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分かれた道 

ルーカスがどんな顔でこちらを見ていたかなんて知らない。私は顔を向ける事も無く、まっすぐに前を見て、ルーカスの方を見なかったから。


馬車はすぐに走り出し、私が屋敷に戻って服を着替えていると、お父様達の馬車も帰ってきた。


すぐに私達を置いて出てしまった事を謝られたが、執事からルーカスを大学前で下ろしたことを報告されていたようで、私は特に何も言わなかった。


夕食の時に、両親が何か私の様子を見ているのは分かったが、食事はいつも通り静かに終わった。食後のお茶の時間になると、お父様が、明るく話し掛けてきた。


「今日は疲れたかな?」


「いいえ、疲れる事はありませんでした。ああ、でも、急ぎのレポートがあるので、部屋に戻ります」


「そうか。無理をしないように」


「はい」


レポートがあるといい部屋に戻ったが、私はベッドに横になっていた。その時に、ハンカチはルーカスに投げつけたままにしてしまった事に気付いたけれど、せめて投げつけたハンカチが綺麗に刺せた刺繍で良かったと思う事にした。


レポートはもう出来上がっている。早く出来上がった生徒には教授が見直しを手伝ってくれるので、私は何かおかしなところが無いかのチェックを待っている段階だ。


本当はやる事はないのだ。


宿題も無い。急いで読む本も無い。友人に出す手紙も無い。


ルーカスの事も考える必要はもう無い。だって、道は分かれてしまったのだから。何で、今になってあんなことを言うのだろう。どうしようも無くなってからあんなことを言うなんて。



『君の事が好きだった』



どうして、そんな事を言うのよ。


なんでもっと早く教えてくれなかったの。どうにかしたかったのは私だって同じだったのに。



私はよく眠れないまま朝になり、学園へと向かった。



クラスに入ると、クラスメイトの一人の令嬢が、好きな人から手紙を貰ったと、顔を真っ赤にしながら、「きゃあっ」と嬉しそうに話していた。手紙で口元を隠し、キラキラした目をしながら耳を赤く染めるのを見て私は羨ましいと思った。


ぼおっと彼女達を見ていると、華やいだ声が聞こえてきた。


「胸が苦しくなるけれど、でも、目が合うだけで幸せになるの!もう!嬉しい!!」


「分かるわ!もう、その日一日、幸せな気分よね!やったじゃない!!」


クラスメイトの令嬢が想いを寄せる令息の事をそう、恥ずかしそうに話しているのを聞いて、私も自分の胸に手を置いていた。



「どうしたの。ディオーネ」


「顔色が悪いわよ」


「クレア、シャーロット。なんでもないわ。バスレア嬢達の話を聞いていたらなんだかこちら迄、胸が苦しくなった気がしただけよ」


「ああ、バスレア嬢。幼馴染の方と婚約が結べそうだと、毎日嬉しそうにしているわよね。バスレア家もお相手のイワン家も家格は子爵家同士。タウンハウスもお隣同士ですって。今日は手紙を貰ったって、はしゃいでるわね」


「ふふ。いいわね」


「ディオーネ……。貴女、大丈夫?」


「ええ、勿論。あ、ほら、今日は役員会議の日よ。少し早いけれど、もう、生徒会室に行きましょう?」


「そうね」


私がニコリと笑うと二人はホッとした顔をして、三人で生徒会室へと向かった。


一週間に一度の定例会議。何もない時は顔を合わせるだけで十五分もかからない会議。だけれど、今年から生徒会役員になられたレオナルド殿下が会議の後に時間がある時はお茶をしながら一言、二言、報告をする習慣になった。


明るくて、面白く、他人との距離を取る事が上手い第三王子のレオナルド様。


私も幼い時はお父様に連れられて何度か王宮で遊ばせて頂いたけれど、ルーカスが婚約者になってからは王宮で会う事は無くなった。


それからは偶然教会でお会いしたり、読書会の会長になられて読書会でお会いしたりと何かと交流は続けさせて頂き、今年からは学園では生徒会役員として会う機会が増えていた。


「やあ、ダグラス侯爵令嬢、ダンヒル伯爵令嬢、リッチモンド伯爵令嬢、皆、早く集まってくれて嬉しいよ。今日の集まりは文化役員に声を掛けたから、あと四人、参加予定だね」


私達に明るく声を掛けて、椅子を指さし、楽しそうに笑うレオナルド殿下。明るく、学園では、親しい者にはレオナルド殿下と呼ばれている。


私達が礼をすると、にこやかに笑って、礼を崩す様に言い、すぐにお付きの人にお茶の準備の指示を出した。


「皆が集まるまで、新しいお茶を飲んでいてくれ。今日のお茶が何処の産地か分かる者はいるかな?」


「まあ、良い香り」


「ええ。色は落ち着いて、明るくはないですね」


「ううん、これは、少し酸味がありますね」


それぞれ感想を言うと、ニンマリとレオナルド殿下はお茶を飲んだ。


「どうかな?」


「コロロ領では?」


「いいえ、コレは……。うーん、セピアの方では?」


クレアとシャーロットが首を傾げながら答える。


「もしかして、隣国の?ジェスパー産では?我が国の物ではないですね?」


私が答えるとレオナルド殿下は嬉しそうに手を叩いた。


「ご名答。今日のお茶は隣国、ジェスパーから取り寄せた物だよ。感想を頂けると嬉しいな」


お茶を飲み、感想を言い合っていると、残りの四人もやって来た。この方達もけっして遅れては無いのだけれど、いつもレオナルド殿下は誰よりも早く来られている。


生徒会副会長が殿下に手伝いを申し出た事があるのだけれど、殿下はそれを断られ、「準備をするのも自分の勉強なんだから君達は時間どおり来てくれたらいい。早く来るのは止めて欲しい。一人でゆっくりする時間も欲しいんだ」と言われた。


それから皆、その通りに行動をしている。


「さ!今日も楽しく会議と行こう!」



レオナルド殿下の言葉にクレアとシャーロットはクスリと笑い、私もつられて微笑んでしまった。



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