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野良の弟子

 しばらくは平和な毎日だった。


 ルナに度々おねだりされ、それを断れず貢いだり。


 ルナばかりにプレゼントを買ってやるのもおかしいと思い、クレナとカイにもプレゼントしたり。


 支出を減らす為に自立させたのに、支出があまり変わってないというジレンマを抱えながらも平和を満喫していた。



 頭のおかしい受付嬢が爆発するまでは。


「師匠!! もう我慢できませんッ!!」

 

 怒り狂って俺に詰め寄るクロエ。

 俺が何したって言うんだよ。俺は毎日、置物かサンタさんしかしてないのに。


「クレナちゃんはおっきいぬいぐるみを買ってもらったって喜んでいました。 名前まで付けて可愛がっています。ちなみに名前はカトリーヌです」


「お、お姉さま! それは秘密ですわ!」


「カイ君は珍しいカブトムシを買ってもらいました。 ギルドまで持ってきて自慢するので、どう反応するのが正解なのか受付嬢の悩みの種になっています」


「ま、まじかよ……カッコいいからみんなに見せてやろうと思ってたのに……」


 突如、暴露大会を始めたクロエ。

 我関せずと素振りを続ける魔王が少し羨ましい。


「そこまでならいいです。 いや、よくはないですけどぎりぎり許せます! でも……ルナちゃんを見てください!!」


 クロエが指差した先にいるルナを見る。


 戦々恐々といった様子のルナがそこにいた。

 流れ的に自分の番なので、そりゃあそうなるよね。


 俺は、この暴露大会が楽しくなってきてしまった。


「続けよ」


「ッ! 可愛い弟子がピンチです! 守れです!」


「さあ、続けよ」


 俺に貢がせる悪女に今、天罰が下ろうとしている。


「もう、お分かりだと思いますが……」


「…ふむ」


「師匠からのプレゼントだらけです!! 服にアクセサリーに鞄に時計……すごくお洒落になっています! 師匠は何がしたいんですか!?」


 怒りの矛先が俺だと!?


 ち、違うんだ。ルナがおねだり上手なせいだ。ちなみにソファやベッドも貢いだ。


「私の、私のお願いは断ったのに……」


 お願い?何かあったか?

 思い出せないが、物で怒りがおさまるなら買い与えてやれば良い。


 トカゲに腹一杯食わしてウンコさせよう。


「私が海が欲しいっておねだりしたのは断ったくせに!!!!」


 ……まじか。


 誰かこの人止めてください。




 その後、根気強く「海は買えない」と説得し続けた結果、みんなで海に遊びに行く事で、なんとか納得してくれた。


 そして、全員分の水着を用意することになった俺は「手伝うです!」と言って付いてきたルナに更なる貢物を贈ることになった。


 至急、トカゲにウンコしてもらわねばならない。





###





 翌日。


 俺たちは海へ遊びにきていた。


 俺は海が好きだ。泳いでもよし、のんびりしてもよし。そのうえ、目の保養にもなる。


 だから、楽しみにしてたのに……


「あ、主ぃ……人間ってこうやって海を楽しむもんなのかぁ?」


「…ふむ」


「ドラゴンでも、もうちょいマシな遊び方を知ってるぞ……」


 海に来て、水着に着替え、素振りしている弟子達。


 なんだ、この光景は。

 めちゃくちゃ注目を集めているぞ。


「……オイラ……ちょっと恥ずかしいよぅ」


 俺もだ。トカゲより羞恥心がない弟子達に怒りを覚えるほどだ。


「トカゲ、今日はいい天気だな」


「そ、そうだよなぁ…… 絶好の海日和なのに、あれ」


「よせっ! 見るな! 目が腐るぞ」


「う、うん」


「いいか?あれは他人だ。 あれは別の道場のお弟子さん達だ。 俺たちは今日、二人できた」


 だから、絶対に目を合わせるな。

 あれの一味だとバレるぞ。


「で、でもよぅ……近くに他の道場なんてねぇぞ?」


「あ、あれは……そう、野良の弟子だ」


 とにかく目を合わせては駄目だ。

 風景に同化して、姿を消せ。


 魔王はまだ許せる。やつは素振り中毒だ。こうなることは予想の範疇だ。


 だが、海に行きたがっていたクロエまで、黙々と素振りをしているのは意味がわからない。素振りするなら海に来なくてもいいじゃないか。


 新人三人も疑うことを知れよ!

 なんのプレイだよ、これは。


「や、やべぇ、主ぃ。 魔王が海ん中で素振りしだしたぜ……」


「知らん!」


「主が買った水着、無駄にならなくてよかったなぁ」


 良いわけないだろ。


 海パンは海の中で素振りするための物だとでも思ってるのかよ。


「やべぇ、海が……割れた? 海パンすげぇ」


「海パンにそんな効果はねぇ……」


「え? 主が海パンになんか仕込んだんじゃねぇのかぁ?」


「多分素振りだ。 魔王の素振りは海ぐらい平気で割る」


 目を逸らしていた俺だが、割れた海が気になって野良の弟子達がいるほうを見た。


 すると、クロエまで海の中に入っていく光景を目の当たりにしてしまった……

 

 クロエよ。お前は何がしたくて海を求めたんだ。


 

 魔王とクロエの水中素振りは流石に付き合いきれないのか、新人三人が俺たちのところにやってきた。


「師匠、俺たちもあれ、やったほうがいいか?」


「まだ早いんじゃないかと思って師匠に聞きに来たの」


「カッコいいです! でも難しそうです……」


 順調に毒されてきている新人達。


 無駄にカリスマ性がある先輩二人が俺は恨めしい。


 

 

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