他責の餌食
人は皆が皆聖人君子である訳ではないし、君子たらんとする訳でもない。かなしいね。
「アルジーヌ様、数日動けないかもというのは流石に言い過ぎじゃありませんか」
村長達が去ってから、俺は尋ねた。村長の来る前アルジーヌと話した時に治癒魔法を使っていたし、そもそも目を覚ました時点で既に大丈夫そうな感じだったのだ。
すると、
「朝、まだ森の中にいたとき、魔王の話をしたのは覚えてるかな」
アルジーヌはそう切り出した。気絶していたせいか結界を解いて出発してからもう少し経っている気がしていたが、確かに今朝の事だ。
「確か、魔物は魔王の眷属なんですよね」
「そう言った後、元は勇者だった魔王がいるって言ったね」
「確か、魔王になる前の事が唯一分かっているっていう話だったような」
魔王城で魔王と相打ちになったが、それが原因かは分からない、という話だった気がする。
「その魔王が勇者だった頃の話なんだけど、滞在していた村が魔物に襲われて死人が出たことがあってね。そうしたら死んだのは勇者が守るのに失敗したからだ、って怒りの矛先が勇者に向いた」
「そんなことが」
理不尽な話ではあるが、考えてみれば確かにありそうな話ではある。
「他にも、もっと早く来てくれればあの人は魔物に殺されずに済んだのに、なんて恨みを向けられたりもした。人は時にとんでもない他責思考の持ち主になり得るんだ。頼られ過ぎると同じように餌食になりかねないからね、恩を売れば旅が楽になるけど、限界もあるとはっきり示しておいたほうがいいんだよ」
「恩を売ればって、もしかしてそのためにわざわざ村の近くで魔物の相手をさせたんですか。というか、なんで魔王になったか分からないって言ってましたけど、その経験が原因なんじゃ……」
「恨み憎しみで魔王になれるなら今頃巷は魔王で溢れ返っているよ。まあ元人間ながら魔王となった後に容赦しなかった理由の一つではあるけど、それが魔王になった原因とはいえないね」
アルジーヌはそう言うと椅子から立ち上がり、
「まあそういう訳だから、歩きまわるにしても明るいうちは控えておくように。あとたまに辺りに魔物が寄ってきていないか探知しておくといいかもね、念のために」
そう言って部屋から出て行こうとした。
「どこかに行くんですか」
「村長が言ってた人、アンヌだったっけ、まあその人に魔物についてどこまで知っているか聞きに行ってくるよ。じゃあね」
アルジーヌは村人達が救世主だと騒ぎ始めたのを見て昔のことを思い出したのかもしれないし、内心やりすぎたかもと思っているかもしれない。




