な食料を消費しまくってしまった。あとで、獣でも狩りまくって調達しておこう。
「早食いと大食いは俺の特技でもあるからな。まぁ、がんばったと思うぞ。これからよろしくな」
「……こ、こちらこそ、よろしくでござる。うぐっ……せ、拙者は、カスカという者。三日前に赴任してきたばかりでござるが、毒キノコにあたって先ほどまで寝込んでいたでござる。というか、今朝まで生死の境を彷徨っていたでござる……」
だから、先日の戦いや授業のときにいなかったのか。
こうして対していると、それなりの強さであることはわかる。
教職員が雑魚ばかりじゃなくてよかった。
しかし、病み上がりでいきなり食べまくるとか、こいつは相当のアホかもしれない。
顔色も悪くなっていて、脂汗をかいている。
「ぐぷっ……拙者、もはや、これまで……かもしれないでござる……」
やはり、アホだ。
俺は魔法を使って、今にも吐きそうなカスカに状態異常治癒魔法をかけてやった。
青白い光に包まれて、みるみるうちにカスカの顔色がよくなった。
「……おおっ!? す、すごいでござる! まさか、こんな一気に回復するとは!」
「こんなことで回復魔法を使うとは思わなかったがな……」
しかし、ここで吐かれるよりはマシだ。実は、かなり有効な魔法活用法だったかもしれない。
これまでに何度も状態異常治癒魔法を使ってきたが、ここまで使ってよかったと思える状況はなかった。
「ナサト殿は、拙者の命の恩人でござる! 姫様も出席する盛大なパーティ中に吐いたら、それこそ切腹ものだったでござる!」
満腹からの切腹にならなくて、本当によかった。
俺は、世界を救ったような気分になった。
というか、世界を救ったときよりも安堵している。
「それでは、そろそろお開きといたしましょう。皆さん、お疲れ様でした!」
トヨハが締めくくり、晩餐会は平和裏に終わりを告げたのであった。




