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その1:痛みの紋章

暗い……視界が暗い…

「急いで!さ、いと…あわない…!」


頭にか細く響く女性の声、僕はどうなっているのだろうか。

突然の事態に思考を巡らせ、何が起こったのか思い起こす。

かすかに温かい身体、その温かさは背中に伝う。


(そうだ…僕は一撃を喰らったのだ、それも致命傷になる一撃を)


時は戻る、この惨劇にまた出会う時までに


「舞宮さん、、僕の、、僕の人生を受け取って頂けませんか?」


夕焼けの校舎裏、これは漫画だろうか、シチュエーションがそれではないか。

艶やかな透けるような髪、顔は清楚と言う言葉が、これ以上似合う人が居るだろうか。

背は僕よりも10cm程も低く、何事にも勤勉で、高嶺の花、そんな人に僕は今、告白している。


もちろん、嘘なのだ。

やらされているのだ。言わされているのだ。


俗に言う『罰ゲーム』ってやつだな。

いや、告白される向こうからしたら、罰ゲーム以上のそれかもしれない。


なんて言ったって、僕の容姿など凡も凡、否、下だ。自己評価が高過ぎた、訂正しよう。

セットなど縁も無い髪、体形もだらしない、腰から出した余った布がかろうじて、私の腹部の膨らみをカバーしてくれている。

僕の事はどうでもいい。今は、この地獄みたいな状況を、どう乗り切るかだ。


口を開けた彼女は、そんな状況の中で、ひねり出してくれたのだろう。


「貴方の名前は、、何て言うの、、?」


当たり前の反応だ、縁の無い人から急に呼ばれ、急に告白されているのだ。

この反応をして貰ってるだけで良心が痛む。


すると、彼女は何やら目くばせをしている、まるで察したと言った感じだろうか。

背を詰める様にぐいっと脚を伸ばして、顔を近づけてくる、僕は身を引いて距離を保つ。


(近い近い近い!!!何か変な事をされると、いじられる要素がどんどん増えていくんだ)


そんな僕に構わず、彼女は更に顔を近づけ


「貴方、言わされているんでしょう、、?さっきから見えてるの。三人組」

コソっと、僕の耳の近くで話す。


あぁ、そうか、そこまで察してくれているのか。流石だ。助かる。天使。


察しの良さに感心していると、僕と距離を戻した舞宮さんが口を開く。

「良いわ。でも、まずお友達からね」

口角を若干上げて、ニコッと微笑んでくれる。


呆然。おい、待て、今何て言った?もしかして、とんでもない事言ってるんじゃないか?

突然の事態に、身体が硬直する、口も動かない。


「どうなの?返事はこれで良い?」


良いさ。もちろん、良い。僕にとっては、十分すぎる返事。

でも、多分間違えてる、これは違う、違うんだ。まただ、また騙されてる。分かる、僕には。


「聞こえてる?どうなの?良いの?」


もう一度問いかけてくる彼女に、僕は応える。頑張れ僕、騙されてても肯定するんだ坂間。


「は、、、」すると急に背後から一人会話に割り込んできた

「そこまでそこまで、ごめんねぇ、こいつ罰ゲームなんですわ。今のやり取り忘れてや」


そこには、あいつらだ、僕をいじめるあいつ等の一人だ。


肩を掴まれ、爪が皮膚に軽く食い込む力で、僕を後ろに連れ込んでいく。


力任せに僕を、地面へと突き飛ばす。


「ほんっとに、面白くねぇな。お前、会話しろ。恥を晒せ。笑える要素くれよ!」


罰ゲームが思わぬ方向に進んだせいで、明らかな不満げな声を、僕に投げかける。


場所を変える為に、そのまま僕は腕を掴まれ引き連れられて、その場を後にする。

仲間の一人が、舞宮さんに話しかけている、戻った所を見ると帰されたのだろう。


気のせいだろうか、見えなくなる直前に、話しかけていた奴の膝が、彼女の身体に向かっている様な気がした。


その日を機に、いじりの内容が過激化していった、気に食わなかったんだろう。


舞宮さんは、普段一人を好むらしい、誰かと居る所とか滅多に見ない。

そんな人が、〝お友達から〟と言ってるからな。


「っ、、、!がっっ、、、」


殴られる、声にならない。頬はすぐ跡でバレるらしい、だから腹部や背中を狙われる。


僕はいつも、腹部を殴られる。出た腹に拳が当たる感触が楽しいかららしい。短絡的だ。


「お前は!!罰ゲームすらも!!!面白く出来ないのか!!!!」


三人に取り囲まれ、リーダー格の奴から殴られる姿を二人が眺める。

あれ?今日はいつも以上に、威力強くないか?いつもならここらで、止めるじゃないか。

視界が徐々に薄まってくる。


(あの時の〝お友達〟発言は、そこまでの地雷だったのかよ、、、)



、、、、気付いたら、僕は廊下で一人横たわっていた。

初めてだ、気絶するまで殴ってくるなんて。脚をふらつかせ、帰路に着く。


ダメージがまだ蓄積している、まだ視界がぼやける瞬間がある。


かろうじて、家へとたどり着き、自室へと入る。


「今日はもう、、、何も考えたくない、、」

そのまま、僕は、深い眠りへと入るのだった。



朝日が昇る、僕は今日もお腹の傷を抱え、学園へと向かう。


「また、また、今日もこの道か、、」


つらい、苦しい、助けて欲しい。延々と痛む傷。褒めて欲しい、家から出ているんだぞ?


「痕になってやがる、、」

それなりに大きい痣、そして出血でもしたのだろうか、傷が痕になっている。


気付かなかった、あの日はとにかく帰りたかった、家に戻りたかった、その一心だ。

腹を擦りながら、学園がある方へと曲がる。


すると、見覚えのある顔が校門前に居る。舞宮さんだった。


「話しかけるか、、否か、、」


謝りたい。罰ゲームとは言え、人を不快にさせてしまった。


僕は、比較的悪いと思ったら、すぐに謝る性格だ。

そこに付け込まれ、今のいじめられている状況と言っても過言ではない。


「あっ、、、舞宮、、さん、、?」

ごもり過ぎた、声量も小さ過ぎた。聞こえてない。


「舞宮、、さん、、!!」

声を絞り出した、とは言ってもそれで、普通の声量くらいだったが。


声に気付いたのだろう、彼女は振り返ってくれる。

僕の顔を見た途端、フイっと踵を返して行ってしまう。


「ごめん!!!!!」


声が出た、謝らなくてはと言う、気持ちが先行してしまった。

近くに居た人は、何があったのかとこちらを見てくるくらいだ、恥ずかしい。


足を止めた舞宮さんは、こちらは向かず一言だけ。


「気にしてない」


冷たい声だった、でも、それが聞けただけも心が和らぐ。

僕は、そんな離れていく彼女の背中を見送ったのだった。



僕は、今日も殴られている。放課後、夕方いつも通りのこの時間。


外に呼び出され、取り囲まれ、いつも以上の数と、威力の拳を受け止める。

頭を抱え、身を守る事しか出来ない、自分の弱さを悔やむ。


「ははは!!!!見ろよこいつ!!まるで亀みたいだぜ!!!」

「今日の最後は、俺の渾身のこの一撃で、終わらせたいと思いまーーーす!!」


周りではやし立てる、取り巻きの二人。

大きく振りかぶった腕を、拳を、力一杯に腹部に殴りつける。


「ひゅっ、、、、、、、、、、」


小さく搾り上げた様な僕の声、同時に何かが込み上げてくる。


「あれっ、、、、?」

顔が、急に引き攣る、まるで何か取り返しの付かないような、そんな顔をしている。


まさにそうだった、僕は口から血を吐き出していた。

息がしにくい、血が絶えず逆流してくる。


「やべぇって!!どうするんだよ!!!俺知らねぇぞ!!!」


殴った本人は、二人に擦り付ける様にその場から、離れていく。

それに、付いて逃げていく二人。その場に、残される僕。


絶え絶えの息の中、僕は目を閉じる。最後に見た視界は、風に舞う砂埃だった。

初めて、筆を取りました。初小説です。

情景とか気持ちとか、文字にするってとても難しいですね。

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