お悩み相談
「私はどうすれば強くなれるのかしら?」
「…ふむ」
いつも通り、ぼーっと素振りを見ていると、少し高飛車な態度の新人……クレナに呼び出され、質問されてしまった詐欺師。
素振りしろ。で解決は無理……か?
「昨日三人で初めての討伐依頼にいったのは知ってるわよね?」
いや、知らん。
そんな報告受けたか?
……ああ、なんか受けた気もする。
酒に酔って、俺と魔王とクロエとで、誰が一番猫の鳴き声が上手いかを争っていた時に聞いた気がするなぁ。
「もちろんだ」
「それで、私は二人に比べたらその……どうなのかしら?」
…………なにが?
強いて違いを指摘するならおっぱいがでかいということだけだ。
他二人は、片方が男で、片方が貧乳だからな。
何故、いままで栄養が足りていない食事だったにも関わらず、そこに栄養が集まったのか疑問だった。
大袈裟に言えば、生命の神秘を感じたほどである。
「生命の神秘」
「え?」
「おっほん!」
流石におっぱいの事ではないだろう。
だとすると俺には見当もつかない。
「具体的に言ってみよ」
俺はクレナ本人に聞き出すことにした。
「私は二人に比べて反応が鈍い気がするわ。 昨日、ホーンラビットを狩りにいったのだけど、私の剣は当たらないし、兎の突進で怯んでいたところをルナに助けてもらったの……」
「…ふむ」
やばい。ガチなお悩み相談だ。
頭ぱっぱらぱーな兄弟子達を見習えよ、頼むから。
というか、クレナが一番弱いのか。
素振りを見た感じだと一番パワフルで強そうに感じたが、実戦だと違うらしい。
「三人の中でだけど、パワーは一番だと思ってる。 でもね、相手の攻撃を回避できないの……それで焦って攻撃も全然当たらないわ」
パワーはある。だが、回避能力がない。
……盾を持てよ。
「クレナよ。 お主は今より、片手で素振りせよ」
「え? でも、皆両手でやってるわよ?」
「人の模範は悪いことではない。 強者の模範で学べる事は多いしな。 だが、模範して自分に合わぬと感じたら止める勇気もまた必要なのだ」
「そ、そうなのね」
「では、戻って素振りせよ」
「は、はい!」
クレナ用に盾でも買ってこよう。
金ならいくらでもあるし。
クレナ用の盾を買ってきた俺は、盾をクレナに渡して、それを持ちながら素振りしろと命じた。
「感謝するわ、師匠!」
これにて一件落着。
常識の範疇にいる人間は常識が通じて助かる。
俺は素振り観察に戻った。
だが、戻ってすぐに、今度はやんちゃな態度の新人……カイに呼び出された。
「師匠……俺のことどう思う?」
「…ふむ」
二人と違ってチン○がついてる。以上だ。
お悩み相談は受け付けとらんぞ!
「昨日、討伐依頼に行った事は知ってるよな?」
そのくだりはさっきやった。
さっさと先を話せ。
「続けよ」
「俺はその……足手まといだった。 攻撃は当たるんだが、倒しきれねぇ…… パワーがないのかもしれねぇんだ」
クレナとは真逆だな。
案外二人はコンビでも組めば相性がいいんじゃないか?ルナが余ってしまうのが問題だが……
「ルナに加勢してもらわなきゃキツかった。 スピードには自信があるんだけどな」
ルナが最強なのは意外だな。
素人目ではあるが三人にそれほど差があるようには見えない。
だとすれば、ルナはバランスが良いのか?
良いトリオじゃん。
もう帰っていい?俺。
適当なこと言って、お悩み相談を切り上げたい。
スピードが長所……スピードか。手数を増やすとか?
「カイよ。 お主は今より、剣を二つ持て」
「二刀流ってやつか!?」
そう、それ。
昔、クロエに全否定されてたやつ。
「それで誰よりも早く素振りをせよ。 もちろん二刀流でな」
「兄弟子よりもか!?」
「そうだ」
人智を超えた素振りの先にいけ!
……流石に無茶だろうか。
まぁ、いいや。早く切り上げたいし。
「わかったぜ! 行ってくる!」
クレナにもプレゼントしたし、カイ用の木刀と剣でも買ってくるか。
金銭感覚狂ってるな、俺。
買ってきた木刀を渡し、カイに素振りを命じた俺は素振り観察に戻った。
素振りに集中せず、こちらをジロジロ見ているやつがいる。そう、ルナだ。
「じぃーーー」
自分でじぃーと言ってしまうくらいに見てくるルナ。
すごく、気になる。
至近距離で睨まれてるし。
だが、今日のお悩み相談は終了だ!
絶対に反応せんぞ!
「…………」
「ぐすっ」
ルナが涙目になった。
しかし、俺は騙されない。
ルナは可愛らしい。これは事実だ。だが、それと同時に危険な色気を感じるのだ。
金をじゃぶじゃぶ貢がせるタイプの女に成長する可能性を秘めている。
俺の勘はよく当たるのだ。
それだけで生きてきたからな。
「…………」
「放置……です?」
可愛く首を傾げても無駄だ。
俺は巨乳が好きなのだ。
俺に貢がせたくば、生まれ直して出直せ!
「…………」
「師匠ぉ、話を聞くです」
「…………」
「こーんなに可愛い弟子がお話を聞いて欲しがってるですよ?」
しばらく似たような攻防を繰り広げた。
「はあはあ……」
息があがっている?
仮にも現役冒険者がこの程度のやり取りで?
何か嫌な予感がする。
「これが……放置プレイ……」
「…………」
「最高……です……」
俺たちはルナの気が済むまで放置プレイを楽しんだ。
そして結局、俺はルナが前から欲しかったという可愛らしい首飾りを貢いでしまった。
今度から自分で買えと言ったら「自分で買ったら嬉しさ半減です」と返された。
多分、俺……また貢ぎます。




