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学園生活 

今迄は、特にここ最近は学園にいる時でも、いつルーカスと婚約解消になるだろうと、気が気でなく、何をしていても楽しくなかった。クラスメイト達が楽しそうに話す恋の話も、自分の事を考えると胸が痛くなったし、話を振られ、加わるのも怖かった。


「ディオーネ嬢の婚約者は?」「どこにデートに言ってるの?」「結婚の日取りはきまっているのかしら?」なんて聞かれたら、どんな顔をして答えればいいのか。あいまいに笑ってごまかすのは貴族の嗜み。でも、できれば自分の事を話したくなかった。


そんな私だから、親しい友人はクレアとシャーロットの二人だけだったのだが、婚約解消をした今、ビクビクする必要もなくなった。


「もう、終わったことだものね。これからは学園生活を楽しむわ」


私がそう言葉に出すと、少し明るくなったとクレア達に言われた。


「表情が明るくなったわ。ディオーネ、もっと美人になったわね!」


「あら、そうかしら?」


「ええ、そうよ!いい、ディオーネ。すまし顔の美人よりも、にっこり笑える子の方が魅力的なのよ。だから、にっこり笑って、明るい雰囲気が大切よ。いい?笑顔よ!笑顔!」


「シャーロットの言う通りよ!だから、ディオーネ!今日はカフェに行って話題のケーキを食べまくるわよ!」


「なんでそこでケーキになるのかしら?笑顔が大切なのは分かったのだけれど?」


「ケーキは人を笑顔に出来るのよ!だからケーキは美人を作るのに必要不可欠なのよ。ケーキが無いと美人になれないわ。さあ行くわよ!」


「クレア、その通りね!次は話題のクレープにしましょう。クレープも美人が作れるわ」


「ふふ、面白いわ」


二人を中心に私はいつも笑っていられた。美人になる為、と二人に言われるまま甘い物を食べまくると言う経験もし、その後、二人が制服がきつくなったと、運動を泣く泣くする羽目になった時も私は一緒に運動をした。


「美人には簡単にはなれないものね……」


「うう……。この運動は本当に痩せるのかしら?」


「騎士隊の方がやっているのをみたもの。とにかく、こうやって、足踏みして、屈伸して、重い物を持つのよ」


「ああ……。腕がパンパンだわ。腕が太くならないかしら?」


「「あ!!」」


結局、シャーロットお勧めの運動から、軽い運動に変えて私達は無事ダイエットする事もできた。


また別の日。


シャーロットの家にお泊りパーティーをしたのも楽しかった。私達は懲りずに、夜、お菓子を沢山用意されたベッドの上で、お行儀悪く、焼き菓子を摘まみながら夜更かしをしたのだ。



「さあ、ディオーネ!この本を見て!麗しの殿方図鑑っていうのよ!他国の王子様から我が国の軍団隊長まで色々素敵に描かれているのよ!うふふ、従姉に頼んで買って貰ったのよ!従姉は『イケメン図鑑!』って言ってたけど、まあ、いいわ」


「まあ。凄い、そんな本があるのね……」


「そうよ!ディオーネ!この世に麗しの殿方はこんなにいるのよ!見て、この人、素敵よ!王宮事務官の方ですって!涼し気な目元が素敵だわ!」


「うーん、私はこっちの殿方の方がいいわ。聖騎士団の副隊長ですって!筋肉が素敵じゃない?」


「ふふ。貴女達の婚約者に告げ口しちゃおうかしら」


「「キャー!止めて!!!」」



笑い転げながら私達は麗しの殿方図鑑なる物を見て、皆で、キャーキャー言っては誰が素敵だ、いや、こちらの殿方が、いや、やっぱりこの人が、なんて言って、朝まで皆で騒いだのだ。


それから、また別の日。


生徒会の集まりで遠足の下見に行ったのも楽しかった。


「では、各自、確認場所のチェックを頼むよ」


二班に分かれて各々とチェックをしていると、急な雨に降られた。


「殿下、この先の避難小屋に行きましょう」


「うん、皆、走れるかな?」


叩きつける雨の中、私達は避難小屋へと急いだ。


「動き回るのは危険だからね。ここで雨宿りをしよう。身体が冷えるのは良くない。ケンマ、避難小屋の中の確認を、乾かせる物は乾かそう」


「は」


殿下と側近の方達が手際よく火を熾した。火を熾すを見るのは初めてだった。


「まあ、こうやって火を熾すのですか」


一緒に避難したシェルダン令嬢が驚きながら呟いた。


殿下達は携帯食料やサバイバルグッズをいつも持ち歩いているとの事で、山小屋の中で服を乾かして貰い、お茶に焼き菓子を殿下達にご馳走になった。



「ふっふっふ。どうだい、皆!僕のサバイバル術も中々のものだろう!この幼馴染のケンマはザワード辺境伯の息子だからね。火起こしも、狩りも素晴らしい腕なんだよ!」



殿下が胸を張って威張っているのだが、凄いのはザワード様。



「ふふ!レオナルド殿下!ザワード様が困ってますよ!」


私が笑うと、一緒に避難をした、生徒も「本当!まあ、殿下が火起こしが得意だったら驚いてしまいますけど」と一緒に笑い、お菓子を頂き、雷の音も叩きつけるような豪雨の音も怖くはなかった。



またある時はクレアとシャーロットからお菓子作りを一緒にしようと誘われた。



「私の従姉が隣国のアッシャードに嫁いだの。そこでは好きな殿方にクッキーを渡して想いを告げる日があるんですって。私達もやってみましょうよ!」


「いいわね!」



その頃には私は恋の話をされても平気になっていた。それに二人が私に気を使わず、そうやって自分達の婚約者の事を話してくれるのも嬉しかった。



「私は渡す相手がいないから、二人の手伝いをするわ」


「お世話になっている人にあげたり、家族にあげてもいいんですってよ?放課後、学園のキッチンを貸して貰えるようにしているわ。材料は用意しているし、学園のシェフも手伝ってくれるのよ。ディオーネも一緒に作るわよ!」


「準備万端ね。なら、お父様や弟達に作ろうかしら」


そうして私達が悪戦苦闘し、シェフの手を十分に借りながらどうにか、食べられる物を作り上げた時には、何故かレオナルド殿下含む生徒会のメンバーが見学に来ていた。


「やあやあ。なんだか楽しそうな事をしていると聞いてね?僕達の分もあるかな?」


「あら。では、私からはザワード様とロックウェル様に」


「では、私からはシルバー様とルーズベルト様に」


「え?では、殿下には私が……。あの、毒見をしっかりとして下さいね?」



恐る恐る、私が殿下にいびつな形のクッキーを渡すと、他の人達と共にニンマリ笑ってすぐに食べてしまった。



「ああああああ!!、殿下!お腹壊したら!私、不敬罪になってしまいます!!毒見、毒見をしっかりなさって下さい!」


私が慌ててクッキーを取り上げようとしたのだけれど、レオナルド殿下はひょいっとかわすと、ザワード様達を連れて「材料は見ているし、作っている工程も確認済みだよ。うんうん、美味しかったよー。また作ってねー」と、笑いながらあっという間にいなくなってしまった。


「あらら」


クレアもシャーロットも笑っていたけれど、「笑い事じゃないわよ……。どうするのよ、殿下がお腹下したって連絡来たら……」と私は文句を言いながら残りのクッキーを三つに分けて綺麗にラッピングしたのだ。


結局、殿下はお腹を下す事も無く、私達に「美味しかったよー」と可愛い瓶に入ったお茶が贈られた。



そんな私達の様子を見ていたからか、クラスメイトの令嬢達とも、ぐっと距離が近くなった。


とくに、恋をしていたバスレア嬢は、幼馴染のイワン家の方と婚約を無事に結ぶことが出来たと、嬉しそうに話してくれた。


「今度、私もクッキーを贈って見ます。頑張って作ってみます」


「きっと喜んで頂けるわ、ナッツを練り込むと簡単で美味しいのが出来るのですって」


と、シェフが教えてくれたと教えると、喜んでくれ、早速今度の休みに頑張って作ると言っていた。


「バスレア令嬢、可愛いわね」


「ええ。実は、私、ディオーネの事で彼女から相談を受けてたの」


「え?何かしら?」


「彼女。ディオーネが婚約解消したの、少し前に知ったらしいの。で、自分は婚約が出来たと喜んでクラス中で話していたでしょう?ディオーネに嫌な思いをさせたのではないかって、気にしてたのよ」


「あら」


「うん、だから、ディオーネは何も気にしてないわよ。逆に、バスレア令嬢の事、可愛らしいって言ってたわよって、教えたの」


「ま、ディオーネはゆっくりと次の婚約者を決めればいいわよ。こんなに綺麗なんだから、ディオーネには釣書が殺到しているでしょう?」


「ふふ、どうかしら」


私は両親にお願いをして、婚約者をすぐに決めずに、学園生活を楽しむことを許して欲しいとお願いをしていた。両親は「勿論」と許してくれていたのだが、友人にそのことは言わず、友人達と交友し、クラスメイトと街に出掛けたり、生徒会の仕事に励んだりと楽しく過ごしたのだ。


そしてあっという間に卒業式になった。



訂正していたら一話分増えました。全、八話となります。

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