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藤袴

着替えを終えた私は、母から渡された五キロの米袋を担いで隣に向かっていた。インターホンを鳴らそうと思ったが、そんな手間は無かった。彼は庭先に出ていたからだ。

彼は庭の花壇の前にしゃがんでいた。周りには薄紫の小さな花々と一つだけ浮いたものが。葉っぱ? 人の手のように深い切れ込みが入った大きな葉が、薄紫の小さいのに混じって異彩を放っていた。私は声を掛ける。

「あの、崇島さん」

私に気が付いて顔を上げる。指先に泥が着いている。当たり前か、今絶賛花植の途中だし。

崇島さんはシャベルを置いて立ち上がると、軽く手を叩いた。土を落としたのだ。

「おはようございます」

「おはようございます。あの、これお裾分けで.......。柿、美味しかったです」

おずおずと五キロの米袋を渡す。でも参ったな。今、米を渡されでも困るだろうし。そう悩んでいると、一瞬虚をつかれたような顔をして、また笑顔を浮かべた。米袋を受け取ろうとして、また手を引っ込める。

「すみません。少しだけ御付き合いいただけると」

「大丈夫ですよ。お話したかったので」

私は米袋を両手で抱き締めながら、玄関口まで歩く彼の姿を追って歩く。実はもう腕が限界だった。早く下ろしたい。けれども贈り物故、ぞんざいな扱いも出来ない。

そんなこんなで玄関まで到着。堰が切ったように力が抜けた。ぐったりする私を見て、崇島さんは申し訳なさそうな顔をしている。

「有難う御座います。こんな重たいもの、女の子にずっと持たせる訳には行かなかったですね」

「.......お気に.......ならさらず.......」

息を荒くする私に対し、米袋はとりあえずそこに置いておくように伝えた。

この、葉っぱの、花言葉が、ドンピシャなんです!!

崇島さんに!!




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