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それに対し、私は思わず笑ってしまった。可愛い人。ずっと高貴で品があって、生きている世界が違う人かと思っていたけれど、そんな事は無かった。好きな事になると饒舌になる。可愛いお人。
「すみません」
「いいえ、楽しいです。崇島さんとのお話。他には何を植える予定なのでしょうか?」
「橘を。梅雨の間に香ればきっと素敵。今はまだご用意してないのですけど」
そう言って話す彼の目は何処までも慈愛に満ち溢れていた。今から楽しみにしているのだろう。 その表情が優しくて、だから甘えてこんな事を言ってしまった。
「私も見たいです。橘の花。学校を通る時に眺めていれば、きっと成長が分かる。それを眺めるのはとても楽しい」
彼のはっとした表情が現実に引き戻す。目一杯に瞳を見開き、驚いたように固まっている。深入りし過ぎたかも知れない。まだ数回しか会っていないのに、こんな事を言って。だから誤魔化すように、お茶を勢い良く飲み干した。
「あの、お茶有難う御座いました。もし宜しければ、また話し相手になってください」
「えぇ。勿論」
慌てて立ち上がってその場を後にする。崇島さんの了承は少しぎこちなかった。
今調べて分かったんですけど、桃の節句にも飾るそうですね。橘。
私は橘よりも、丸こい紅白餅が美味しそうでした。
どっかにこれ、売ってないかなーとか思ってた幼い日々。




