その33:過去の傷
日が高く登る頃、シャンディらと別れを告げ、僕は、ミリオットへと向かっていた。陣営に戻る為の学び舎。馬車へ乗り中央領から、北へと向かい、奥地へと向かう。
「まだ、知らない世界、、全てを知ったつもりだったけど、ここは本当に広いな…」
実は、北側へ進む事は無かった僕。それもそうで、主に領外へ出る為の門や、僕が住んでいたフィレアス領は西側に、ピースやワインズ領は東側にある。
「そうか、ここが、、」
見えてきた。ミリオット学園だ。
外観は、自然豊かな場所に囲まれた中に、ドンと佇む、石造りの校舎。大きく中央に伸びる塔らしき場所の頂点に、鐘が吊られていた。
「戻る為、意志を固めたつもりだったけど、またこの生活、、か…」
学生生活、正直、強い目的が無ければ、初日にもリタイアしたい。でも、今は、シャンディや快く送り出してくれた両親の為にも、乗り越えなくてはならない。
僕は、改めて気を引き締め、装飾など無く、とてもシンプルな、学園の鉄門の前へと立つ。
「やれる。出来るんだ。進め、僕」
自分に言い聞かせ、脚を動かそうとするが思うように進まない。そこへ、一人近付いてくる人が居た。
「君、何やってるの、、?脚を出したり引っ込めたり…」
「わぁああぁあぁ!!?」
急に後ろから話しかけられるものだから、驚いた僕は、前へ倒れ込むそうになる。咄嗟に前へ出した脚は、門を超えていた。
「ちょ、ちょっと!そんなに驚かなくても良いじゃないか!」
驚いた心を落ち着ける為に固まる僕に、駆け寄り話しかける彼。
「あれ、私服?と言う事は、何か忘れ物?取りに来た感じ?」
「すみません、、驚いてしまって、、今日から編入する事になったんですけど…」
「編入?編入生か!君か、丁度良かったそろそろ着くだろうから、学生課まで案内してくれと頼まれていたんだよ」
手を前に差し出し、握手を求めてくる彼。緑基調の制服には、胸元に赤い石のような物がある。整えられた髪、それに対し、柔らかい表情で目元に優しさを感じる。
「貴方は?」
「私は、ペルカ。ペルカ・ガレアス一般学生だけどね」
「ペルカさん、、初めまして。僕は、クライネ・トダンと言います。すみません、案内までしてもらえるなんて…」
「頼まれ事だからね、先生からの」
握手を返す。僕は、ペルカの案内の元、僕は学生寮に向かった。
「もう、手続きは済んだってさ。先生から聞いてるよ、ギリエルって人からの命令で、ここに来たって。君、魔術違反を犯したって?やるねぇ」
「訳を話すと、長くなるんですけどね。僕は、目的があってここに来たので」
「目的?聞いてもいい事なのかい?」
「陣営復帰です。絶対に戻る約束をしてるんです」
僕は 、ペルカに陣営所属だった事、ギリエルとのやり取りや、ここに来た理由を伝えた。
「へぇぇ、、え゛。君、陣営所属だったの?」
「え、ギリエルさんから聞いてないんですか?」
「聞いてるもんかい。ただ、編入する人が来るからとしか先生に教えて貰ってないよ。しっかしよぉ、陣営所属の人が逆に来る事あるのか」
通常、学び舎から精鋭として陣営に来る事はあっても、陣営から学び舎は、初めての事だったらしい。
そりゃそうだ。わざわざ、戻る事は無いのだから。
「さ、着いたよ。ここが寮さ。デカいだろ?」
「これ、学生寮なんですか?もはや、校舎じゃないですかこの大きさ」
「よく言われるよ、初めて来た人には特にね。でも、ここ北の最奥だろ?帰る手段が限られるから、皆寮生活さ」
寮は、学校の校舎が奥までずらっと並んでる様な見た目で、ざっと見ただけでも、30棟はある。もはや、奥が見えない。
「それで、君はこの棟のここだから、、お、運が良いね、1階だよ。上だと朝降りるのが大変なんだよね」
「エレベーターは無いんですか?」
「エレベーター?なんだいそれは」
つい、口走ってしまった。どうやらこの寮、8階まであるにも関わらず、エレベーター等降りる手段が階段しかない。
「あっ、あぁ、えぇぇっと。降りる手段だよ。魔法の一種でね」
「そんな便利なものがあるのかい?転移系の魔術だったり?でも、寮の範囲では魔術使用出来ないからね。使ってみたいなぁ、その魔術。私、毎朝7階から降りてきてるんだよ」
腕を組んで、唸りながら悩むペルカ。毎朝これだけで疲れてしまうらしい。
「1階のここ、ここが君の部屋。僕は同じ棟だから、いつでも遊びに来てね。七階の、、そうだ、マップは外か、右から三番目の部屋!名前が書いてるから、これからよろしくね」
「ありがとうございます。案内してもらって助かりました」
頭を下げお礼をする、扉には自分の名前が書かれていた、僕は玄関に持ってきた最低限の荷物を置き、ペルカに一つ質問をする。
「ペルカさん、、因みになんですけど、この学園は、陣営排出ってどれくらいされてるとか、分かったりしますか?」
「そこそこだね、首席は陣営に入るかもって所、でも、ここ最近は、陣営に入れるレベルの人が居ないみたいで、三年近く陣営へ入る人は出てないってさ」
学園は、三種類存在しており、魔法中心、武術中心で分かれている。魔術中心の、ミリオット、スキリオール学園。武術中心のリナリウォル学園。
そこから、三年排出が無いとなると、陣営へ入る難しさが伺える。
「元陣営って事は、ジェイルって言う人知ってるでしょ?ここの首席のさ」
「えぇ、僕の師匠ですね」
「師匠?あの人、弟子取るような人だったんだ。在学中、魔法を教えて欲しいと、上級生から言い寄られる事もあったけど、一切誰にも、教えようとしないまま卒業したって話聞いた事あるぞ」
(ジェイルさん、、学園生活どんな人だったんですか貴方は…)
「私、とんでもない人を相手にしちゃったかもしれないなぁ、、こんな私でも、良かったらどうか仲良くしてくれ」
「そんな、拒む理由なんてないですよ。寧ろ案内してくれたんですから」
何故か、知らないけど初めて、学生として友達が出来たかもしれない。ジェイルには、感謝が尽きない。
「そうだ、編入って事は、途中の学年から入るんだろ?」
「そう言えば、そこは何も聞いてませんでした。僕何年からになるんですかね?」
「何年?何を言ってるんだい?ここは、ポイントで分かれてるんだよ。1から11で分かれてて、試験結果で足したり引かれたりね。で、11まで行くと卒業試験を受けれる。そこで合格してかつ、精鋭と認められて初めて陣営入りさ」
「、、?ごめん、良く分からなかった」
パッと言われたから、何の事か良く分からなかった。
1から11のポイント制で、それが結果により上下し、卒業試験を受けるには上げ続け、11に達する必要があるようだ。それで、入学時は、1から始まるらしく、一回目の試験で0になり、退学する人が後を絶たないらしい。
「5とかから始まらないで、1からなんですか?凄い厳しいですね、、」
「だから、陣営所属は誇れるものなんだよ。君が、元陣営って聞いて、とても光栄さ、そんな人と話せてるんだよ?」
「因みに、ペルカさん、今ポイントは?」
「うっ、聞くの?6だったかな、、それで君なんだけどね…」
途中編入は、5から始まるらしい。という事は
「先輩じゃないですか!何でそんなに、6を嫌がってるんですか?」
「いやぁ、たはぁ、、その、ごめんやっぱ5…」
前の試験で、ペルカはミスをしてしまい、ポイントを1下げてしまったらしい。
「良いなぁぁ!5から始まるってさぁぁ、、私4から7をずっと行き来してるんだよ?」
「試験内容ってどういう物を、、」
「実戦だよ。戦って、勝敗と内容で、ポイントが上下するの」
実技、本当に実力主義の学園だった。
「で、技を一回でも、直撃させれば勝ち。私、前の試験久しぶり勝ったんだけどなぁ、、久しくの喜びから、詰み姿を作る前に喜んじゃって…」
「詰み姿、、って?」
「うーーん、、ちょっと座ってみてくれる?」
言われるがまま、僕はその場で胡座をかく。
そこへ、ペルカが小さな杖を出して、喉元に先端を突き立てる。
「これ。これが、詰み姿。ここは、魔術使えないから、突き立ててるだけだけど、いつでも魔術が発動出来るように、準備段階までして、突き立てる。もう身動き出来ないように、動くな!って感じだね」
「あ、あの、ペルカさん、、つ、杖…」
「あっ!ごめん!」
先端が、喉元に突き刺されそうになっていたので、死を感じた僕は、詰まる声で必死にペルカに伝えた。
「つい、実践明けだから、、ごめんね」
「大丈夫です、、それだけ、熱心なんですね」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。それでね、良かったらなんだけど、、」
ペルカは、僕に魔術を教えて欲しいと申し出てきた。
「陣営所属の人から、直々に教えて貰えるなんて、絶対無いからね、是非教えて欲しいんだ」
「元、ですけどね、、」
「元でも、居たのは事実だろう?」
「そうですけどね、、分かりました。僕が出来る事は、お伝えします。でも、逆に僕からもお願いがあります」
僕は、学園生活初めてのお願いをした。
それは、絶対に前世では、口に出来なかった事、後悔はしたくなかった。
「僕と、、僕と、友達になって下さい…!」
更新です。難しい。あぁ、難しいです。




