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敵への温情に見えても

「良かったんですか、というか何で見逃すような事を……」

 森の奥へと消えたナイドレアとかいう魔族を気配探知の魔法で追跡しつつ俺は聞いた。不意打ちをしなかったどころか、わざわざ魔族の力が強くなるという時、相手の指定した場所に出向くというのは敵に塩を送るどころの話ではない。

「きっと今頃あのナイドレアもそう思ってるだろうね。まあ、夜が明けるまでの時間を考えるとこうした方がいいかなって」

 対するアルジーヌの説明は、凡そ次のようなものだった。曰く、今日は日暮れからアンヌさんの(もと)へ話を聞きに行っていたために既に夜も半分過ぎている。戦いが長引いた時の事も考えると夜明けまでの時間を出来るだけ長く取りたい、と。

「ただ、別の機会にしたいと()()()()()と知られるのは良くない。新月を引き合いに出してあくまでも()()()()と思わせた方が何かと都合が良かったんだ」

「それはそれとしても、なんで夜明けまでの時間を気にするんですか」

「出来れば誰も知らないうちに倒して何事もなかったかのように翌朝人前に出たくてね。魔物の元締めを倒してきたとなれば騒ぎが大きくなりすぎてどうなるか分からないし」

 なぜそんなことを、と思ったが、目を覚ました後にもこんな話をしたのを思い出した。アルジーヌは魔物を倒した後に救世主として崇めかけられたのを余程気にしているらしい。

「そこまで気を使うなら、人前で派手に魔物を倒すなんてさせなければ良かったと思うんですが」

「今ならそうするけどさ、平野に村が点在していて、魔物が出たのを(しら)せる笛に速やかに逃げる村人、そして防備の固まった村を見たあの時は、あの位の魔物が出てもちゃんと撃退してきた程度に人間も強いと思ったから、流石に想定外だったというか、ね。それよりとっとと帰るよ、農家の人間は特に起きるのが早いんだし、明日のために眠っておくべきでもあるからね。今から眠ればちょうどいいでしょ、きっと」

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