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女忍者(くノ一)と早食い大食い対決!?

★ ★ ★


 さて、メシである。風呂を上がって着替えた俺は、食堂へやってきた。


 昨日は魔物の襲来や俺の出現で忙しなかった影響で、一堂に会しての夕飯ではなかった。

 今回は、学園の教職員と生徒が揃っての食事である。しかも、トヨハ姫も臨席している。


 ちなみに、円卓がいくつも並んでいる立食形式だった。

 奥のほうがトヨハや城からついてきた身分の高い者、あとは校長や教頭など。

 その次は、教職員たち。入口に近いほうに生徒や兵士たちといった感じだ。

 俺は仕方なく、教職員たちのテーブルに向かう。


「皆さん、昨日はお疲れ様でした! 学園と兵士のみなさんのおかげで、魔物の侵攻を防ぐことができました。そして、危機を救ってくださり、なおかつ講師を引き受けてくださったナサトさまに、あらためてお礼を申し上げます!」


 さすが姫騎士といったところか。儀式慣れしているというか、挨拶慣れしているというか。

 俺にとっては、堅苦しくてしかたないのだが。


「みなさんは国の(いしずえ)です。今宵は我が国の名産品をとりそろえた晩餐で、英気を養ってください」


 そういうだけあって、なかなか豪華な食べ物が並んでいる。

 上質な肉に新鮮な魚、彩豊かな野菜とフルーツ。見ているだけでも本気度がわかる。


 生徒や俺に期待しているという現れだろう。

 俺としても、メシが美味いに越したことはない。


「わー、すごい! おいしそー!」

「サキ、まだ姫様の挨拶の途中ですわよ……」


 こんなときでもサキとミナミはマイペースだ。

 そして、そんなふたりを見てトヨハは微笑を浮かべる。


「ふふ、そう言っていただけると食料を用意してよかったです。それでは、お料理が冷めてしまわないうちにいただきましょうか。それでは、どうぞ召し上がれ」


 こうして、晩餐会が始まった。

 というわけで――俺は、ひたすらエネルギー摂取モードに入る。

 まずは、肉! 次に、肉! そして、肉!


「うん、いい肉だな。これは極上だ」


 百回世界を渡りあるいてきただけあって、俺の舌は肥えていた。

 戦いのほかに楽しみといえば、食べることだ。


 腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったものだ。マズいメシでは、力も出ない。

 というわけで、ほかの教職員と親交を深めることなく俺は、ひたすらガツガツと食べまくる。


「おお、言い食べっぷりでござるな!」


 そんな俺を見て、声を上げる奴がいた。

 目の前にいた、忍者装束を着た女だ。


「拙者も負けてはおられん!」


 どこの時代から来たんだというような口調で言うと、俺に対抗するようにムシャムシャとメシを食べ始める。


「ほう、俺に対抗するとは」

「ふふ、勝負でござる!」


 というわけで――俺は女忍者(くのいち)と早食い兼大食い競争を開始した。

 俺に挑むとは、いい度胸だ。


 そして、一時間半後……。


「……ぐふっ、拙者の負けでござる……」


 俺のハイペースについてこれることなく、女忍者は撃沈していた。

 まぁ、よくもったほうだ。というか、つい貴重な食料を消費しまくってしまった。あとで、獣でも狩りまくって調達しておこう。


「早食いと大食いは俺の特技でもあるからな。まぁ、がんばったと思うぞ。これからよろしくな」


「……こ、こちらこそ、よろしくでござる。うぐっ……せ、拙者は、カスカという者。三日前に赴任してきたばかりでござるが、毒キノコにあたって先ほどまで寝込んでいたでござる。というか、今朝まで生死の境を彷徨っていたでござる……」


 だから、先日の戦いや授業のときにいなかったのか。

 こうして対していると、それなりの強さであることはわかる。

 教職員が雑魚ばかりじゃなくてよかった。


 しかし、病み上がりでいきなり食べまくるとか、こいつは相当のアホかもしれない。

 顔色も悪くなっていて、脂汗をかいている。


「ぐぷっ……拙者、もはや、これまで……かもしれないでござる……」


 やはり、アホだ。

 俺は魔法を使って、今にも吐きそうなカスカに状態異常治癒魔法をかけてやった。

 青白い光に包まれて、みるみるうちにカスカの顔色がよくなった。


「……おおっ!? す、すごいでござる! まさか、こんな一気に回復するとは!」

「こんなことで回復魔法を使うとは思わなかったがな……」


 しかし、ここで吐かれるよりはマシだ。実は、かなり有効な魔法活用法だったかもしれない。

 これまでに何度も状態異常治癒魔法を使ってきたが、ここまで使ってよかったと思える状況はなかった。


「ナサト殿は、拙者の命の恩人でござる! 姫様も出席する盛大なパーティ中に吐いたら、それこそ切腹ものだったでござる!」


 満腹からの切腹にならなくて、本当によかった。


 俺は、世界を救ったような気分になった。

 というか、世界を救ったときよりも安堵している。


「それでは、そろそろお開きといたしましょう。皆さん、お疲れ様でした!」


 トヨハが締めくくり、晩餐会は平和裏に終わりを告げたのであった。


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